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第20話

気まずい空気を周囲に纏ったまま階段を1段ずつ降りて行きリビングに足を踏み入れた。

拓兄と薫姉はソファーに並んで座りテレビを見ていた。


「はあ・・・。」


隣で奈緒がため息を吐いた。


前方ではほのぼの。

こちらではピリピリともモヤモヤとも違った空気が・・・・。


「あ・・・。」


何かに気づいた奈緒は横にある幾つかの写真立ての中から1つを手に取った。

気になった俺は後ろからのぞき込む。


「懐かしい・・・何年前だっけ?」


「8年前だよ♪」


「俺ちっせぇ・・・。」


「そりゃ小学4年生だもん。」


写真に写っていたのはタキシードを着た拓兄、ウエディングドレスを身に纏った薫姉と当時4年生だった俺と奈緒だった。


「10歳の俺って何してたっけ?」


「号泣。」おい固羅


「身に覚えがありませんけど?」


「いや確かに号泣してたよ?お兄ちゃん、螢が」


「してたしてた」




拓兄が奈緒の声を遮りながら同意をする。

アンタ盗み聞きしてたな?


「何時したよ!?」


「俺が実家に帰るって言ったときに泣きながら『いやだ!』を連呼してただろ?」


「ぐっ!」


反論できたない・・・・。

確かに怪我が完治して、試合でも負けたがら家に帰るって言われたときに拓兄が居なくなるのが嫌で泣いたな。

ふと隣に目をやると奈緒と薫姉が写真を見ながらヒートアップしていた。




「この時のウエディングドレス素敵だったよ。」


「でしょ?これはね」

「ストップ!!」


拓兄が薫姉の口を後ろから両手で押さえた。

ものすごい焦ったような形相で・・・・。


「お姉ちゃん?」


拓兄は薫姉の体を反転させ必死に眼で何かを伝えている。

ウエディングドレスで知られたくない事でもあるのかな?


「奈緒ちゃん、また今度話すね。」


と言って奈緒に向けてウインクする。




「えぇ・・・わかった♪」


なぜに上機嫌になる?


「そういえば拓兄と薫姉って高校3年で結婚したんだっけ?」

「「うん♪」」


「いいなぁ・・私も早く結婚したいな・・・・。」




ドキリとした。

奈緒は誰と結婚したいと思っているんだ?


「相手はもちろん螢だろ?」


拓兄の発言は俺だけでなく奈緒をも固まらせた。


「えっと・・何故そうなるのですか?」


俺の問いかけに薫姉は笑顔で答えてくれた。



「昔、瞳の別荘いた時に言ってたじゃない。」


隣では奈緒が顔を真っ赤にさせて突っ立っていた。




だが俺は1人顔を強ばらせていた。




その当時の記憶は幼い頃にしてはよく覚えている。

いや・・・・・・。






忘れてはいけないんだ。









俺の不注意で拓兄は1度夢を諦めたてしまったのだから・・・・。




幼かった俺は両手に抱えていたバスケットボールをうっかり落としてしまい、慌てて拾おうと道路に飛び出した。

偶々その場に居合わせた拓兄が俺をかばって車に引かれた。

その時後ろから奈緒が『危ない!』と叫んだことを覚えている。


俺をかばった拓兄は意識不明の重体だった。

母さんが俺を抱きしめ奈緒は隣で泣いていた。


俺はその5メートル離れたところで泣いている薫姉の顔を一生忘れない。



必死だったであろう、あの顔を・・・・。







拓兄の意識が戻ったのを知った俺は病室に訪れて謝った。

そんな俺を拓兄は笑顔で許してくれた。

そしてその数日後、別荘に訪れた時に拓兄にとって【大切なもの】である赤のリストバンドを俺にくれたんだ。

あの時はただ単に俺がバスケを好きだからくれたと言った拓兄の言葉は年が経つにつれ重みを増していった。


よくよく考えてみれば、あの時2度とバスケのできなくなっていた拓兄は俺に夢を引き継がせたんじゃないかな?


自分の代わりに・・・と。


「お〜い螢?」


「え?」


気がつくと3人とも心配そうな目で俺を見ていた。


「あ・・・・何の話をしてたんだっけ?」


俺の発言に奈緒が瞬間沸騰した。


なぜに?


「だから・・・・。」


「だから?」


「薫が螢に奈緒が好き?って聞いたらお前『結婚する』って言ったじゃん。」


「は?」


脳内メモリーにそのような記憶入っていませんよ?


「覚えてないの?」


頷く俺に薫姉は驚いた様子で俺を見たのちに奈緒を見て『あっ』と言った。

それは拓兄も同じだった。

その『あっ』ってなに?



「最低・・・・」


この鳥肌が立つ感じは・・・・?

ゆっくりと首を90度回転する。


「もう1度言ってあげようか?」


そう言い微笑む奈緒から怒っていると瞬時に悟った。

しかもかなりキてますね。


「遠慮し」

「最低!!」


耳が痛くなるほどデカい声で俺を最低と罵る。


「覚えてないことは仕方ないだろ?」


俺の発言がさらに奈緒を逆上させてしまったようだ。

まさに鬼の形相。


「私の思い出返してよ!」


「は?」


「だから!」


「はいストップ」


拓兄が俺等の間に割ってはいる。


「近所迷惑だからヤメろ。」


《プルルルルル》


家の電話がなり薫姉がすばやく手に取る。


「もしもし?・・・・・え?時間なら・・・・うん・・・・・・イヤでもちょっと・・・・・そうだけど・・・・わかった。」


きれた電話を薫姉は元の場所に戻しこちらを見てきた。

申し訳なさそうにして。


「薫、誰から?」


「瞳からで・・・・。」


「瞳?なんて?」


「それが・・・・。」


メチャメチャ嫌な予感が・・・・。


「肝試しするから8時に神社の前に集合だって。」


泣きそうな顔で薫姉はそう告げてきた。


てゆうか肝試し?

余裕♪・・・・何だとけど瞳姉の発案なのならば不安です。


「ちなみに瞳の発案。」


薫姉は俺の心の声が聞こえているのか?


「せいぜい泣かないようにね?」


にゃろ・・・。

あからさまに奈緒が挑発してきやがった。


「その言葉そっくりそのまま返す。」


「返品はできません。」


「まぁせいぜい泣くなよ?」


「螢じゃあるまいし。」


自分の中の何かがキレた音がした。




「よく言うぜ。中学生の時にクラスで唯一、夜の校内での肝試しで泣いたくせに。」


「誰の話?自分かな?」


「もと西中3年2組出席番号7番の下田奈緒さんの話ですけど?」


「そんな事言うんだ?だったら中学の1年の時にあった体育祭でのクラスリレーのアンカーで最後の最後で抜かれて負けたのは誰だっけ?」


うっ!

思い出したくないことをよくも!


「・・・・その後にあったブロック対抗のダンスで盛大に転けて恥ずかしい思いしたのは誰だっけ?」


ふ・・・・どうだ?


「いい加減にしないと家から追い出すぞ?」


「だって奈緒が」


「言い訳は聞かない。わかったのなら仲直りしろ。」


「・・・・わかった、すいませんでした」


謝ってはいるものの言い方は嫌みたっぷりだった。


「私こそすいませんでした。」


それは奈緒も同じだ。

今、冷戦が開戦した。

次回とうとうケン達4人が登場します。たぶん・・・・

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