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第50話

あの日以来、家にいても優とは会話がなかった。

話しかけても無視され、食事も別々。

そんな日が続きながらも土曜日・・・・作戦実行の日が訪れた。

今の気持ちは・・・・不安で胸がいっぱいだ。

理由?

奈緒に聞いてくれや。


「じゃぁ作戦通りによろしくね?」


此処は体育館入口前の階段。

奈緒は紫織ちゃん抜きである、いつものメンバーに作戦内容を伝え終わったようだ。


「じゃ私と和樹先輩で2人を連れてきますね!」


愛ちゃんは敬礼して、和樹の首根っこをつかんでこの場を去った。

今オカシな表現が入っていたが事実だから。


「じゃ俺等は仕事に戻ろうかね?」


そう言うニコニコ顔の隼人。


「そうだな。じゃ後は応援も含めてよろしく。」


「「はぁい♪」」


良い返事をする奈緒と美帆を残して俺と隼人は試合の準備のため体育館内に戻った。


「おい火野。」


中に入ると即座に監督が俺を呼んだ。

返事をしながら監督の近くに駆け足で移動する。

すると監督はたいそうな喜びの顔になっている。

まぁその理由は分からんでもないがな。


「本当に大丈夫なんだろうな?」


大丈夫じゃなかったらアンタ泣くだろうが。

だが俺的には大丈夫じゃない気がする。


「それは──」

「大丈夫っすよ!」


突如として会話に参加したのは言うまでもなく、我が親友だ。


「そうかそうか。アハハハハ!」


狂ったかのように笑い出した監督を選手達はヒいた目で見ている。

てゆうか隼人・・・・テメェ余計なことを!

急いで笑い狂う監督の元から隼人の首根っこを掴み遠のく。


「もし失敗したらどうすんだよ!?」


俺は作戦が巧くいく気がしねぇんだって!!

親友なら察しろよ!


「大丈夫だばらは!?」


根拠のない自信にムカついたのでひとまず強制睡眠の刑にしといた。

・・・・試合前に起こせばいいさ。


「ちょ・・火野先輩!佐藤先輩が口から血を流して倒れていますよ!」


「大丈夫だ。」


長い付き合いの人間は皆知っている。

隼人は不死身だってさ。


「『今・・そっちに行くよ。』と呟いていますよ?」


・・・・これはヤバい。


「ボールかせ!」


近くに来た後輩からボールを奪い取り幸せそうな面もちで寝ていらっしゃる隼人の顔面に叩きつけた。


「ギャン!何す・・・・あれ?此処は?確か俺橋の上にいたんじゃ・・・・。」


間違いなく三途の川だよそれ。

危なかった・・・・。


「何バカやってんだ?ささっと準備終わらせようぜ?」


冷静を装う。

あくまでも『俺は悪くないぞ?』空気を醸し出す。

だが数名の目撃者からの視線が痛い。


「あぁ悪い悪い。ささっと終わらせるわ。」


笑顔で立ち去る親友の背中にグッドサインを送っておいた。

だがやはり視線が痛い。


















「隼人!」


「りゃぁ!」


隼人からのナイスパスを受け取り、ボールをリングに通す。

試合も3クォーターに突入し、57対34と勝っている俺達。

チラリと監督を見る。

額に青筋がくっきりと浮き出ている。

だから心配だったんだ!

続いて2階を見るが目標がいない。

どうしましょ??


「ヤバくね?」


困った表情の隼人。

1番困ってるの俺だから!


「お前が無責任に大丈夫などと言うから・・・・見て見ろ。」


顎で監督をさす。


「うっわ・・・・青筋すげぇな。しかも視線がオマエにいってないか?」


「・・・・・。」


「2人共、敵がきたぞ!」


走ってくる敵さん共へ(心の中で)告ぐ。

会話の邪魔すんな。

(※試合中に言う言葉じゃないよねぇ?By和樹)


