光の天使 5
一斉に白軍服の者達が拘束され、静まり返る教会。結構、汚くなってしまった会場。
『ひどい…』
ソフラの悲しそうな声。
「…すまなかった。私が動くのが、遅かったんだ」
床ギリギリまで、頭を下げるミカエル。ユミィもそれに習って、頭を下げる。不意に、頭を上げられる2人。目の前に立つ花婿。蒼白な顔つきで、物凄く苦しいハズなのに、微笑んだ。
「大丈夫です、こちらこそすみません」
謝るルーフォス。倒れそうになる彼を支えるレーネ。ルーフォスは振り返り、彼女を見て微笑む。そして、壇上の牧師を見つめる。
「…続けますか」
「おケガは?今後の方が、良いのでは?」
丁寧なミカエルの言葉使い。ユミィは、滅多に聞いた事がない。
「大丈夫です。レーネが治してくれました」
自らの脇腹を指差すルーフォス。赤く染まった服も傷も、元通りに戻っていた。ただ服は、そのままだったが。
「そうですか、良かったです。私は、これで失礼します。ユミィ、後で泊まったホテルの会場で待ってる」
そう言い残し、去っていくミカエル。その背中を見つめた。何かあったのかな…?
その10分後。婚儀の続きが行われた。汚れた物全て取り外されて、さっきの続きが始まった。正面ガラスの薄布が外される。
何もないハズの透明ガラス…なのに。太陽の光が石の中に差し込み、光の向きが変わり重なりあう。石の中心に、何かが浮かぶ。
あまりの驚きで、目を見開くユミィ。ざわめく客席。
光の中から浮かぶ物…それは、光で出来た天使。
両手の指を組み合わせ、閉じた目から静かに涙を流す…『聖天使』。彼女の背中に大きな翼、流れるような長髪に痩身に纏う羽衣。
腰には、2本の剣がぶら下がる。
神聖なる彼女の美しさ。
それを、尚さら引き立つように、彼女は両足の間に腰を下ろしていた。…つまり、祈る姿勢。
そんな綺麗な彼女を背後にして、レーネ達はキスした。慌てて顔を背けるユミィ。…私は、まだこんなシーンになれていない。見つめる先に顔を赤らめる2人…見ているコッチまで顔が赤くなる。
『ユミィ、顔真っ赤』
ソフラに指摘され、顔をさするユミィ。
「…分かってる」
教会の鐘が鳴り響く。優しく力強い音色。そう、レーネ達を祝福していた。一斉に空へ目指し羽ばたいた、白い鳩たち。
ユミィは、ソレを見て微笑む。視線を変え、壇上の彼らを見つめる。泣きながら、抱き合う新婚さん。
先程の事件から、よっぽど大変な事があって今があるのだろう。それを乗り越えたのいうのは、すごいと思う。だから…
「…幸せであれ」
彼らの真の幸福を、願った。身勝手だが、この願いが天に届け…と。