第22話
肝試し。
それは文字通りであって、たいてい怖がる人、怖がらない人と別れる。
だが俺のパートナーはどちらでもない。
「ふっ!」
「ぐふ!?」
あぁ・・・・またお化けに変装した人が地面に倒れた。
コレで何人目だろ?
「よし、次。」
「ちょっと元希さん!『よし』じゃないですよ!!何で変装した人が俺達を脅かそうと現れる度に鎮めるのですか?!」
そう俺と同じく赤色であったのは元希さんだったのだ。
そして、
いざ石段を目指し歩き出してから数分、瞳姉の家で働く使用人達が所々で俺と元希さんを脅かそうと『があぁ!!』やら何やら声を上げ近づいてくるのだが。
「バアァァ!!」
「出たか・・・。」
元希さんは近づいてきたゾンビの格好をした使用人(肝試しに何故ゾンビ?)に先程までと同じくマジで鳩尾に右ストレートを決める。
「ばは?!」
ゾンビは崩れるように地面に倒れる。
俺にはその瞬間がスローモーションで目に映る。
「ふっふっふ・・・・次。」
不気味に笑う元希さんは楽しそうだが、俺はその声と笑みを見てゾッとした。
あぁ、また林から走って近づいてくる音が聞こえる。
可哀想に。
「ハハハハ!」
笑いながら近づいてくるお化けは笑った顔のまま気を失った。
元希さんの拳によって。
違う・・・・。
俺の知っている肝試しはこんなモノではない。
お化けを鎮めるなんて・・・・。
だいたい何で味方相手に肝を冷やさなければならない?
「さぁ出てこい。」
これは流石にお化け達が可哀想でたまらん。
ズンズンと先に進む元希さんと少し距離をとって歩く。
そしてその距離を保ちながら瞳姉に電話をかける
「も〜しも〜し?」
「瞳姉?あのさぁ。」
「もしかして元希が暴走してるの?」
何故わかったのかはこの際どうでもいい。
むしろ助かる。
「そうなんだよ。どうにかして。」
10メートル先では丁度ろくろ首が気を失ったところだった。
「は?イヤよ。これはアンタへの罰なんだから。」
は?
罰???
「罰って何の?」
「奈緒と喧嘩していたお陰で場の空気がピリピリしてたから、その罰よ♪」
この時になってようやくケン兄の言ってた意味が分かった。
時としてだって?
アンタの奥さん年がら年中悪魔だよ!!
「あっそう言えば先程から奈緒とハグレて困ってるんだよね。誰か一緒に捜してくれないかなぁ〜?」
いやいやアンタ、俺のSOSは無視ですか?
「さっきハグレたのならすぐ近くにいるでしょ?」
「それがイナイのよね。アハハ♪」
「笑うとこではないよ?むしろ笑えない状況だよね?」
「そうなんだよね・・・・捜す、捜さないは君次第って事で夜露死苦♪じゃあね♪」
「ちょっ!?」
《プー・・・プー》
電話が切れる前に言いたかった・・・・。
いくら何でも夜露死苦は古いよってね。
だいたい高校生になって迷子だ?
アホくさ。
第一に何で喧嘩している迷子ちゃんを俺が捜さねばならん?
そう思ったのに・・・・
「・・・・・あぁ〜畜生!!」
叫んでいた時にはすでに俺は走り出していた。
奈緒が迷子?
捜すか捜さないは俺次第だって?
捜すに決まってんだろうが!!
「奈緒!どこだぁ!?」
だいたい先程から奈緒の微笑む姿がフラッシュバックを繰り返していて頭から離れない。
それに・・・・好きな人が慣れない土地で迷子になっていて放って置けるわけがないだろうが!?
「お〜い!奈緒!?」
名前を叫びながらがむしゃらに走る。
ただただ迷子のお姫様を見つけるために。
―――――――――――
螢が狼男にコブラツイストをかけている俺の横を走り過ぎていって数秒経ってから携帯を取り出し耳に当てる。
「もしもし?作戦成功?」
電話先からは上機嫌の瞳が声を上げる。
「大成功と言っても過言ではない。」
「じゃ次はアンタの番だからね?よろしくね元希。」
「おう。」さて第一段階成功
次は
「もしもし奈緒?非常に言い辛いのだが実は──」
さてどう転ぶか・・・・。
楽しみだな。
電話を切ってからニヤツく俺がいた。
―――――――――――
「ふふふ♪」
まさか計画通りにすべて事が進むとは思わなかった。
奈緒はさっき真剣な顔つきで私の隣を走り去っていったから元希のヤツ上手くやったんだろうなぁ。
とにかく後は本人たち次第だ。
こっから先はもう手助けはしない。
ただ上手く行かなければキレちゃうけど♪
まぁどう転ぶか楽しみだわ。