第26話
晩御飯を美味しくいただき4人で雑談していたが、薫姉が途中で意識が飛び始めていたようなのでお開きとなった。
俺も奈緒も、この家に帰ってから、すぐ風呂に入ったため何時でも寝れる状態だ。
「「・・・・。」」
お休みとお互いに言い合って背中を向け、布団に入ったのだが、なかなか寝れない。
って後ろからは寝息が聞こえないって事は・・・?
「ねぇ・・・寝たの?」
やはり起きてたか。
「いや、起きてる。」
そりゃ寝ずらいわ。
2メートルと離れていない所には好きな人がいるのですよ?
意識しちゃって寝れません。
「さっきの続きで聞きたいんだけど・・・・。」
「さっき??」
「うん。どんな夢をみたのか教えて。」
「・・・・イヤだと言ったら?」
アレが夢で良かったと思う。
だってもしも夢じゃなかったら俺は───
「それでも教えて!だって。」
「?」
だって何?
体を奈緒が見えるように反転させると目があった。
暗くて表情は読みとれないがなんとなく奈緒が悲しそうな顔をしている気がした。
「だって螢泣いてたんだもん。知りたいよ?その・・・何で泣いたかを。」
泣いて・・・。
は?
泣いてた!?
我が輩が!??
「泣いてたって・・・・嘘だろ?な?」
今ムッとした顔になった気がする。
雲に隠れていた月が姿を表してくれたおかげで奈緒の顔がハッキリと目に映る。
うん、やっぱりムッとしてる。
「ホントだもん。泣いてたもん。」
もんってガキみたいな言い方だな。
「・・・・ホントに知りたい?」
「うん。」
即答かよ!
「はぁ・・・・わかった、話す。その代わりヒくなよ?」
ヒくなよの意味が理解できなかったらしくキョトンとしている。
「聞いてますか?」
「え、うんヒかない・・・・よ?」
何で最後に疑問符をつけるかなぁ?
ったく・・・・。
「初めに言っておくぞ?今から話すのマジで夢の内容だからな!!真に受けんなよ?わかったのなら誓いなさい!」
「はぁい、誓います。」
うむ、よろしい。
他に言うことは・・・・ないか。
「っで?早く教えてよ」
少し待てよ・・・・。
はぁ・・・・。
「大切な人が消えた。」
「え?」
「え?じゃない。だから、大切な人が目の前で消えたわけ、わかる?しかも泣きながら『今までありがとう』って言って消えた。俺の側から居なくなるのがイヤだったからさ・・・・『待てよ』って言おうとしたら・・・・声が出ない。だから止めようとして消えかかっている体に触れようとしたわけ。でもすり抜けやがった。俺諦め悪いから何度も何度も必死になって腕を掴もうと、抱きしめようとしてた。でも結局全てすり抜けた。悪夢だよアレは。」
本当に悪夢だった。
声を出したくても出ない。
触りたくても触れない。
でもって夢の最期に『今までありがとう』って言われて俺は声が出ないのに名前を連呼していた。
そして声の代わりに涙が出てきた。
あの悪夢は本当にリアルで俺の今恐れていることだった。
「大切な人って誰?」
ヒドく動揺した感じで俺に尋ねてきた。
「名前・・・・聞いたんだろ?」
俺は少し恥ずかしくなって体の向きを反転させまた背中を向けた。
「あ・・・・。」
気づい───
え?
「ちょっ・・奈緒?!」
「今日だけ・・・・お願いだから。」
「おい何故そうなる!?」
「螢を悲しめたお詫び。」
「はぁああぁぁあ?!」
だからって何で俺の寝ているベッドに入ってきたうえに、ガッチリとホールドしているわけですか!?
お爺ちゃんビックリして三途の川辺りにぶっ飛んじゃうよ!??
「それに今日だけは私がこうしていたいの。」
していたいで済むか!
って俺の理性にも多少我慢の限界が・・・・。
「あのなぁ・・・。」
うっ!
体動かせない。
タク兄に見られたらヤバいって!!?
「すぅ・・・すぅ。」
寝息?!
アンタ寝たんかい!!
しかもガッチリとホールドしたまんまで。
「私は・・消えない・・・・もん。」
え?
「奈緒?」
「すぅ・・・すぅ」
寝言??
全く・・・・。
「言ってくれんじゃん。」
声を押し殺しながら少しの間だけ笑い、瞼を下ろした。
アレが夢で良かったと思う。
だってもしも夢じゃなかったら俺は淋しくて・・・
悔しくて・・
悲しくて・・
泣いて泣いて・・・・体の水分がなくなるまで泣いてカラッカラになって・・・
最終的には跡を追っていたと思う。
それ程に奈緒の存在は俺の中で大きい。
なぁ・・・奈緒。
俺さ・・・・
近々決着をつけたいと考えているんだ。
結果はどうだって良いって言ったら、そりゃ嘘になる。
でも俺の奈緒を想う気持ち知ってほしいんだ。
だから、その時は正直なお前の気持ちも聞かせてほしいな・・・・。
あぁ〜あ。
心の中では何度だって言えるのになかなか口に出しては言えないもんだな。
たったの2文字なのに・・・・。