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第29話

拓也視点

俺は歩けると言うことは幸せなことだと実感した。

なぜなら俺は一度歩けなくなった。

走れなくなった。

跳べなくなった。

夢を諦めた。

全ては今隣に座っている少年を助けた代償。




事故の衝撃から目が覚めると右足だけが動かなかったが不思議と落ち着いていた。

もともと怪我をしていたんだからショックもそれ程まで大きくない。

だけど夜空に輝く月を見て思った、もし神が存在するというのなら何故に俺をこんな仕打ちをするのだろう?

大丈夫と自分に言い聞かせる中、何が大丈夫?何故大丈夫?と疑問が次々に浮かび上がる。

その結果、大切な人と一緒になって泣いた。

やがて俺が助けた少年は礼を述べに訪れてきた。

たぶんこの子は俺がそんな目に逢っていると知らない。

知られたくもない。




少年と2回目の対面をはたした後に帰らなければならない時に、ふとアレが脳裏をかすめた。

恋人に頼み少年と2人だけにしてもらい、少年にバックを俺の元に運んでもらう。

いつもお守り代わりに身につけずに持ち歩いていたソレは恩師に貰ったもの大切な物。

その人は俺のバスケットの楽しさを教えてくれた。

俺は少年を見て、僅かながら知った。

バスケットが好きだと言うその瞳は幼い頃の自分以上に輝いていたと言うことを。

だから俺は渡したくなった。

確かに自分はもうバスケットはできない、ならこの子に《上手くなれ》と言う意味を込めて渡そうと。







昨夜奈緒に言われた時久々にショックを受けた。

『螢はアレで自分を縛っている。お兄ちゃんに少しでも近づいてお兄ちゃんの夢を叶えるために。』

俺のかわり彼が夢を??

違う。

そういう意味でかれにアレを渡したんじゃない。

だが彼とずっと過ごしてきた彼女が言うのだから事実なのだろう。

彼はアレで縛っている。

なら与えた俺が彼を・・・俺の弟を縛る鎖を壊してやる。

そう想ったから俺はそう口にした。

一瞬彼の目が揺らいだ。

信号は青になった。

車を発進させながら彼を盗み見た。

彼の瞳は幼い頃にバスケットが好きだと語る時と同じぐらい再び輝いていた。




俺はもう歩ける。

走れる。

跳べる。

夢は叶えられなかったが今は子供たちに学問を教えながら、バスケットの楽しさを教えている。

何だかんだで今の生活に楽しんでいるんだ。

だから螢にも笑って楽しく過ごして欲しい。

そして、その瞳の輝きを失わないでくれ。


〜兄として弟への想い〜

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