第13話
「お袋!起きねぇと遅刻するぞ?!」
夏休みになっても俺の日常は変わらず朝誰よりも早く起きて朝食を家族分つくり階段下からお袋を呼び起こす
毎回思うんだけど……
普通逆じゃない?!
まぁそれは親父が早くにしてこの世を去ったからだろう
原因は知らないし、今更知りたくもない
べつに親父が嫌いだったとかじゃない
理由はお袋が話さない、ただそれだけのコトだ
《ガチャ…》
ドアを開け外に出ると雲1つない綺麗な青空だった
「よし!」
気合いを入れて学校へ向かった
部室に入るとすでに何人かの部員がきていた
「おはよう」
バスケ部の心得その壱
学年関係なく必ず挨拶すること
嘘です
今かってに俺が作りました
ごめんなさい
「おっはよう♪」
朝からテンション高いなこの野郎は…
「暑いから離れろ」
後ろから飛びついてきた隼人に向かって威嚇する
「はぁい♪」
いつもなら泣き真似の1つでもするが今日は素直に身を引く
「お前のそのテンションはキモいぜ…」
「なにを言うか!?今日は年に1度の祭りだぞ!テンション上がらないでどうする!?」
と力説する隼人をただのアホにしか見えないのは俺だけだろうか?
「祭りというだけでそこまでノボセるなんて小学生かお前は?」
いや小学生でもそこまでないんではないだろうか?
俺の発言など気にもとめずに笑顔で隼人は部室を出ていった
シューズも持たずに
練習が終わり部室に戻る頃にポツポツと音を立て雨が降ってきた
やがて朝の天気が嘘のような豪雨となった
「こりゃ祭り中止だな」
「くっ!なんでだよ…」
振り返ると制服に着替えた隼人が握り拳を作り、唇をかみしめていた
「なんで雨が降るんだよ…」
「いやいや、なんでそんなに悔しがってんだよ?」
これがフザケているなら良いが恐らく隼人は本気だ
これは精神年齢4歳だな
「愚痴言ってないで帰るぞ。部室の外で美帆が待ってんだろ?」
「マイハニー今行くよ!」
美帆はコイツのどこに惚れたのか本気で気になった
外に出ると部室前で雨宿りをしている美帆がいた
「み〜ほ〜!!」
隼人は美帆に抱きつこうと両手を大きく開いて走りだした
「ウザい!!」
美帆は咄嗟に横にずれて低姿勢になり右足を横に出す
それに見事隼人が引っかかりハデに転んだ
1回・・2回・・3回
と回って起きあがった
「美帆痛いんだけど?」
「隼人が悪いんだから自業自得よ?それより傘持ってないの?」
「ない…」
くるりと体を反転させて俺を見てきた
「螢は?」
「ねぇよ」
あるわけがない
なんせ天気予報では今日1日晴れだと言ってた
「どうすんのよ?」
「嘆くな。状況は変わらん」
「でもどうする?コンビニに買いに行こうにも遠いし…」
隼人が正論を言うとは…
精神年齢は中学生に格上げしてやろう
「タクシー呼ぶ?割り勘ならあんまりお金かかんないし」
「そうすっか…」
てなワケで電話しようとした時だった
「あ!いたいた♪」
聞き慣れた声が聞こえた
しかも上機嫌だ
後ろを振り返ってみるとやはり居た
「紫織ちゃん?どうしたの?」
俺の問いに紫織ちゃんは笑顔で応えてくる
「螢さん傘持って行ってないんじゃないかなぁ〜と思って向かいにきました」
えへへ♪と笑う紫織ちゃんの右手を見ると傘が2本あった
「え?マジで?」
「マジっす!だって螢さんこの前雨に濡れたのが原因で風邪引いたじゃないですか。だからです」
その風邪、紫織ちゃんにうつちゃったもんね…
ごめんね
「ありがとう」
紫織ちゃんの頭をナデナデする
「あのさぁ申し訳ないんだけど……」
横に目をやるとホントに申し訳なさそうにする隼人がいた
ヤバい…
コイツが言いたいこと分かってしまった
「1つ傘貸してくんない?」
お願いと言って手を合わせてくる
「え!?いいですよ♪むしろ大歓迎です!」
「ありがとう」
紫織ちゃん大歓迎は間違ってるよ
てゆうか何で大歓迎なんだ?
でも傘を貸して正解だよ
でないと鬼が君臨してたよ
「じゃ美帆帰ろうか?」
「うん♪」
2人は仲良く腕を組んで相合い傘で家に帰りましたとさ
めでたし、めでたし
「螢さん帰りましょ?」
「あぁ…」
と2人で傘に入って思った
これ優に見られたらヤバくね?