第31話
《2人で楽しんで。勇気をだして告白してみなさい。》
お姉ちゃんなりに気を使ってくれたのだろう。
瞳姉さんと違って楽しんでこんな事をしたんじゃないと思うけど。
「帰るか。」
「うん。」
最近は良いことばかり起きている。
しかも全て螢関係で。
でも・・・・だからかな?
怖い。
もし想いを告げてダメで彼が私から離れていってしまったら・・・・そう考えるだけで怖い。
隣で歩く螢の横顔を盗み見る。
胸がギュッと締め付けられる。
───え?
自分が驚いた。
気がつけば螢の右腕に自分の両腕を絡めていたのだから。
「奈緒??」
彼は驚いている。
だが私は俯いて絡めた腕に力を入れ力強く彼の腕を抱きしめた。
彼は何も言わず歩き始めた。
―――――――――――
「じゃまたね。」
「体に気をつけるんだぞ?」
俺もあんな夫婦になりたいなと思いながらリムジンに体を半分入れる。
「うん、じゃまた。」
別れの言葉をいいながら。
いや違う、これは再会の約束だ。
「またねお姉ちゃん。」
奈緒は名残惜しそうに俺に続いて乗り込む。
発進したリムジンはある1つのデカい家の前で止まった。
そして俺だけが降りた。
瞳姉に文句を言うために。
「あ、螢さん!久しぶりです!」
「そうだね紫織ちゃん。あと・・・・・・優??」
どうしたんだ優!?
なぜ放心状態なんだ!?
「螢、体良くなったんだ?良かったじゃない。」
でた・・・・。
優、お前はこの人にやられたんだろ?
こんな燃え尽きるまで。
「ありがとう。でもね瞳姉、肝試しでは良くもやってくれたね?」
「なぁんのことかな?」
「昨夜奈緒から聞きましたよ?何でも俺達2人を騙してくっつけようと・・・・ようは恋人同士にしようとしたんだろ?」
「ええぇぇぇえ?!」
紫織ちゃんが驚いているが今はスルーだ。
てゆうか何故閻魔大王は残念そうにしているんだ?!
「ちょっと違うわね。シナリオでは2人が会った時に不良に変装した使用人が絡んできて螢が戦って勝つ。それを見た奈緒は『螢カッコイイ。大好き!』と言い、螢は『俺もお前が好きだ。』と言って奈緒にキスをするというものだったわけ。」
「「・・・・。」」
アレだ。
この人はアホだ。
どう考えたらそんなシナリオ通りに事が進むよ?
「さっ3人とも早く車に乗った乗った。飛行機に間に合わないわよ?」
「紫織ちゃん優を連れて先に行ってて。」
「ラジャーです。」
優は紫織ちゃんに引っ張・・・・引きずられていった。
「さて瞳姉。」
「何かしら?」
「コレなぁんだ?」
携帯のメイン画面を瞳姉に向ける。
おぉ〜顔が真っ赤だ。
「なっ!?どうしてそれを!?」
ふっふっふ・・・・
驚いとるのぅ。
「タク兄に貰った。次何かしたら皆に見せちゃうからこの高校時代のケン兄とのキスシーン。」
「ギャーやめてぇ!!」
こんなに焦る瞳姉はじめて見た。
てゆうか楽しい。
今『コイツSだな』とか思っただろう?
今後はやめれよ?
そんな単純な発想は!!
これは今まで散々人で遊んでくれた閻魔大王への復習なのだから。
「あ、もう時間だから。バイバイ。」
後ろから最低やら鬼やら聞こえてきたが携帯を空に掲げると聞こえなくなった。
初勝利───
螢V.S瞳姉
螢、初勝利ながらも完全試合達成。
リムジンに乗る俺は勝利と言う2文字に酔っていた。
《〜♪〜♪》
おっと電話だ。
ん?
隼人?
「も」
《大変だ!》
最後まで言わせろよ!
「何がだ?あと五月蝿い、そして落ち着け。」
《バッカ野郎!騒がずにいられるか!》
俺は迷わず電源ボタンを押した。
「螢」
「ん?なに?」
奈緒は携帯を俺に渡してきた。
「隼人から電話。螢にかわってくれって。」
そうきたか?!
こういう機転だけはきくんだから。
「何がどうした?」
《何でさっき切った?!》
「・・・・切るぞ?」
《わかったから、俺の話を聞け!実はな・・・》
続く隼人の言葉にハイテンションになる俺がいた。
「マジかよ?!いつだ?!」
《明後日!!》
急だなオイ!!
「わかった。じゃあな。」
《あぁ!じゃ明後日な!》
小さくガッツポーズを決める俺を下田姉妹に不審な目で見られた。
この話で拓也と他5名の登場は終了です。あ、でも先の方で出るかもです。たぶん出る・・・