わさび有り
私が最もしたかった事が(*´▽`*)
出来て良かった~
ある小さな空間。
「う~ん」
目を覚ましたユミィ。目の前には見慣れない真っ白な天井。
「……あれ?」
起き上がろうとして、自身の姿を見て驚いた。一体、誰が着させてくれたんだろう?薄青色の入院服を着せられていた。
見回せば窓も椅子、机も無い。あるのは自分が寝かされていた鉄パイプの簡素なベッドだけ。
ボーッとする頭の中、徐々に記憶が戻ってきた。居なくなった煌を連れ戻そうとして、途中、何だかよくわからないけど戦って…死んだと思っていた先輩と会って力尽きた事を。……そこから記憶無い。
そんでもって自分がどうやってここへ来たんだっけ?本当にまったく覚えていない。…もしかして、私、死んだの?縁起悪い事を呟いた。
「ここどこ?」
そういえば、ソフラや煌達はどこへ行ったのだろうか?布団から出て、足を床におろた。
つめたっ!!
そう感じて足の指先に感じて、ベッド上に足を戻してしまう。…感覚あるから、多分死んで無いよな。などと縁起悪い事を、また考えてしまった。
と、その時、目の前のドアが開き誰かが入って来た。いきなりの事だったので、とっさに身構える。
「だ、だれっ!?」
よく見ると、見知った先輩が2人。
1人は上司。漆黒の真っ直ぐに伸ばした長髪に小麦色の肌を持つミカエル・サン・スフィア。
もう1人は上司でミカエルの親友(で、私にとって憧れの先輩)。優しい桜色の髪に色白の肌を持つシルベット・エル・オリビア。
憧れの女の先輩方が、目の前に立っていた。どちらも白シャツとジーンズで、双子みたいな格好。……ん?何故に同じ格好してるんだろう??少し首を傾げて、先輩方を見上げた。
「よ!ユミィ、元気か!?」
ミカエルが白い歯を見せながら笑った。
「いや~元気じゃないよね。お前さ~いきなり、後輩を異世界へ飛ばしちゃって…。私の親友が、本当にごめんなさいね」
尊敬する先輩方に急に話しかけられて、どう返せば良いのか分からなくて、ただただ呆然としてしまった。
「そんな事言うなよ~。この第2師部隊長さん~。イヤーー心配して使える奴飛ばして、損したわ~」
えぇ!?と、と、飛ばしたって…ど、どういいう事!?あと、その他諸々いろいろと聞きたい。
「アハハ~。なんて返せば良いか分からんが、そんなんだったら飛ばすなよ~。あぁ、後、私~いつか隊長辞めるよ~。元第3部隊長さんみたいに」
「アハハ~。そうなん?ってか、元第3部隊長って、私じゃん?んな事より、ユミィの話は?」
「あぁ、そうだった」
と2人して、目を点にして固まっている娘の肩を叩いた。
「おーい!聞いてるかーーい?」
「……あ!はい!き、きいてます!!」
「「よろしい」」
シルベットとミカエルの声がハモって、2人してクスリと笑った。
「お前、さいこー!やっぱ、お前いないと私変だわ~」
「あんがと~。お前もさいこーよ。安心しろ、お前元々、変だ。
まぁーーなんだ、お前?
えっーとユミィか、あぁ、昔、私に憧れてTMSGになった子か~。どうだった?初めてのおつかいは?」
「いや、おつかいじゃねーよ。それ言うなら、初めての仕事だろ?」
「いや、おつかいさ。だって、こんなタチの悪い先輩に、いきなり異世界へ飛ばされて、専門用語も知らないのに、大変だったろうに」
「そーかもな。あ、でも、血の鎖は覚えたみたいだぞ」
ミカエルはそう小声で呟き、黒い口紅に塗った唇を尖らせた。
「まぁ、とにかく、お疲れ様。専門用語とかは、後で教えるから、今はゆっくり身体休めな」
じゃまたな、と手を振り去っていこうとする先輩にユミィは呼び止めた。
「…え!あ、あ、あの!?ちょ、ちょっと待ってください!!自分の言いたい事だけ言って!!私の話を聞いてくださいっ!!
