表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編連作

ハロウィンの夜

作者: 苺奈々

 人気のない真夜中の街。

 電灯の光が怪しく輝いてるぐらいしか灯りが無いような不気味なこの場所に、青年ルイスと少女ニーナが歩いていた。

「さて、今年はお菓子をもらえるかな?」

「大丈夫、数百年のブランクはあるけどきっと大丈夫だよ!」

 今日は毎年恒例のイベントであるハロウィンの日だ。

 彼らは人間を怖がらせてから何かを得たり、いたずらをしないといけない。

 これは悪魔や怪人の一年に一回ある人間を恐怖や困惑の渦に陥れさせる事が出来るかの試験で、必ず実施されているのだ。

 もし、何も人間達にお菓子を貰わなかったりいたずらをしなければ、二人はまた怪人仲間から馬鹿にされる事になる。

 二人は数百年前はいたずらの天才と呼ばれるほど、ハロウィンでは活躍をしていたがとある理由によって二人一緒に眠らされていた。

「うふふー、久しぶりにするから楽しみだなー!」

「こらこら、真剣にやらないといつか足下掬われる事になるよ?」

「そんなことは無いと思う、わたしだから!…………多分」

「根拠が無くてもそこは自信持ちなさいよ」

 ルイスはニーナの中途半端な自信に溜息を吐くも、彼女のおかげで彼は内心何だか何とかなりそうな気持ちになってきた。

「まあ、大丈夫だろうね」

「うん、そうだよ!」

 二人は深夜の街を元気良く話しながら歩いていくと、ようやく灯りの点いている家を発見する。

 ルイスはニーナに黙るよう合図すると、彼は一人家に近づいた。

 そして、ルイスはドアを二度ノックする。

「何?」

 家の主らしき人が扉を開け、要件を尋ねる。

 ルイスはすぐに恒例の返事をした。

「トリックオアトリート、お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「そうか、じゃあな」

 家の主はそれだけ言うと、無情にも扉を閉めた。

 閉め出されたらいたずらが出来ないので、彼は渋々とニーナの下に戻る。

「おかしいな、一体何がいけないのだろうか?」

「うん、本当だよね……おかしいなぁ……完璧な筈なのに?」

 二人は頭を悩ませるも、取り敢えず次の灯の点いている家探しを始める。

 数分後。

「良し、次はわたしが行ってくるね!」

 ニーナは早速次の家を発見すると、すぐにルイスを置いて走って行ってしまった。

 ルイスは若干不安に駆られるものの、きっと彼女なら恐怖では無いが可愛さで貰えるから大丈夫……と余裕の気持ちで、彼はしばらく遠くでニーナと家の主の成り行きを見守りながら待った。

 すると、彼女と家の主の話し合いから変化が起こって、ルイスは青い顔をしてすぐに飛び出した。

 何故なら、ニーナをどんな理由かサッパリ検討が付かないが、家の主が彼女を家の中へ強引に引き込んだのだ。

「ニーナ!」

 ルイスはすぐに扉を蹴破り、家の中へと無断で入る。

「ルイス助けてー!」

 ニーナは家の主の男に何故か抱き寄せられてキスを迫られていた。

 彼女は男の顔を手で押さえながら涙目でルイスを見る。

 ルイスはすぐに家の主に近づくと、彼の顎を蹴り上げた。

 そして、彼は解放されたニーナを両手で素早く抱えるとすぐに家から出る。

「一体どうなってるんだ……!?」

「うぅぅ、今までやった中でこんな事されるなんて初めてだよぅ……」

「人間が怪人にいたずらをするようになるなんて……恐ろしい……大丈夫だよ、次は一緒に居るから」

 ルイスはニーナの頭を撫でながら数分間慰め続けた。

 ようやく彼女が泣き止むと、ルイスはニーナと手を繋ぎながら少し早足で新しい家探しに向かう。

 早くしないと夜明けがやってきて、彼らは元の世界に帰らないといけなくなるのだ。

 それから少しすると、一応灯りが点いている建物を発見した。

「ま、まぁそろそろ時間も無いし行くしかないかもね」

「う、うそ。あそこ行っちゃうの!?」

 彼らの目の前にあるのは、教会。

 怪人が唯一天敵としている、聖職者達が居る建物だ。

「えぇ……大丈夫、二人なら恐くないよ」

 ルイスはニーナの手を強く握りながら建物に近づき、彼は緊張でごくりっと生唾を飲みながら震える手で扉をノックした。

「こんな夜更けに何でしょうか?」

 聖職者は扉を開けると、彼らに優しく問いかけた。

 二人は息を深く吸うと大きな声で合わせるように恒例の返事をする。

「「トリックオアトリート!! お菓子をくれないといたずらするぞ!」」

「はい、どうぞ」

「え?」

「あ……」

 聖職者は何のためらいもなくお菓子を一個ずつ二人に渡した。

 当然、天敵に貰えるとは思っていなかった二人は呆然となる。

「お二人さん、真面目にハロウィンを楽しむのは良いけど真夜中なんだから早く帰りなさい」

「あ、はい……」

「それにしても立派なコスプレだね」

「コス……プレ?」

「さて、それじゃあ夜道に気をつけてお二人さん帰りなさいよ」

 聖職者はさっぱり分からないといった様子の二人に注意をすると、扉を閉めた。

 それから少しして。

 二人は時間になると元の世界に戻り、今の時代に精通している悪魔に話を聞いた。

 悪魔が説明するところ二人が居た世界の国は「にほん」という場所で、そこにはコスプレというジャンルが流行っているという。

 つまり、二人は人間達からコスプレに間違えられていたという事だ。

 余談だが、ニーナを襲った人間は『ロリコン』という特殊な人間で、幼児をこよなく愛しているらしい。

 ルイスはそこまで悪魔から聞いて、呟いた。

「人間って……恐い」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