第25話
「「もう一度お聞かせ願います。」」
重なる俺と奈緒の声に優は立ち上がりつつも応える。
「だから明日から俺と紫織と真田夫婦と田中夫婦で沖縄に行ってくるって言ったんです。」
「うっそ―!?」
「えぇ!?」
言葉は違えど、驚いていることには変わりない俺達2人の態度に優は微笑みながら言ってきた。
「瞳姉には逆らえません。」
「うっ・・・そうだね。」
「それに私が残るって言ったら『却下!』『却下!』の2文字でダメになったの。」
「ってなわけで、ほぼ強制的に沖縄行きが決まった。」
「ちょっと待て!タク兄達は何で行かない?」
「タク兄達は兄貴の面倒見るから行かないって。」
うぐっ!
俺が原因なわけですね?
「な奈緒はどうして?」
「タク兄によりますと『螢には話し相手が必要だろ?』とのことです。」
俺を老人扱いしてるのは気のせいですか?
「それに奈緒さん明日沖縄に行っても心から楽しめないっしょ?瞳姉は行きたいなら行っても良いと言ってるけど、どうします?」
言ってる意味が分からない。
「うん、私は行かない。」
「え?!行ってこいよ!」
そんな俺が原因で行けなくなるなんて・・・・最悪じゃんよ。
「だって優君の言うとおり向こうに行っても螢が心配で楽しめないと思う。」
それ言われちゃうと俺としても困る・・・・。
気持ちは嬉しいけど・・・。
「でも。」
「残るって言ったら残るの!!わかった?!」
「はい・・・・。」
女に気迫負けしてしまうってどうよ?
まぁ病人(?)だし仕方ないか。
「じゃあ優君、瞳姉さんによろしく伝えといて。」
「了解です。じゃ下にもう迎えが来てるはずだから帰ります。兄貴。」
「なんだよ?」
「楽しんでくるから♪」
嬉しそうだなオイ。
なら、お兄ちゃんが地獄に落としてあげる♪
「海で泳ぐときは気をつけなよ?」
「沖縄に鮫なんてでないから大丈夫。」
「鮫より恐ろしい人がいるじゃんよ?」
「・・・・・・あ。」
ふっ・・・・。
気づいたようだな。
去年と一昨年は俺が酷い目にあったが今年は間違いなくお前の番だ。
「俺やっぱり残」
「瞳姉には逆らえない、だろ?紫織ちゃん、優が廃人にならないよう世話してあげてね。」「え、はい」
優が俺とアイコンタクトをしようとしてるが無視だ無視。
「迎えの車待たせたら悪いから早く行きな。」
「はい。あ、絶対にお土産買ってきますね!」
「ありがとう。優。」
静かにドアから出て行こうとする優を呼び止める。
「楽しんでこい♪」
トドメの一発に優は何か反論しようとしたが止めて空気のように去っていった。
「廃人は言い過ぎたかな?」
「そうでもないと思う。」
「そっか。」
「うん。」
瞳姉って怖い時はホントに怖いからな・・・・。
去年だって、
みんなで楽しくスキーしてたのに俺を・・俺を・・。
思い出しただけで震えが・・・・。
うん、思い出すのは止めにしよう。
「奈緒ちゃん!下にきて!」
階段したから薫姉が奈緒を呼ぶ。
「はぁい!ちょっと行ってくるね。」
「いってらっしゃい。」
部屋を出ていく奈緒を見送って数分で奈緒は部屋に戻ってきた。
「ご飯だよ、お爺ちゃん。」
「すまんのぅ。」
「良いのよ、お爺ちゃん。もう年なんだから。」
「そうじゃのぅ・・・・っで?何故2人分ある?」
「お爺ちゃんの分と私の分♪」
ツッコムのにも体力を使うため今回はツッコまないでおく。
「そうですか。じゃいただきます。」
「いただきます。」
さすがに薫姉。
このハンバーグ美味すぎ。
どうしたら、この味をだせるんだ?
「美味しい・・・・。」
「スゴいよな・・・・。」
「だろ?薫の料理は天下一だかりな。」
「そそんな事ないよ!?」
ちょっと待てぇい!!
これはツッコマせてもらおうじゃないか!
「あんたら音も立てず何時きた!?しかもメシ持ってきたのかよ!?」
「まぁまぁ落ち着け。飯は皆で食べた方が美味いんだぞ?」
「そうだよ♪皆で食べた方が美味いよ?」
この似たもの夫婦が・・・・。
俺のツッコミを軽く流しやがって・・・・。
でも心のどこかで喜びの声を上げている自分が居るのも確かだ。
「そうだね。」
「それではもう一度・・・・。」
もう一度?
あぁ・・。
「「「「いただきます。」」」」