第43話
いつも8人だった。
何をしてても8人。
流石に登下校はバラバラだったが、イベントには毎回8人で参加していた。
夏祭りではイチャイチャする和樹と葵ちゃんにシスコン隼人が嫉妬したり、皆が金魚すくいで競ったりと結構バカをやっていたりして楽しかった。
8人だから楽しかった。
「クリスマスどうしよっか?」
美帆から突然の質問。
「私、北海パークに行きたい!」
説明しよう!
奈緒の言う、北海パークとは電車で1時間程かかる遠い場所にできた最新の遊園地なのだ!!ただ・・・・ネーミングセンスを疑うけどな。
「あ、私も行きたい。」
「賛成でよくないですか?」
美帆が1票入れ、紫織ちゃんがもう1票入れる。
「螢は・・・どうするの?」
不安げな顔で俺を見ないでくださらない?
「良いんじゃねぇの?なぁ?」
隼人に話をフルと笑顔で頷いた。
「じゃぁ決定!」
「あの〜俺達の意見はなしなのかな?」
決定にした美帆に和樹が無駄な質問をする。
全くをもって無駄だ。
もう1度言おう。
無駄だ。
「強制参加。」
「ハハハハ・・・・・だって。いいかな?」
和樹は自身の腕に抱きついている葵ちゃんに聞く。
「・・・うん。」
葵ちゃんは和樹とつきあい始めてから笑顔になる回数が増えていた。
順調に交際しているようだ。
うん、良いことだ。
「・・・・。」
また親友が体操座りをしてブツブツと呟きだした。
何を言っているのか気になり、耳に神経を集中する。
「笑った・・・あぁ〜俺以外の男に笑いやがった・・・昔は俺にしか・・・ブツブツ。」
最後の方は聞き取れなかったが、聞き取れた範囲に感想を言わせてもらうと・・・
ただ一言、バカ?
「外・・暗・い。」
君の兄殿も暗いです。
この世の終わりみたいな顔です。
「今日は解散!」
っで隼人以外の全員が俺の部屋から出て行った。
「明日何時に起きればいいんだ?」
「6時だ。」
「早いな・・・。」
明日から部活の合宿に行く俺達は隣町まで我が母上様の運転する車で移動するため隼人は今日は家に泊まるのだ。
なぜワザワザ泊まるのかと言うと
「迎えに行くのがメンドクサいから泊まらせなさい。」
以上母上様の命令にて御座います。
っで晩飯(俺が作った)を食べ、風呂(俺が洗い、入れた)に入りもはや寝るだけとなった。
「電気消すぞ?」
「イヤン。」
カチッとな。
聞いた俺がバカだった。
「嫌だっていったのに。」
苛つくから本気で落ち込むな。
「葵ちゃん、和樹と付き合い始めてから、よく笑うようになったよな。兄としてどう思うよ?」
「う〜ん・・・・良いことだと思うよ?家でも良く笑うようになったし。それに前に比べて人と会話することが多くなってる。結果としては良い思う。あ、でも相変わらずお笑い番組見てても笑わないけど。」
最後の言葉に俺は苦笑するしかなかった。
「ただ・・・・兄離れしてほしくない!!」
「黙れシスコン!」
首にチョップすると隼人は眠った。
今の台詞がなければ尊敬していたのに・・・・はぁ。
この後、眠った隼人をどうするか悩んだ俺は悩むことがメンドクサいと思いはじめ、そのまんまにして普通に寝た。
12月19日。
体育館内ではボールの跳ねる音、床とシューズが擦れる音、掛け声と色んな音が混じり合う中俺達は練習をしていた。
ハッキリと言わせてもらおう。
なんじゃこの練習量は?!
普通の練習の1000000000000倍キツいぞ?!
