第28話
優達が沖縄に旅立ってから約2日経った今日。
俺の体は至って良好だ。
まぁ寝てばっかりだったからな。
「タク兄、薫姉ちょっと・・・・。」
奈緒がトイレに入った音を確認し急いで2人に話しかける。
「どうした?悩み事か?」
「う〜ん・・・似たような感じ。奈緒にこの間のお礼って意味で何かプレゼントしたいんだけど・・・・何が良いかなぁ?と思い相談しました。」
「「プレゼント?」」
「うん。」
2人は3秒ほど悩んだ後に、閃いた!という顔をした。
同時にね。
「たぶん拓也と同じこと考えてると思うなぁ♪」
「ってゆうか、プレゼントと言ったらあの店しか思いつかないさ。」
はぁ意志疎通ってやつですか?
「っでその店とは?!」
俺の質問にタク兄は笑顔で言ってきた。
「用意しな。今から行く。」
「は?・・・・今から!?」
思いたったら即行動ですか?!
って俺その店が何を販売しているのかが気になっているのだが・・・・。
「ほら急ぐ!」
「はい・・・。」
タク兄と薫姉の事だから瞳姉みたいに酷いことにはならないだろう。
むしろ、そうであって欲しい。
「あれ?螢、どこに行くの??」
玄関で靴を履き替えていると奈緒からどこに行くと言う質問が俺の耳に入ってきた。
「タク兄と散歩。」
「そう、気をつけてね?」
「おう。行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
久しぶりに誰かに見送られた気がした。
タク兄の運転する車は約30分でとある店の駐車場で停止した。
車から降り、2人で店に入って行くときに看板に店名が英語で書いてあることに気づいた
ハルミ?
「いらっし、拓也君!?」
「お久しぶりです。」
中に入ると美人のお姉さんがタク兄を迎えてくれた。
「本当に久しぶりね。薫ちゃん元気?」
「はい元気ですよ。」
話しを続ける2人を見て思った。
タク兄は俺の存在を忘れ、店員のお姉さんは存在すら気づいていない。
俺なにしに此処へ足を運んだのだろうか?
そんな事を考えてる間も俺の存在に触れない2人に多少イライラしつつもタク兄に話しかけることにした
「タク兄、俺の存在忘れてない?」
瞬間
「あっ。」
「誰?!」
やはりですか?
俺には存在感がないと悟った今日です。
タク兄が店員に何か説明を始めた
「えっと螢君だっけ?」
「はい、存在感のない螢です。」
《ビシ!》
※注意;横にいるタク兄が俺の後頭部を叩いた音です
「私はこの店のオーナーの晴美よ。宜しくね♪で今日は何を買いにきたのかな?」
ハルミ??
オーナー・・・。
店名に自身の名前をつけたのか?!
って何を買いにだって??
「えっと・・・。」
辺りを見渡す。
ジュエリーショップ??
「晴美さん、さっき説明したでしょ?」
「一応どんなモノが良いのかなぁ?と思ってね。要望は?」
「要望と言われましても・・・・。」
こんな女性専門店に足を踏み入れたのが人生初めて混乱中でありまして・・・・。
「う〜んと、じゃあ彼女に」
「彼女じゃありません!幼馴染です!!」
《ビシバシ!》
※注意;横にいるタク兄が俺の後頭部と額をリズムよく叩いた音です
「落ち着け。」
「はい。」
後頭部が痛い・・・・。
「ええっと、彼・・じゃなくて幼馴染が常時何か身につけているモノはある?」
「ないです。」
「なら指輪でもブレスレット、ネックレスどれでもいいわね。そうだ写真か何か持ってないかな?」
「ない 「ある。」です・・・は?」
タク兄が俺の声を遮って『ある』と答えた。
「どうぞ。」
「どうも。あら、可愛いじゃない♪」
タク兄は何故写真を持っていたのか気になったが、写真そのもの方が気になった。
チラリと横から覗き見をする。
「これって去年のスキーに行ったときの?」
「そうだ。」
写真には笑顔の俺と奈緒がピースをしているものだった。
「ふむふむ。コレなんてどうかな?」
一度こちらに背を向けて、振り返った晴美さんの手には2つのハートが絡み合ってできているネックレスだった
奈緒が身につけているところを想像してみる・・・・似合うと思う。
「じゃあコレにします。」
「オッケー♪プレゼント用にラッピングする?」
「お願いします。」
いそいそとラッピングし始める晴美さんを見たタク兄がふと言い出した
「まぁ晴美さんに任せて失敗はまずないから大丈夫だ。」
それって、もしかして?
「タク兄ここで薫姉にプレゼント買ったことあるの?」
「あるよ。2回目の時は・・・・。」
なに??
続きが気になるんですけど?
「螢、晴美さんに値段気いたか?」
あ、そういえば聞いてない。
俺は首を横に振るとタク兄はため息をついた。
値段も聞かずに決めたのだが・・・・もしも何万もするものだったら・・・・。
「晴美さん、それ幾らですか?!」
「えっとねぇ・・・。」
晴美さんは難問を解いているよいな顔になった。
俺は値段を聞いただけなのに・・・・。
「まだ値段決めてなかったからなぁ・・・・どうしよっか?」
「は?」
値段を聞いた俺に聞き返すか普通!?
「やっぱり・・・。」
タク兄が小さく呟いた、この言葉を俺は聞き逃さなかった。
やっぱりってことは、タク兄も同じ目にあった事が・・・・?
「俺に聞かれても困ります。」
「あはは、そうだね。じゃ4000円でいいよ。」
微妙な値段だ・・・・。
高くもなければ安くもない。
てゆうよりあれは俺の見る限り結構、上等なものだ。
細工といい、形といい。
4000円では釣り合わないような気が・・・・。
「まただ・・・・。」
今度はそう呟くタク兄。
まさか俺、タク兄と全く同じ経験をしているのか?
ラッピングを終えて、俺に例のハートのネックレスを、俺は晴美さんに野口さんを4枚渡す。
「また来てね♪」
「はい。」
微笑む晴美さんに見送られながら店をあとにした。
車に乗り込み、走り出してタク兄は俺に向かって言い忘れてたと言ってきた。
「何を??」
「晴美さんは瞳のお姉さんだってこと。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・シンジラレナイ。」
「だよな?うん、俺もそう思う」
あの閻魔大王と晴美さんが姉妹??
シンジラレナイ・・・・。
「あともう1つ。」
「へ?なに?」
信号が赤に変わり車が止まる
と同時にタク兄が俺の頭に手をおく。
「好きなように生きろ。その手に着けているモノで自分を縛るな。」
信号が青に変わり車は進み始めた。