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13話 殴り込みの前にお冷いっちょ!


目の前に現れた門は何やら不思議な雰囲気を放っていた。

見た事のない門だ。

黄金色の宝石で枠を作っており、その中に扉がある。

思わず手で触れてしまう。

何だろう。実際に引かれているわけではない。しかし、そこに引力が働いているような錯覚を覚えた。

俺が不思議そうにしていると、横にいるレニーが扉に寄りかかりながら言った。


「扉の中には勝手に入らないでね。鍵守りじゃないと扱えないから。それと本題なんだけど」

貴方はナスィーリエについてどれだけ知っている?

そうレニーは聞いてきた。

だから俺は首を振った。

「漠然としたイメージしか持ってないよ」


それを聞いたレニーは溜息を吐いた。

そりゃそうだ。皇子なのに俺は大体知らない。

「グラシアスには機関坊の皇子がいるとは聞いていたけど、ここまでとはね」

これで戦闘もダメだったら本当にポンコツだったぞ?めっとか小さい子を相手にするような事を言ってきたので黙れ自称19歳と言ったら殴られました。

レニーは一つ咳払いをした。


「まぁ、時間もない事だし。ぱぱっと説明するよ」

説明?何のだ。果たしてする必要があるのだろうか。

パパッと言って片付けるのではダメなのだろうか。

「はーい。不思議そうな顔しないの。わかってるの?今から行くのは魔界なんだよ」

「わからないわけないだろう。元よりそのつもりだ」

即答した。当然だ。何のために行動しているというのだ。

いくら俺でもこんな真似をする奴が魔界と何の関係もないとは思わない。

俺が困っていたのは魔界への生き方とプリズンゲートの行き方だけなんだ。


そんな俺の態度にレニーはポカンと口を開けた。

「確か貴方は破天荒で有名な父の方にそっくりだそうね。本当に自由だわ」

「あったことがあるのか?」

「一度ね。冒険にも連れてってもらった。でもそんな事はいいの。怖気づかないならかえって都合がいいわ。レニーちゃんと行動を共にするんだから役立たずだと困るん?」

「何故そこで止めた19歳。ポーズを取るんじゃない。やかましいんだよ」

「いい加減それ弄るのやめようか?」


それから俺はナスィーリエの詳細を教わった。

奴らは近頃になって活動を活発化させたようだ。

どう活発化させたのか。国に喧嘩を売るのではなく冒険者に喧嘩を売った。

宮殿を漁り始めたのだ。

その所為でどんどん人間側の神聖な領域が荒らされ始めている。

活発化したのは最近だからこれを知っているのはよっぽどの情報通か、熟練者しかいない。


そして、近々ナスィーリエと冒険者間で大きな摩擦が起こるのは間違いないとされている。

だそうだ。

確かにこの情報は有用だろう。しかし、何時かは知れる事で今知っても意味がないのでは。そう。

「時間の無駄ではないよ。そんな顔しないの。ここまで聞いたらわかるでしょ?力を増加させようとしている組織が無駄な事をするのかって事。何が言いたいかというと、多分ルーレシア姫は無事だよ」


何かがあるのか?

特殊な魔力?リリスとかいう魔物は吸収と言っていたな。

魔族は能力を奪うことが出来るのか?

いや、スキルは無理だ。なら魔族や半魔の特殊能力か。

ケリュネイアほどの種族ならあり得る。

まぁ、強かったのは昔で今は弱いらしいが、潜在的な能力は侮れないという事だろうか。どちらにしろ関係ない。


救出して叩き潰すまでだ。

俺が決意を改めて扉を見つめると、レニーは笑った。

「もう少し驚くなり怖がるなりの反応が欲しかったけど、まぁいいや。さて。いきますか。あぁ、そうそう。ナスィーリエに目をつけられる事は覚悟しておきなよ」

「それはそっちもだろ」

「もうつけられてまーす」


おどけながらレニーは扉を開けた。

目をつけられてるのに飛び込みに行くとか、こいつ相当度胸あるな。

そんな事を思いながら俺はレニーの後に続いた。

中に入ってみると、そこは……。


「うげっ」

アンデットの顔の目の前にあった。

今急いで下がって切り伏せたけど、あのままだったら俺の顔があった場所で歯がガチンとかなっていただろうな。

あぶねー。

「おい。場所は指定しようか」

「わかってるくせにー。安全な場所なんてないし、近道した結果なんだから。でもよかったね。ちなみにそいつ宮殿のアンデットだよ。ここは言ってしまえば異空間。現実世界の魔物との繋がりはない。魔物との共食いもよくある話だから今みたいにスキル使わないで対応すれば感知される心配もない」


宮殿と現実は別物。本当に不思議だよ。

だから沢山の冒険者たちを魅了するんだろうな。

だが、今回は楽しむ事は無理そうだ。

「そりゃあありがたいな。なぁ、そういえばリリスってどのくらいの地位にいるんだ?」


これは気になっていた。リリスがどんな敵なのかを少しでも知りたいんだ。

魔族は人間の貴族と違って力が位そのものとなる。たまに例外もいるみたいだが、そんなのは大体魔王に気に入られている。

「一応幹部。淫魔の一族ね。彼女は一族の中でも最も欲に塗れていたと聞くわ。組織の中でも率先して性処理をしていたとか。そして、彼女は実力者の粘膜を啜る事で力を増やしていったとか」

「生々しいな」

「啜られないでね」


「あぁ、何はともあれ殴り込み開始だ」

俺は突撃しようとした。しかし、首根っこを掴まれる。

「貴方ユミルの蒼穹でもこうだったわけじゃないよね。いきなり動きすぎよ」

「時間がない」

「うん。ごめんね。ちょっと失礼」


掴み諭そうとするレニーを俺は振り払おうとした。振り払うこと自体には成功した。しかし、次の瞬間。頬に衝撃が走った。

パンッ。

久しぶりの感触だ。脳が揺さぶられ、頬がひりひりと熱い。

昔俺が危ない事をした時に母にビンタされて以来だ。

母はあれから俺に構わない。

改善しないから。俺が冒険をやめないから。

叩かれたことで頭が冷えたのか何なのかわからないが、脳裏にそんな事が浮かんだ。


「どう。冷えた」

「あぁ、かもしれない」

「貴方って血走った眼は似合わないのね」

目の前のレニーはにっこりと笑った。

「だといいな」

そうだ。ここは宮殿。それも魔界式の宮殿だ。

忘れかけていたけど俺は初心者なんだから、普通以上に慎重になるべきなんだ。

今はスキルを使うべきじゃない。感知タイプが居たらバレてしまう。

だから俺は直ぐに法具である見通す目を取り出した。

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