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黒猫

作者: 木村伊吹

黒猫

古来より日本では黒猫に前を横切られると縁起が悪いという。

疲れた

自然と出る言葉がこれだった。

つまり、私は心身共に疲れており、私の中にある防衛機能がヘルプを求めているのであろう。などと考察しなくてもわかっている。

連日連夜会社に残り残業、幼少のころより勉強せねばいい会社に入れないといわれ必死に受験戦争に勝ち残り得た結果がこれか…。そう思えば何もする気にはならない。

果たして私は運がいいのであろうか?周りは私のことを一応エリートであると認識してくれるようだが、この生活を続けてまでそのエリートとやらを続けねばならないのだろうか。

連日残業は当たりまえ。休日出勤もせねばならない。こんな日々じゃ彼氏もできない。

25歳という年齢そろそろ結婚に逃げる時期なのか。そんな下らぬことを考えていたら、ふと私の視界の下のほうに黒い物体が現れた。

猫だ。

しかもただの猫ではなくこの暗い夜に同化できるほど真っ黒な。

これはいけない最近ただでさえついていないというのに,これ以上不幸になってはいけない。

だが、たしか黒猫は見るのではなく横切られれば運が悪いという。

つまり、まだ横切られていない今はチャンスですらある。

よし、猫が私を眺めている今。チャンスだ。

走れ走るのだ。不幸から逃げ切るのだ。今日は幸いまだヒールの低い靴を履いている。そいやああ。

 心の中で叫ぶ。

 そして走る。酔っ払ったサラリーマンが突如疾走している私を見てぎょっとした顔でこちらを見ている。そんなことを気にするな。気にすれば幸せはゲットできないのだ。私の家のアパートまで横のコンビにを走りぬけ信用銀行とスーパーの間を走りぬけたどり着いた我が家。

 よし、これで猫はまいたな。ゼヒュゼヒュ私は喘息患者のように酸素を求めている状態で今なら酸素一リットル二千円で買えるよ。

 ふと後ろを見るとまだ猫がいた。私は愕然とした。うそー私のやったことって。絶望につつまれそう思い花壇のブロックに座り込むと猫が近づいて私のスーツにすりすりと頭をこすり付けてきた。よく見ると子猫だ。

 私はこんなちっちゃな子猫から逃げていたのか。そう思うと笑みが出てきて余裕が出てきた。みたところ首輪もついていないしただの野良であろう。私は私をびびらせた罰としてこの子猫を監禁もとい飼うことにした。この日以降黒猫は我が家の住人となっている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 横切られるのが嫌なら後ろを向けばいいのでは。遠回りすればいいのかも。いずれにせよ、かわいいペットが手に入ったならいいですね。
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