第24話
送ってくれたケン兄に礼を言ってから(タク兄の)家に入った。
「「ただいま。」」
「おかえり。」
中に入ると薫姉が笑顔で迎えてくれた。
「お風呂いれてあるから入って。もちろん上がったらベッドで大人しく寝ること。」
「はぁい。」
なんかお爺ちゃんになった気分だ。
―――――――――――
螢がお風呂に行くのを見送って完全に姿が見えなくなってから、ついため息を吐いてしまった。
「ため息つくと幸せが逃げるぞ?」
リビングで食事を摂っているお兄ちゃんが私にそんな事を言ってきた。
「だって・・・・。」
「まぁ好きな人が倒れたのだから心配でたまらないか?」
「そうだよね。好きな人が倒れたりしたら心配で心配で居ても立ってもいられないもんねぇ?」
好きな人を強調するあたり、冷やかしとしか思えない言い方だ。
「うん・・・・。」
でも私は首を立てに動かす。
この2人は知っているのだ。
私が螢が好きであることを。
「2・3日安静にしていれば体の重みも消えるってケンが言っていたから大丈夫。アイツただの優男に見えるけど医師としての腕は確かだから安心しな。」
「うん・・・・。」
それでも私の気は晴れずにいた。
30分としない内に螢はお風呂から上がってすぐさま今日泊まる部屋に移動した。
私はと言うとやることがなくてお姉ちゃんから小説を借りて読み始めたが、
「・・・・・。」
2階に居る螢が気になって集中できずにいた
半分程読んだ(内容は頭に入っていない)ところでお兄ちゃんに言われて螢にお茶を持って行くことになった。
《コンコン》念のためノックをするが返事はない
《キィ・・・》
扉を開き中に入ると眠っている螢が目の前にいた。
彼の寝顔は前に風邪を引いた時に見て以来だ。
持ってきたコップを近くにある小テーブルの上に置き、螢に近づく。
「螢・・・・。」
寝ている螢に呼びかけるが当たり前のように返事はない。
私はそっと彼の頭を撫でる。
癖のない真っ直ぐな黒い髪。
前に螢が風邪を引いた時にもやったっけ?
「奈緒。」
「え?」
いきなり螢が私の名前を呼び、驚いたが彼はまだ眠っていた。
だが私はまた彼に驚かされた。
「なん・・で?」
なんで泣いているの?
その涙は・・・・
その涙は何故、流れているの?
悲しくて?
嬉しくて?
「奈緒!!」
次の瞬間、彼は・・・・螢は私の名前を叫びながら上半身起こした。
「ハァハァ・・・・夢?」
螢は私が居ることに気づいてはいないようだった。
「螢?」
私が声を出すと、驚いたのか体をビクッとさせた。
そしてゆっくりとした動作でこちらを見てきた。
「奈緒?アレ??俺は?」
パニック状態の彼を私は初めて見る。
だが直ぐに彼がどんな夢を見たのか知りたくなった。
「さっきまで寝ていた。ねぇ・・どんな夢を見たのか教えて。」
一瞬のうちに螢は固まった。
がそれもつかの間で笑顔で私を見てきた。
「夢なんて見てないぞ?」
嘘だ・・・。
その仕草はアナタが嘘つくときのものなんだよ?
だから私には嘘だとわかる。
「嘘なんて格好悪いよ?」
またまた彼は固まった。
そして重みのあるため息を吐く。
「悪夢。」
「どんな?」
「・・・・。」
「ねぇ?」
「言いたくない。」
そう言い残し彼はまた眠る体制をとったが私の追求はまだ終わらない。
鬱陶しいかもしれない。
でも私はあの涙の訳を知りたいんだ・・・・。
「私が夢にでたんだよね?」
再度彼は上半身を起こし私を見てきた。
驚きの表情で。
「なんで知って・・・あ。」
「なんでって・・・・私の名前を叫びながら目を覚ましたじゃん。」
「・・・・マジで?」
「大マジで。」
大をつけた事は気にしないでください。
とくに意味はないから。
「はぁ・・・実は」
彼が夢の内容を明かそうとした時だった。
扉が勢いよく開かれたのは。
「螢さん大丈夫ですか!?」
またアンタ!?
勘弁してよ・・・・。
結局その日は紫織と(キレ気味の)優君の乱入のおかげで話を聞けずに終わりを迎えつつあった。