相手からボールを奪い前を走る味方にパスを出す。

監督・・・・ボールは前にあります。

だからそんなに俺を見つめないでください。


「螢、上見てみなよ。」


走ってきた隼人に言われたとおりに上を見る。


「やっと来たか。」


まず目に止まったのは手を前に空わせた和樹で次に笑顔の奈緒と美帆。

そして最後に──。


「優・・・。」


俺と隼人は同タイミングで一緒に試合に出ている後輩を見る。

視線に気づいた後輩はニヤリと笑い頷いた。ミッションスタート。















「いいから付いてきてよ?」

と和樹さんに言われ付いて行くと何故か学校に到着した。

意味が不明だった。

だがキュッ・・・ダム・・・そう音が聞こえた時点で俺は回れ右をした。


「どこに行くんだい?」


つい先程まで前を歩いていた和樹さんはいつの間にか目の前に回り込んでいた。


「帰るんです。」


「そう言わずにさ・・・・バスケの試合見ていこうよ?」


試合=兄貴出場。

見たくもない。

それに──。


「嫌ですよ。」


だが口で勝てるわけもなく体育館に強制連行された。


「優君!」


体育館内の階段を上がると奈緒さんと美帆さんがいた。

こりゃ計画的犯行だな。

・・・・犯罪じゃないけど・・。


「高校に入って螢の試合見るの初めてだよね?」


「そう・・・ですね。」


単純に見たくないから今まで見なかった。

理由は誰も知らない。

言いたくもない。


2階に到達すると試合が嫌でも見えた。

久しぶりに見るがやはり兄貴は上手い。

ノールックでしかも味方が取りやすい場所にパスを出す・・・・流石だと思った。


「私の彼氏はどう?」


「上手いですよ。」


コメントに困った。

何故なら隼人さんのプレイはまだ見ていないのだから。


「でしょでしょ?」


上機嫌になった美帆さんに苦笑してしまった。

ん?

何か周りが騒がしくなったな。

コートに視線を戻すと兄貴のチームの選手が足を押さえ、苦しんでいる様だ。

怪我か・・・・?


「ドウシタンダロウネ?」


「分カラナイワ。」


女性2人の言葉が棒読みに聞こえた。

まぁ・・・・焦ってるのかな?


「あれれ?螢が手招きしてるよ??」


兄貴は確かに手招きしている。

視線は俺に向けられている気がするのは気のせいか?

右に動く。

兄貴の視線も右に動く。

左に動く。

兄貴の視線も左に動く。


「優君ガ呼バレテイルミタイダヨ?」


奈緒さん・・・・声が変ですよ?

最近まともに話してない兄貴の所に行くたくはないが、呼ばれているからには何か俺にしかできない事があるんだろう。

そう思い階段を下り、兄貴の元へ急いだ。

ドアの前に行くと兄貴が待っていた。


「何の用?」


「はいコレ。」


ニコニコ兄貴の手にはユニフォームが・・・・。

洗濯でもしろと?


「意味が分からないだけど?」


「すぐコレに着替えろ。」


「・・・・・。」


まさかとは思うが・・・・。


「試合に・・・・出ろと?」


兄貴は即頷く。


「出ない。だいたい何で俺なんだよ?意味不明。」


兄貴をマジで睨む。

だが兄貴は怯まずに俺と視線を合わせる。

睨む事数秒。

俺はため息を吐いた。


「シューズがない。」


「誰かから借りればいいさ。」


結局俺が折れる羽目になる。

兄貴からユニフォームを受け取り倉庫で素早く着替える。

倉庫から出るとオッサンと目があった。


「私が監督だ。急ですまないが頼んだよ?」


て言うか監督よ、何で俺が出なければならん?

控えの奴ら使えよ。


「はい。」


とりあえず返事しておく。


「ポジションはPG(ポイントガード)だ。よろしく頼んだ。」


「え?・・・はい。」


たまたま・・・・だよな?


「優、出るぞ?」


兄貴は肩をポンと叩いてコートに入っていった。


「頼りしてるよ?」


隼人さんはそう言って兄貴の元へ行った。


「あのぅ・・・・。」


「ん?」


横に目をやるとシューズを持った人がいた。

たぶん俺と同じ1年だ。


「コレ渡すように火野先輩から言われてるんだけど・・・。」


「ありがとう。」


受け取ったシューズを履き終え、コートに入る。

久々のこの感覚・・・・。

やはり気分がいい。

そう思ったと同時に視界に映ったのは先程までいなかったはずの愛と・・・・紫織だった。

更新が遅れましたことを深くお詫び申し上げます。

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