第10話
毎年夏休みは部活に出て終わると家に帰り休む
暇な日は昼過ぎに起きてダラダラと過ごすといった感じのモノだった
だが今年は違った
何かと用があるように装って奈緒と接触していた
今日もそのつもりだったんだけど……
「ヘッ‥クショイ」
朝から怠いと思ったら風邪かよ……
マジでダセェ……
……今日は奈緒に会うのは無理…か
気分はブルーで一色です
《ガチャ…》
もしかして!?
何て思ったりしたんだけど人生そう思い通りになどいかない
「兄貴…何だその不機嫌面は?」
「べつに…何か用?」
自分でも分かる程の不機嫌そうな声だ
「お粥作ろうか?」
「腹減ってないんだ…悪いな」
体起こすのもダルいときたか……
「腹減ったら言いなよ?」
そう言った優は部屋から出ていった
優の階段を下りていく音がした
「……………。」
暇だ
病人が何を言うか!?と言われそうだが実際のところホントに暇だ
「ふぁ〜……」
仕方ないさね……
最終手段
……おやすみ
なんか頭に当たってるんですけど?
ってな感じで目を覚ました
目は開けてないけど起きてますから!!
………あれ?
これ撫でられてんじゃねぇ?
しばし神経を頭に集中
うん、撫でられてる
でも優やお袋がするわけないし……
隼人……やりそうだな
いや『やりそう』といったレベルじゃない……
奴なら100%する!
そして起きた俺の反応を楽しむはずだ
ふ………
覚悟はできてるんだろうな?
隼人さんよ!!
勝手に今俺を撫でているヤツを隼人と決めつけてしまっていた
手を相手に気づかれないように握りしめて……
目を開き相手を確認して……………
あで?
「あ、起きた起きた♪」
視界に入ったのは微笑む
「……奈緒?」
「そうだよ」
俺はバカだ……
もっと早く気づいていれば………
撫でられ続けていられたのに……
「優君に聞いたよ。昨日ずぶ濡れで帰ってきたんだって?」
「あぁ……」
さっきまでの笑顔は消え怒り混じりの表情になった
「それが原因よ…たぶん」
「たぶんじゃなくて間違いなくだな」
そう言った後に微笑んでみせると急に奈緒が俺の額に手を当ててきた
そんだけでドキドキする俺って意外にウブ?
……うん、この考えキモイね
額から手が離される
少し……残念だ
「熱…下がったみたいだよ」
「あ…そういえば体が軽くなった気がする」
菜緒に言われて気づいたが先程まで重かった体がかなり軽くなっていた
と同時に
《ぐぅ〜》
腹減った……
「クスクス…お粥作ってくるわね」
この発言に驚愕した
「お前料理できんの!?」
これはかんに障ったらしく目つきが鋭くなった
こわ……
「私だって料理くらいできますぅ〜!」
いやアナタ前科がありますから!!
「いやだって中2の時の調理実習でお前が作った唐揚げ食べた班員が気絶したじゃん」
紛れのない事実だ
意識の戻ったそいつは震えながらこう言ったらしい……
『アレは食べ物じゃない…毒物の一種だ』
今の俺が聞いてたら死線越えてたよ?
まぁそいつの語りを幸いなことに奈緒は知らない
っで……そんなことがあったのに何か作って俺に食べさせるって……
僕ちん風邪ひどくなっちゃうよ?
「ああれはちょっと失敗しただけ!あの後修行して人並みに作れるようになったんだから!!」
そんな必死な目で見られると信じたくなってしまう……
あ、閃いた
「じゃあ唐揚げ作って」
何を隠そうこの火野螢
唐揚げが大好物でござる
それに修行したのなら中2の時みたくならないはずだ
修行をしていれば……
「わかったわ!見てなさい」
そう言って奈緒が部屋を出ていってから20分が経った
俺のお腹も今ピークを迎えつつある
《カチャ》
「できたよ♪」
階段の音を立てずに元気よく奈緒が部屋に入ってきた
「さぁ食べて食べて!」
皿を手渡される
見た目は…悪くないどころか良い
だが問題は味だ
震える箸で1番小さな唐揚げを摘み口へ運ぶ
!!
「…うまい」
「でしょ?」
ニコッと笑う奈緒を見ながら俺はあることに気づいた
もう1つ食べてみる
やはりそうだ
この味はいつも弁当に入ってる唐揚げと同じ味だ