お陰様で部員の半数以上が倒れた。
練習中に聞こえた叫び声は次の通りにて御座います。
「もう・・・ダメ。」
「我が一生に悔いあり・・・。」
「ママぁ・・・。」
「足がぁぁぁああぁ!?」
他にも多数あったが叫んで倒れた奴らにただ1つ共通点があった。
それは・・・・
「何人残った?」
「12っす。」
次の日、監督に現在いる部員の人数を知らせる。
叫び声を上げ倒れた連中の共通点。
それは夜逃げだ。
42人いた部員のうち30名の布団が朝起きると空だった。
「そうか。にしても毎年この時の夜逃げが多い。火野、これいじょう夜逃げさせてはならん。いいな?」
「・・・・はい。」
だったら練習量減らせ、この鬼監督!!
「なんだ今の間は?佐藤だけダッシュをプラス5往復。」
なぜ俺じゃなくて隼人なんだ?
あ、隼人涙目になってる。
睨むなら俺じゃなくて鬼監督にしろ。
「練習開始!」
その日も地獄だった。
「ハァハァ・・・火野先輩・・」
パタリ
「市川ぁぁ!」
「佐藤・・俺・・」
パタリ
「藤堂ぉぉ!」
その日の倒れた人数は6人。
練習が終わり、疲れた体に鞭を打ち、旅館に戻った。
「螢・・・・クリスマスは遠いな・・・・。」
「遠いな・・・。」
そんな事を言っていると隼人は何か思い出したのか布団から飛び上がり、携帯を手に取る。
「・・・もしもし?葵?」
こんのシスコンが!!
「もう練習キツくて・・・・え?大丈夫大丈夫、怪我なんてしないから。」
どうやら隼人の体を心配しているらしい。
ええ妹さんや。
「おう!あ、螢に代わるから、ほい。」
えぇぇえ!?
なぜチェンジする?!
何を話せばいいと思いながら受け取った電話を耳にもっていく。
「も、もしもし?」
《・・もし・・も・し?》
ここでいったん話が途切れてしまう。
隼人に眼でSOSを送るが笑顔でスルーしやがった。
「えっと・・・クリスマス楽しみだね?」
《・・うん。いっ・ぱい・・遊ぶ。和樹さん・・楽しみ・・言ってたから・・葵も・・楽しみ。》
愛されてるな和樹・・・。
「そっか。じゃあクリスマスの日にね。」
《・・螢さん・・怪我・しないで・・ね?》
「ありがとう。じゃ隼人に代わるから。ほい。」
「代わったよん♪」
キモイ・・・。
会話は10分以上続いたが終始、隼人は楽しそうに笑っていた。
「おやすみ。よっしゃぁぁあ!明日も頑張るぜ!!」
電源ボタンを押した直後、隼人に10個の枕が襲いかかった。
「痛った!なにす・・・ごめんなさい。」
この後は部屋は静かだった。
「・・・・ん。」
破れた襖から光が入り、俺にだけ・・・・しかも顔に当たっていた。
「あれ?」
隼人の布団が空だ。
・・・・・・夜逃げ?いやいや隼人とだぞ?!
などど1人で考えること数分。
ひとまず下に降りて監督と合流しよう。
てなわけで下に降り食堂に入ると監督がいた。
おはようございます、と言う前に
「佐藤は緊急な用事で家に帰った。」
先手をうたれた。
監督の言葉に隼人が逃げたんじゃないと分かりホッとした。
「そっすか。分かりました。テレビでも見ます?」
「おぉそうだな。」
監督の様子が変に見えたが何にも言わないでテレビをつけた。
俺は旅館を飛び出した。
「タクシー!」
タクシーに乗り、とある病院の前で降りる。
中に入ると見慣れたメンバーがいた。
皆が皆、魂の抜けた感じだった。
「・・・・・奈緒?」
近寄り名前を呼ぶと奈緒はピクッと反応し、ゆっくりと下げていた頭を上げ、俺を見る。
「螢・・?・・・うぅっ・・・螢!」
突如として俺に抱きついてきた。
「うっあぁぁあ!」
奈緒は俺の胸の中で声を上げて泣き始めた。
それが伝染したかのように俺以外の皆が泣き始めた。
そんな中、テレビのニュースキャスター声が俺の耳に入ってきた。