考え事 3
約1時間後。
やっと店から出て、ドアを閉めた。重い身体を、ドアにズルズルと押し付ける。冷たい温度が、身体に染み込む。熱くなった体温が、霧散していく感じ。
周囲の目がジッと見てる。でも、今はもうどうだって良い。ただ、ただ呼吸が苦しい。
そんな状態。震える身体で、深々と深呼吸。なんで、こんな気持ちになるのか。よく分からない。…前にも、こんな気持ちになった気がする。自分の気持ちが、分からない。悲しい、辛い、怖い。何だろう…コレは、恐怖って言うのかな…?
…自分の感情なのに、よくわからないや。
『ユミィ、大丈夫?』
自分の顔を覗き込むソフラ。彼に向かって、微笑む。…上手く笑えたか、疑問だが。
「大丈夫よ」
『でも、顔が青いよ』
「平気。仕事の準備するよ、帰ろう」
気丈のように、振る舞う。心配かけたくない。何にもなかったように、立ち上がろうとした時。フラリと、地面に倒れそうになる。
『大丈夫じゃないよ!ジャスミンの話で、具合悪くなったの?』
「後でね。後に話すわ」
震える身体…力の入らない足を必死に動かし、ただ前に進む。
数十分後。大きな繁華街の大公道を抜けて、サフランの駅にたどり着く。駅内の休憩場に入って、ソファーに座る。膝を抱えて、体育座り。その体勢で、しばらく泣いてた。
そうやって、また深呼吸。
『…落ち着いた?』
控えめな質問に、静かに頷く。
『ねぇ。どうして、泣いてたの?僕、人の気持ちはよく分からないから。だって、創られたんだもん。教えてほしいなぁ』
少し間を置いて。
「なんでだろう。自分でも、よく分からない。嫌な気持ちになってしまったら、ごめん」
首を左右に振るソフラ。
『僕は、大丈夫。平気』
ニッコリと笑う、不思議な生物。
『じゃあ、もう帰る?』
「うん。もう、帰らなきゃ」
『あ!でも、準備は?ジャスミンの前では、出来てるって言ったけど。でも、まだ終わってないでしょ?』
「ううん。もう、終わったよ」
気が済んだから、もう帰りたい。そう言うと、お互いにプッと笑った。さっさと、駅前のホテルに帰ろ。
気づけば、もう辺りは日が暮れていた。
ふと、上を向く。黄金と銀に輝く星が、空を飾っていた。