第41話
「これが俺達のはじまりなんだ。」
何度思い返しても、あの時の隼人はアホだったと思う。
「隼人さん・・・アホ?」
「優よ、そんな変なモノを見るような目で俺を見るな。そしてアホ言うな。」
だが隼人を『変なモノ』として見ているのは優のみならず、紫織ちゃんと愛ちゃんコンビも、そんな目で見ていた。
あ、隼人落ち込んでいる。
・・・・どうでもいいや。
「じゃ続けるね?」
――――4年前――――
入学式に騒動を起こした5人はカラオケ以来、気がつけば、いつも一緒にいた。
逆にいない方が不自然と言っても過言ではない程に、仲が良かった。
「「お邪魔します。」」
1階の玄関付近から下田姉妹の元気のいい声がした。
「来たか・・・・。」
只今の時刻は11時3分。
俺はベッドから立ち上がり、ジャケットを羽織り、必要な物をポケットに突っ込み階段を下る。
「オッス。」
「オッス!」
奈緒が元気よく俺を真似る。
一方、紫織ちゃんは
「こんばんわ。」
実に丁寧だった。
お辞儀までしています。
恐縮です。
「兄ちゃん、間に合う?」
この頃は優は『兄貴』と呼んでいなかった。
可愛かったなぁ・・・・この年までは。
(よけいなお世話だ!by優)
「余裕余裕♪じゃお袋、行ってくる。」
「気をつけてね?もし優や奈緒や紫織が怪我でもしたら・・・・分かってるよね?」
なぜ俺に全責任があるのですか?
そんなお袋を無視して家を出たら、後ろからフライパンが飛んできて頭にヒットした。
「あんのクソ婆!」
後頭部を抑えながら歩いている俺はスッゲー格好悪いと思う。
「クスクス。もう皆来てるかな?」
そんな俺を見て奈緒は笑っている。
笑うんじゃねぇ・・・・!
「かもな。さっき美帆から着いたメールがきたしな・・・。」
怒りを抑え、冷静に対処する。ふ・・・・大人に近づいた気がするぜ!
「兄ちゃん、僕達も来て良かったの?」
この頃は優は『俺』ではなく、『僕』だったのだ。
可愛かったなぁ・・・・この年までは。
(よけいなお世話だパート2!by優)
「大丈夫だから、心配寸なって!なぁ?」
奈緒に同意を求める。
「そうだよ?皆良い人達ばっかだから。ねぇ?」
また俺?
「そうそう、友達も楽しみにしてるって言ってたぞ。なぁ?」
「うん。それに友達の1人が妹連れて来るって言ってたよ。しかも紫織達と同じ6年生だって。ねぇ?」
だから何故また俺に戻す?
「噂をすればは?!」
突如、背後に現れた人物の顔に俺の裏拳がめり込んだ。
振り返り顔を確認。
「すまん、つい癖で。」
「その癖直せ!殴られる俺の身になれ!」
だったら普通に登場しろ。
毎度奇妙な登場するから、そんな目に遭うんだっつうの。
まぁ今回は口に出さないでおこう。
「口に出てるよ?」
呆れ顔で奈緒に言われる。
「およよ?」
「およよ?じゃない!鬼かお前は!?」
「まぁまぁ落ち着け隼。」
「俺は隼人だ!」
「ワザとだ。気にするでない。そんでそちらの子は?」
「ワザ・・・!?まぁいい。コイツは俺の妹で葵って言うんだ。ほら、挨拶しろ。」
「・・・佐藤葵です。よろしく・・・です。」
似てないなこの兄妹。
「よろしく。俺は螢で、こっちが奈緒。」
「奈緒です。よろしく♪」
「っでコイツが俺の弟の優で、こっちが奈緒の妹で紫織ちゃん。」
「初めまして。優です。」
「紫織です。よろしくです。」
「コイツ等は葵ちゃんと同じ年だから。」
ん?
品定めするみたいに俺達を見てくるんですけど・・・・。
「仲良く・・・なれる?」
首を傾げて実の兄に問う。
「なれるなれる。なぁ?」
だから何故俺にばかりフル?
「なれるさ。」
「螢さん、間に合うの?」
紫織ちゃんに言われ、バッと時計に目をやる。
・・・・・・・・。
「遅刻だ・・・・。」
急いで集合場所である、神社の入口に行くと、
「「遅い!」」
半ギレの美帆と和樹がいた。
「あれ?その子達は?」
キョトンとする美帆。
仕方なく再度自己紹介する。
「んじゃ、行くべ!?」
「「「「ガッテン!」」」」
このノリにツいて来れない3人は『え?』てきな表情になっていた。
《3・・・・2・・・・1!HAPPY NEW YEAR!》
叫ぶ。
みんなが叫ぶ。
とりあうず叫ぶ。
「イヤッホー!」
そして隼人がまた叫ぶ。
「ヨッシャ!願掛けに行こうぜ?!」
この男は何でこんなにテンション高めなのでしょうか?
