第5話
やってらんねぇ……
それが今俺が口に出したい言葉だ
兄貴に頼まれたから映画に付いてきたのだが……
奈緒さんと紫織の兄貴争奪戦で俺は完璧はぶられ者
「優?元気なくね??」
「別に……」
兄貴は鈍感だから気づいてないんだろうな……
この姉妹の気持ち
そして俺の………
やめやめ
考えるだけ無駄だ
「兄貴もうそろそろ行かないとヤバいんじゃね?」
上映まで残り5分
皆さんあのさぁ……
時間ぐらい見ようね?
なんかもう……帰ってもいいですか?
ーーーーーーーーーーー
さっき映画を見終わったんだけど……
「お前等泣きすぎ…」
ラスト20分間俺と兄貴は泣かなかったがこの姉妹は泣きっぱなしだった
「ほら帰るよ」
兄貴が泣いてる奈緒さんの手をつかみ歩き出した
うんお似合いだね
奈緒さんビックリして泣きやんでるし(笑)
てゆうか笑ってる……
「なんでお姉ちゃんばっか……」
嫉妬しすぎだ
紫織……目がヤバいよ?
「なんなら俺が」
「いらない!!」
一般的に言われる八つ当たりですね
スタコラと早歩きで2人の所にって手を引き離した?!
「しし紫織ちゃん?」
兄貴……
顔が引きつってんぞ
あぁまた奈緒さんの後に般若が見える
「何す」
「だいたい何でお姉ちゃんがいるのよ?!」
今頃それを言いますか?!
あ、メッチャ俺も睨まれてる
「だって…ワケは昨日話したよね?」
あぁ聞いたぜ兄貴
筋の通ったワケをな
「だってお姉ちゃん火曜日の帰りまでに約束できなかったら私に譲るって言ったよね?!」
コラコラ兄貴は物じゃないぞ?
「優は黙ってて!!」
「はい!」
え?
何で?
俺何も言ってないぜ?
ん?
兄貴が俺の横に
「口に出てたぞ。まぁ確かに俺は物じゃねぇわな」
「…なるほどね」
もう俺達兄弟にあの2人は止められません
「だから約束したって帰ってから言ったはず……」
ここで奈緒さんは何かに気づいたようだ
「アンタ確かその日私のすぐ後に帰ってきたわよね?まさか……」
「そうよ!2人のあとをつけたのよ!」
「「ええぇぇぇぇ!!」」
兄貴と奈緒さんの声がハモる
もう俺帰ってもいいですか?
「兄貴…すまん!」
走り去るつもりが兄貴が俺の服の襟をつかんでた
「ま・さ・か俺を置いて帰ろうとした?」
「まさかぁ…」
笑顔に笑顔で返す
でないとあの世行きだ
「とりあえず…どうする?」
「だな…ここまだ店内だし」
うん
実際2人して顔に出てないけど内心メチャメチャ恥ずかしいから!!
「はぁ……兄貴その袋かせ」
「え?あぁ……なるほどね」
さすが兄弟
なにも言わずに分かるとは
袋を受け取り膨らまして結ぶ
紫織の後ろに回り込んで
《パァン!!》
案の定音に驚いて2人ともこちらを見る
と同時に兄貴が奈緒さんの手をつかみ全力疾走
「何してんの?」
「これ以上店内で騒がれたら恥ずいから止めろ」
「え?あ……」
顔真っ赤っか
うん
可愛い
「ほら帰るぞ」
「待ってよぉ」
この10分後に兄貴がいないことに気づいた紫織が再び暴走したのは言うまでもない