ラリマーさんや黒達は!?」
腰に手を当ていた手をーー
真っ赤に塗られた爪を、自身の顔の前に翳すシルベット。そして何か気に食わなさそうに、親指の爪をガリっと噛んだ。
「うーんと、大丈夫よ。ラリマーのおかげで私達28名、すべて帰れたの。でもその時、負った傷が深かったの。今、そっとしてあげなさい」
それを聞いて、ユミィはホッとした。良かった~無事だったんだ。
「それで、黒達は?」
「うん、お別れ会したわ。
もちろんその後、娘のロッティと旦那の翔は連れて帰ってきたわ」
「…そうなんですか。何だか、寂しいですね」
しょんぼりするユミィの背をバシバシと叩くシルベット。
「な~に、大丈夫さ!お別れ会したって、黒達と縁が切れた訳じゃない。いつか
きっと、また仕事やってれば会えるさ。お前なら!」
「で、でも…煌に…」
「…煌?」
眉間にシワ寄せた後、1人で「あーなるほどね」と呟くシルベット。
「あーー多分、知ってると思うけどさ、お前がいう煌って私の娘よ?ただ、記憶失ってただけよ?」
…。思考が停止して、その数秒後。
「え、ええぇえええええええっ!?そ、そうだったんですかっ!?」
驚きで大声で叫ぶユミィに対して、ハハハッと仙人のように笑うシルベットとミカエル。
「うん、そういう事なの~じゃ、お疲れ様~寝なよ~。あ、付け足し。ソフラ、今、現王に呼ばてていないからな~」
あ、ごめん。忘れた。なんか足りないと思ってたら、山の子ウサギを忘れてたんだ…。
「あ、今すぐ着替えて~」
ミカエルに言われ、辺りを見渡し着替えを探した。キョロキョロと首を回したら、枕元に着替えが会った。
「後ろ向いてるし、ここ窓も無いから誰も見ないから、着替えなさい」
急いで着替えて、ポーチに入っていた日焼け止めを顔に塗った。これで、よし!
「終わりました~!」
自分に背を向け立つ先輩方に向かって叫び、こちらを向いてもらった。
「…急いで着替えましたけど、何ですか?」
「ん?あー、いきなりで悪いんだけど、お前のおじさん…現王に会って来て!」
はへ??ユミィは理解する間も無く、シルベットに頭を指ではじかれた。その瞬間、ユミィはその場から姿が消えた。
1人の少女が部屋から消え去った後、シルベットはミカエルの頭を指ではじいた。
「ったく、もう~あのさ!初心者に専門用語とか言っても、分かるもんも分からなくなるだろうが!!少しは言いたい事、抑えろや!!その前に、異世界へ飛ばすなら、ちゃんも専門用語とか教えろや!いきなりだと、ダメだろが!!まぁ、初心者にはいきなり飛ばすのは、当たり前だけどさ~。それは、やり過ぎだろ!!あー!!まだ、言いたい事が山ほどあるわっ!」
よほど驚き過ぎたのだろう。先ほどのユミィより、目が点になっている。
「…すまんすまん」
連続してやってくる指の攻撃を華麗に交わすミカエル。そんな彼女を見て、ものすごく不機嫌そうに溜め息を零す。
「あーーでも、これで解決したじゃん?それに悪く無いだろ?さすが、お前に憧れた少女さ」
「…まぁね」
乱れ髪を直しながら肩をすくめ、あきれ声で素っ気なく返した。横目でミカエルを伺うと、何やら目を輝かせてこちらを見つめている。…なんか、欲しいのか?
「どうした?」
「ラーメン食べたい!おごって!心配させたお詫びに!!」
「却下」
「ね~お願い!いっしょーーのお願い!!」
「はぁ!?一生のお願い、今使うかっ!!アホか!?私、旦那と娘と遊ぶつもりなんだけど」
ムスーと黒く塗った唇を尖らせる彼女に、また溜め息が出てきた。
「………おごらないなら、行ってあげても良いけど?」
宝石のように黒瞳を輝かせる彼女を見て、吐息のようにお決まりのセリフを吐いた。横を振り返ると、ミカエルは拳を上に突き上げ売れしそうにジャンプしていた。苦い笑いを顔に浮かべ、白い天井を見上げた。…お前は子供かよ。分かりやすいな~おい。
「で、何食べたいの?」
「ネギトロ!!」
またかよ。
「1つ質問。
ネギトロ、わさび有りで食べれる?」
「…あー」
そこで悩むなよ!!そこは「Yes」と言おうよ。だから、お前は…!!
などと火山が噴火するように、文句が腹の奥から出てきた。それを必死に抑えながら「わさび有っても、食べれるだろ!!大人なんだからさ!」と、自分で驚く程低い声で問いかける。
「ごめん!わさび、食べれない。アハハ!!」
ウィンクし舌を出す親友の答えを聞いて、何故か膝に力が入らなくなって転けそうだった。…うん、言わないと期待してたけど、やっぱり言ったね。お前は変わらないな~。
「……ラーメンにしない?塩ラーメン、パンチ効いてて美味しいよ??」
皆さん、わさび有りにして食べますか?……ちなみに、私は食べれない(前、挑戦した事あるけど…やっぱりまだダメだった(*_*;))。
だって元々の味の良さを失い無くない!!とか言っている……言い訳してごめんなさい、ニガテなだけです。