理由はどうであれ、ウルサくて耳障りであり、目障りでもあった。
賽銭箱の目の前まで来て、さぁ10円を投げようとモーションに入った時だった。
「あ、小銭がない。」
「おいおい。」
和樹が小銭がないと言い出した。
何やってんだか・・・。
もう1度財布を開き、10円玉を取りだす。
いざ渡そうとして、
「これ・・・あげる。」
渡せなかった。
って葵ちゃんが話してる!
「ありがとう、葵さん。」
「・・・・。」
「???」
シーン・・・。
何・・・?
何で気まずくなってるの?
え?
何この空気?
この空気を作り出してるのは間違いなく葵ちゃん本人だな。
なんせジー・・・っと観察するように和樹の瞳を見ているから。「えっと・・・あの・・・・。」
困った様子の和樹。
対して葵ちゃんはと言うと・・・・。
「・・・・。」
まだ和樹の瞳を見ていた。
和樹はハーフで瞳の色が青だ。
それも宝石のように綺麗な青。
まぁガン見したくなるのも分からんでもない。
「そ、そろそろお金入れよっか?」
「そそうね?」
奈緒と美帆が何故か戸惑っていた。
そんな事はどうであれ、そろそろ投げるのには賛成だ。
「せぇ・・・の!」
俺のかけ声で一斉に投げる。
そしてお願いする。
とくに願いがなかった俺は、お袋がもっと家事をする事を願った。
「ヨッシャァアアァ!次は御神籤っしょ!?」
バカはまだウルサかった。
テンション高過ぎ・・・。
妹を見習えと素で思う。
そう思いつつ御神籤を引く。
「やった♪見て見て♪」
と言って御神籤を見せてくる奈緒さん。
「大吉か。俺もだぞ?」
と言って見せつけると
バッ!
「!?」
超スピードで奪われた。
そして瞬きもせずに読み始める。
「恋愛・・・・できるはずがない。すれば災難にあう。」
そこだけ読むと奈緒は崩れた。
・・・・意味が分からん。
てか大吉なのに、災難にあうのかよ!?
しかも、はずかないって・・・・えらい強調してやがるな。
「螢さん、御神籤見せてください。」
と言うので紫織ちゃんに御神籤を渡す。
「恋愛・・・・・できない。」
そう言って奈緒と同じく崩れた。
下田姉妹の周りに魂が見えるのは気のせいだろうか?
「お兄ちゃん・・・元気・・・・だす。」
声に反応して視線を移すと異様な光景が目にとまる。
「葵はどうだった?」
「大吉・・・。」
カパッと開いた隼人の口から魂が出てきた。
気になって隼人の手から御神籤を奪い取る。
「プッ!アハハ!」
見て笑った。
「アハハハ凶だ!アハハハ!!」
言っておくが笑ったのは俺だけじゃないぞ!?
佐藤兄妹以外の全員だ!
凶
願望、叶わない。
恋愛、ありえない。
失物、出てこない。
など最悪なものばかりだった。
隼人の近くにずっといた葵ちゃんは、愛想を尽かしたのか隼人から離れ、和樹の前へ移動した。
「・・・・・。」
そしてまた観察する。
俺だったら耐えられないな。
「珍しいかな?」
和樹の言葉にフルフルと首を動かす。
「綺麗な・・・色。いい・・ね?」
あ・・・・笑った。
「葵、アンタ笑うと可愛いじゃない!」
葵ちゃんは美帆を見る。
そしてまた和樹を見て、首を傾げる。
「可愛いと思うよ?」
和樹がそう言うと顔を赤くした。
「こら!!俺の妹に手を出すな!」
バカが復活しやがった。
俺の妹に手を出すな?
シスコンか?
「お兄ちゃん・・・嫌い。」
「ぬあ!?葵、なぜだ?!」
シスコン確定。
「・・・・みんな帰ろうか?」
「「「「「賛成♪」」」」」
コクンと頷く葵ちゃん。
「ちょっと待って!」
隼人を無視して神社をあとにした。
最近更新が遅れ気味ですいません。今、【光】の誤字などを直している最中でして・・・・少しの間は更新が遅れると思います。本当に申し訳ありません。