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3話 躍動するドロップカード

脱兎・ミニフェンリル。

俺が手に入れたのはそんなカードだった。

この名前の配置には意味がある。

主に前の部分に。脱兎。ここだ。


そう。モンスターのカードには種類がある。

これを判別するのが、前部分の表記だ。レアの割合もそこで決まるらしい

そう父に教わった。

それにしても脱兎か……脱兎?

俺はその文字に驚愕した。喜びから顔がにやけてしまう。

風の系譜スキルをこよなく愛する俺としては押さえておきたいスキルだった。


風マニアなら誰でも知っているレア補助魔法。脱兎系。まぁ、これは風というよりは異空間の系譜らしいがこの際そこは置いておこう。脱兎系は脱兎系だ。

その上だ。その上有用なエスケープのランク。エスケープと言えば緊急回避で戦闘領域からの離脱が出来る最有用スキルのはずだ。

その中でもこれは一時だから、最も戦闘に特化したものだろう。


離脱距離は超近距離・近距離・中距離・遠距離・超遠距離。と種類がある。

これは必ず一定の距離を飛ばなくてはならないという事だ。

俺が引き当てたのは超近距離。一瞬だけ姿をくらませる完全な戦闘用だ。

初っ端から俺は何てものを引き当てたんだ。

いやいや、相手は攻撃してこないとはいえ伝説級の門番。これくらいの報酬は当然だろう。


……何でペーペーの俺は伝説級を倒せたんだろう。

不思議に思いスキルカードを出現させて裏面を見ていた。

そこにはミニフェンリルの紹介文があり、こう書かれていた。

『弱い者いじめをしない気高きミニフェンリル。そんな私は弱者に牙を向けない。だから今回も向けなかった。こいつがレベル高かったらと思う。こいつが成人していたらと思う。クソガキに無抵抗のまま討ち取られました』


「えぇ……」

とても可哀想なミニフェンリルのカードを俺はそっと所持品に戻した。

そうだ。試しに獲得したスキルを使用しよう。

エアリアルってつくから空中なのかな。

俺はジャンプして念じた。

グワンッと周囲が歪んで一瞬だが、俺の姿が消える。

着地すると、何とも言えない不思議な感覚に襲われた。

しかも、それだけじゃない。


魔力の減りが少ない。極端に少なかった。

話には聞いたことがある。

高位カードには魔力消費の極端に少ない有用カードが実在すると。

正直俺はここに入って今さっきまでどう逃げようかとか、そんな事も少し考えたりもしていた。

しかし、こうも運が回ってくると、もしかしたらという欲が浮かんでくる。

そうだ。俺は急いで自分のレベルを確認した。この世界にはレベルが存在する。


それの数値が絶対の強さではないが、無関係というわけではないそんな感じの数値だ。

簡単に言うと、レベル差があれば正面では難しいが隙ありとか闇討ちならば行けるなど、そんな感じだ。

俺がここに来る前。確か、親父に冒険で連れまわされた時に上がったレベルもあって20くらいは元々あった。

そこから、先ほどの戦闘でレベルが上がったのだろうか。気になった俺は手を眼前に上げた。


我がステータスの掲示を。

ステータス確認など魔法では初歩の初歩。

騎士や冒険などの方面に向かう者なら誰でも使える程度の技だ。

俺は浮き上がったステータスカードを確認する。

……嘘だろ。

驚愕せざるをえなかった。

あまりにも上がりすぎている。

上がったレベルはきっちり30。

ミニフェンリルの経験値はどれだけ多かったのだろう。


そう。俺のレベルは今50に到達していた。

俺はごくりと唾を飲み込み、握り拳を作った。

「ここまでお膳立てをしてもらったんだ。やらなきゃ男じゃない」

この時点でもう蒼穹からの脱出という選択肢は消えていた。

正面に構える扉。

この大きな扉を俺は勢いよく開け放った。

目の前に現れたのは横幅4メートル程の螺旋型の通路。5メートル毎に明かりがはめ込まれている様だ。

この通路を見た時、俺は何となく思った。


あぁ、大岩でも落ちてくるんだろうな。

そう思ってしばらく歩く。

長い。それにしても長い。

もう既に10分ほど歩いているが、まだまだ次の扉につく気配がない。それどころかモンスターすら見当たらない。

はぁ、つまらん。


でも冒険は忍耐力だ。そう思い、もう一歩進んでみると、何やら音が聞こえてくる。

俺は急いで耳を床にあてた。音は三種類だ。ゴロゴロと転がる先ほどの予想通りの音。しかし、もう二つある。これがわからない。俺は次に壁に耳を当てた。

やはりよくわからない。ん?いや、これは破壊している。どんどんこちらに。


どごぉぉぉぉん!そんな音と共に天井が粉砕された。

「一体何段仕込みなんだ!」

しかし、運がいいのか、落ちて来た岩は後方の床を貫通するだけだったから降りかかる破片を剣で弾くだけでよかった。

しかし、問題は解決していない。

まだだ。転がる音がもう直ぐそこだ。

しかも、また何かが落ちてくる音がある。どうする。

だが、考える暇なんてなかった。

今、まさに目の前に道全体を覆い尽くす岩がとんでもないスピードで迫っていた。


俺はタイミングを計った。

ここだ!俺はジャンプした。

エアリアル・エスケープの空間移動で回避しよう。

しかし、ここでの俺は運が悪かった。

ドカァァァァン!

上空から岩が落ちて前の道を破壊した。後ろも破壊されている。とりあえず俺はその場に留まれるようにスキルを使うしかない。

そして、使った。

見事に成功する。


しかし、跳ね上がって俺の足場に落ちた大岩はあろうことか俺の足場を完全に破壊していった。

エアリアル・エスケープが解けた後、俺は下の階層へと落ちていった。

「厳しいっ」

俺は甘く見ていた。浮かれていた。蒼穹という場所をろくに知りもしないで。

下がどんな階層なのかは噂で聞いている。おまけ要素であると。

レア要素があったりして、行きづらかったりすると聞くがそんな事はなかった。

そして、もう一つ聞いた事がある。

おまけ要素である地下層は初心者にはお勧めできないと。



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