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教官 2

 1人と一匹が出て行くのを見届け、溜め息を零した。しゃがんで、投げ出した資料を集めて。ストンと、椅子に座る。


 資料をテーブルの上に置いて、アクビをする。手を口に抑えるのを忘れたが、この際関係ない。誰もいないから。


 手元の資料を、自身の小麦色の手で掴む。

 

「TMSG…時空管理特別警備隊…か」

 ゆっくりと、言葉を発してみる。言葉の意味を噛み締めるように。



 ここ、レイーシェル国…嫌、自国含むアレッシィ世界では、他世界が出来ない事が出来る。それは、「“ここ”から異世界へ」

や「異世界から異世界へ」まで、自由に行き来出来る事。何でか知らんが、遥か昔から決まってるのだ。

 ただし、それは法律によって、TMSGしか出来ない。否、許されていない。


 

 そもそも、TMSGとは…

 異世界での遭難者を、元の世界へ戻す。

 異世界違法犯罪者…指名手配者を、裁判官…監獄エリアへ運ぶ。

 …という変な仕事だ。



 

 とは言え、必ずしも楽しいとは限らない。

 私たちは悪魔で、『命』を守る為に働いている。悪魔で。

 けっして、遊びの為に異世界へ行く訳じゃない。『命』を守る為に、行きたかねーけど、働くのだ。

 他の人がどう思うか知らんがな。




「でも、人1人の命って重いなぁ」

 誰に聞かせたいと言うわけではないが、言いたくなってしまう。



 通常、異世界へ侵入したものは、死ぬ確率が高い。

 というのも、『世界』は、異世界へ来た者を拒絶する。そのため、来てしまった代償として、命を削る病気…呪いを受けてしまう。

それが身体に回ると、もう取り返しの聞かない事になる。



 

 『命』を助ける為にも、

 遭難者や旅行者を元の世界へ届ける事

 や、犯罪者にこれ以上罪を重ねないよう  に。

 そのために、私達はいるのだ。


「そんな事知らない人達も、いるから大変だよな…。人手不足なんだから、全世界へ平等に見てられないじゃないか」

 らしくもなく、弱音を吐く。


「早く帰って来ないかな…シルベット。旦那さんの料理も食べたいし、子供も見たいなぁ」


 唯一無二の親友の事を、思わずにいられなかった。


「はよ、戻ってこーい!!」


 誰もいないが、叫んでみる。…ちと、悲しくなるが。左手を伸ばし、テーブル上のマグカップを掴み取る。白いマグカップに入っている、ぬるくなったコーヒーを飲み干す。

 ちょうどいい感じの熱さ、苦くてコクのある味。今日は割と暑い日なので、コレぐらいの飲料が飲みやすい。


 …こんなになるんだったら、アイスコーヒーにすれば良かった。

 少し後悔しながら、空になったマグカップの中を覗く。香ばしい豆の香りが、空気中を漂う。


「…また、コーヒー飲みたくなっちゃた」


 


 

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