第16話
「お前ら何時来た?」
「あらあら、これは電話の向こうでハァハァと興奮していた変質者じゃありませんか」
隼人の発言に螢のスイッチが入ったのがわかる
だって笑顔なのに眼が笑ってないんだもん
「ヤッバ!」
「逃ーがーすーかー!」
危険察知して逃げる隼人を鬼の形相で螢は追っかけだした
2人ともにジャングルジムを上って飛び降りて、次に滑り台を駆け上がってもう片方から滑り降りる
「きゃはは!」
「おかしー!あはは」
走り回る螢と隼人を見て私と美帆は笑った
そういえば、中学時代はよく4人で走り回ってたなぁ
気がつけば螢も隼人も笑いながら走ってる
何だかんだで楽しいんだね
あ、とうとう捕まえた
「捕まえたぞコラー!」
「あ!それはダメだって!い・・いやあぁぁぁ!!」
「審判カウントしろ!」
グラウンドのど真ん中で寝技を決めた螢が私達にカウントを求めた
「「ワン!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ツウ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「ワザと遅く言ぬあぁぁぁぁ!」
螢が力を入れたみたいで語尾が叫び声に変る
「どうだ?!」
「ギブギブ!」
「却下♪」
「奈緒の鬼!!」
「螢・・・」
「ラジャー!」
「ギャーー!折れる折れる!」「「「折れろ!!」」」
「ノオーーー!」
花火そっちのけで《今》を私達は楽しんだ
ホントのホントに楽しくて、ずーーーーと笑っていた
「ねぇ!もうそろそろ花火やろうよ!!」
美帆は持っていたビニール袋から花火セット、定価780円を取り出した
「そういえば打ち上げ花火終わっちゃったみたいだね」
夜空には星達と月が輝いていた
花火を中から取り出して、まず手持ち花火で楽しむコトに決定したので各自手にとり火をつけ・・・
「イェーイ!」
「ヒャッホー!」
ハイテンションの2人は両手に花火を持って走り出した
「あ・・・」
何かに気づいた声が横から発せられ、視線を移すとブラックな笑みを浮かべる美帆が普通の花火より太くて長い花火を手にとっている
あ・・・確かそれ・・・・
去年と同じアレだよね?
私は同じ物を手に取り、取り扱い上の注意を読み始めたと同時に男2人が戻ってきた
「次はどれにしよっかなぁ♪」
「ん?あ、美帆さん?まさか、それは―――」
螢は美帆が持っている花火の存在に気づいので、注意を読み終えた私が代わりに頷いた
あ、顔が引きつってる
「隼人逃げろ!」
「え?あ、うっそおぉ!」
隼人も気づき螢と一緒になって逃げるが・・・火の玉が連発で襲いかかってきた
《取り扱い上の注意
火の玉が勢い良く出ますので人に向けないでください》
「避けないと火傷しちゃうよん♪」
美帆は既に悪魔となっている
笑っている眼がヤバい
「あ、危な!うお!?」
「うわ!彼氏にする行為じゃねぇ!!」
なんて文句を言ってる割には2人とも完璧に避けてるね
さすが現役部活生
スゴい
数分間に美帆は天国に、螢と隼人は地獄にいた
もちろん、この後は安全に打ち上げ花火を楽しみ・・・
「トリはやっぱりコレでしょう!?」
と言う美帆の発案で線香花火を1人1つ持ってしゃがんでライターで火をつける
「綺麗だねぇ」
「・・・だな」
決して勝負をしているわけでもないのに螢の目は真剣そのもの
だが私と目が逢うと優しく微笑んだ
「また来年も4人で此処にこような?」
「うん♪」
気がつけば2人の火の玉は地面に落ちていた
「私ね」
―――螢が好き
「なんだ?」
「の、のど乾いた」
「それじゃ買いに行くか?」
「うん・・・」
私の小心者!
今言えばよかったのに・・
「ほら!行くぞ?」
螢は私の手を取って立ち上がらせて、そのまま引っ張って歩きだした
私は手を繋いだということが嬉しくて・・・・
「なにニヤケてんだ?」
「うるさい馬鹿!」
ニヤ・・笑っていた
今日の嬉しかったことNo.1だね
今となっては昨日から螢に苛立っていた自分はバカだったと思う
螢は何も悪くないのに1人で勝手に怒って、無視して、泣いて・・・・最悪だよね私
螢・・・ホントにゴメンね
それと・・・大好きです