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4話 かましていきます小細工を


エアリアル・エスケープ。

俺はスキルで衝撃を殺して着地する。

随分と落ちたようだ。

と言っても一階層だけなのだが。はぁ、なんでまた上までがこんなに長いのだ。


上を見ても全く先が見えない。俺はあんな暗闇から落ちて来たのか。

周囲を見回してみた。見えるのは一階の螺旋通路同様に壁に埋め込まれた明かりと正方形の石造りの部屋だけだ。今度は小洒落たライオンの像なんか壁にはまっている。


どうせこれ動き出すんだよね?

そう思っていると、やっぱり動き出した。父さんの言った通りだ。

とりあえず俺は様子見で動かないで見る。いざとなれば体を浮かせてエスケープすればいい。

そう思い身構えていたが、ライオンはある程度見回りをすると、もと居た位置へと戻っていった。


俺はそれを見て一つの仮説を立てて部屋を一気に駆け抜けてみた。

動かない。やっぱりこの石造は一定時間しか活動しないんだ。

そして、その活動時間に捕まれば戦闘開始何だろう。

今、何秒たった。5秒だ。後どのくらい行けるんだ。まだ部屋の半分だ。

もう少し行けるだろう。9秒たった。一度止まってみよう。

俺は部屋の中でしゃがみ込んだ。

ガコン。石造が壁から外れたようだ。


神経を研ぎ澄ませてライオンを見る。

しばらくしてライオンが元の位置に戻ると、俺はほっと胸を撫で下ろした。

なるほど。動かなければ反応しないらしい。

俺はまた走り出した。

先ほどのだるまさん転んだを何度か繰り返す。

5回目くらいだろうか。俺はやっと部屋の出口らしきところへたどり着いた。


目の前にあるのはライオンの口に丸い取っ手をくわえさせた扉らしきものだ。

俺はしっかりだるまさん転んだをしてから取っ手を触ってみた。

すると、後ろで一斉にガコンと外れる音がしてこちらに走ってくる存在があった。石造だ。


まだ10秒は立ってない。となると、なるほど。トラップか。

どっちにしろ戦闘の必要があるらしい。

俺は扉を見た。うーむ。果たして出来るだろうか。いや、やるしかない。

俺は壁に向けて跳躍すると、こう唱えた。

エアリアル・エスケープ。

俺はいつの間にか扉の向こう側にいた。

直ぐ後ろでは、ドガンドガンと凄い音を立てて扉にぶつかっている音がする。


手に入れたスキルの有用性を実感し、俺は足早にこの場を去った。

今歩いているのは、先ほどの螺旋階段のひたすらに直進バージョンだ。

心底思う壁にハメられている明かりがあってよかったと、このおかげで見通しがよく……ほら扉が見えてきたのがわかる……。

あぁ、聞いた事がある。これは父から聞いた事だ。

宮殿は人の心を見通すと。わかってはいてもやはり最初からの実行は難しい。


俺は今それを実感した。

そう。今の通路は俺の心を読んだかのように明かりを消した。

しかも、どこからか小馬鹿にするような笑い声まで聞こえてくる。

やるじゃん蒼穹。

俺は少しイライラしながら通路を駆け抜けた。

途中で何か音がしてビビったが、構わずに扉に向けてエスケープした。

次の瞬間に見えたのは小部屋だった。


あっぶねー。なんて事は言わない。エスケープを使った後にひたすらに無心を心掛けた。

その為に目を瞑ったんだ。

もう一度目を開ける。

目の前には金塊が広がっていた。

今までの部屋とは違う。

壁の色も白く。ごつごつとしていなく、どこか清潔感に溢れている。


天を仰げばそこには豪勢なシャンデリアが吊るされている。

俺は何も不安要素がなさそうなのを確認すると、自分のステータスを確認した。

レベルが5また5増えている。

行動だけでこの上がりようだ。

文字通り経験をしたのだろう。身の丈に合わない経験をすると、こうもレベルが上がるのか。しかも今は一人だ。少しの行動で結構な経験値が入ってくるのかもしれない。


55レベル。何だか一気に駆け抜けてしまっているエリート街道。

そこら辺に落とし穴でも仕掛けているんじゃないかしら?

とか不安になってしまう。

少しニヤつきながら俺は宝箱に手を上げた。

そして、思った。


「俺ってばトリ頭」

宝箱を開けると、とんでもない水が濁流となってなだれ込んできた。

エアリアル・エスケープ。

即座に俺は体を浮かせて叫んだ。

焦る。だって見えたんだ。


ハズレ宝箱が数多いと言われる宮殿内にあるアイテムがあったんだ。

これが慌てずにいられるか。

俺は実体化すると同時に腕を振って宝箱の中身をぶんどった。

「お宝頂き!」

興奮のまま落ちる。あぁ、いつの間にか床が抜けていたようだ。

俺があんな事を考えるから。はい。文字通り落とし穴です。

真っ逆さまに落ちていきます。どんどんと遠くなる宙に浮いている宝箱。

もう直ぐ見えなくなるそんな時、上の宝箱を壁が覆った。


正確には床だろう。

なるほどね。床は戻るんですか。そんな事を思いながら落ちていった。

そろそろ床か。見えて来た床に合わせて俺はエスケープを発動させた。

無事着地する。

本当にこのスキルがなかったら俺は今頃骨ですな。

とか考えたが何も起こらない。

なるほど。人間には何も起こらないのか。じゃあこれも無理だろうな。


次の瞬間にボス部屋に移っちゃったり。

はい。何も起こらない。

次の瞬間に宝箱の前に移っちゃったりしてなぁ。

はい。何も起こらない。

地道に行くしかないっすねぇ。

というか俺落ちすぎ。

天井を仰ぎ見ると、もう先何て見えない暗闇だ。

周囲を見回す。


奥の方にモンスターがいる様だけどこちらには気づいていない。

他には何もなく、またまた5メートル毎に明かりに照らされるごつごつとした正方形の部屋だ。

俺はとりあえず先ほどの戦利品を確認した。

双眼鏡のようだ。

うむ。今一実感がわかない。

どうしたものかと、考えて俺はモンスターに少し近づいて鑑定を発動させた。


するとどうだ。何も起こらない。

その鑑定をやめて双眼鏡でモンスターを見る。

・見通す目。そう書かれていた。

どうやら鑑定系スキルの宝具らしい。宝具なのか。

俺はそれを持ってモンスターを見る。

・リザードマン。Lv.950.

嘘やん。あまりにも高すぎるレベルに俺は双眼鏡を外した。

このレベル差は確実に一撃死だ。なるほど。通りでレベルがホイホイ上がるはずだ。


高難易度で有名で今まで名高い冒険者が何人も屠られた宮殿の中でも伝説クラスの蒼穹。

俺は楽観視していたのかもしれない。

俺は数歩下がった。

更に更に下がっていく。

もうモンスターは見えなくなっていた。

俺は集中した。そして、静かに心の中で復唱した。


めっちゃ弱い。何あいつ物足りないわ。この程度かよこのダンジョン。

全然ダメじゃん。マスターランクボスから何から何までもっともっと強くなって俺を楽しませな。今のままじゃ弱すぎよこの阿呆が。

俺はもう一度モンスターに近づいて双眼鏡を覗き込んだ。

・リザードマンLv.65。

俺より10レベル上。

……イケるやん。イケるやんこれ。

俺は走り出して戦闘を開始した。


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