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魔術師達の舞踏会  作者: 夢見 隼
第一章
8/29

枕元に佇む美女

「う……。」

 何か、温かい物が身体に流れ込んでいる感覚がした。

 僕は目を開けてぼんやりと辺りを見渡すと、目の前に美人さんがいた。

「あ、起きたんですね。良かったです。」

 ニコッと微笑むその美女。その手は僕の胸に当てられている。

「えっと……?」

 僕が事情を飲み込めず、とりあえず身を起こすとそこは何らかの住居であることが分かった。

 石造りの壁や窓が無機質な感じで目に映る。

 そして、自分はベッドにいることに気付いた。その脇に美女がいる。

 光沢を放つ黒髪に整った顔、雪のように色白な肌。どこからどう見ても美女としか言えない。目つきも優しげで慈愛に満ちている。

 彼女に視線を向けて僕は質問してみた。

「―――貴女は?」

「私は大喬(だいきょう)。私達の村を助けて頂きありがとうございました。」

 大喬と名乗った美女はぺこりと頭を下げる。

「はぁ……ということは、あの村にいた―――?」

「はい、住民です。あの悪魔達は私達を地下牢に閉じこめていたのです。」

「で、僕は―――?」

「魔力切れで倒れてしまっていました。ここは村の保健所です。」

「それでみんなは―――?」

「将兵さんと草薙牧人さん以外は皆、進んでおります。どうやら近隣に先程の悪魔達の拠点を発見したとか何とかで。」

 ―――将兵さん?

「将兵さん、とは?」

「ああ、黒田(くろだ)将兵(しょうへい)です。」

 なるほど、黒田君か。

「中野様から伝言で『ぶっ倒れるぐらいなら寝ていろ。』とのことです。」

(全く以てその通りね!)

 と、不機嫌そうな声が一つ。

 視線を自分のベッドに脇にやると、小さな机の上に青龍刀がのっていた。

(心配させて悪かった。魔力の加減が分からなくてよ……。)

(ふんっ、貴方のことなんか心配なんてしていないんだからねっ!)

 なるほど、これが俗に言うツンデレか。

「どうですか?具合の悪い所はありますか?私、治療系の術は心得ているので何でも言って下さいね?」

 大喬さんはそう言いながら僕の身体に手を這わせていく。

「やっ、特にありませんから大丈夫ですっ!」

 僕は慌てて身を引くと、彼女はそう……と残念そうに呟いて立ち上がった。

「では、草薙牧人さんと将兵を呼んできますね。」

「あ、はい。」

 僕が頷くと、彼女は微笑んでその場から立ち去った。

(―――何よ、鼻の下を伸ばして。)

 と、剣の精霊が不機嫌そうに言った。

(いや、鼻の下なんて伸ばしていないが……。)

(どうなんだか。)

 精霊はそれっきり黙り込んでしまった。

 ―――よく分からないな。精霊の気持ちは。

 僕が一人で苦笑していると、誰かが部屋に入ってきた。

 牧人と……若い男だ。

「忍さん!」

 その声でその男の正体が分かった。黒田君だ。

「本当にありがとうございました!」

 彼は僕の枕元に近づくと、きっかり九〇度腰を折った。

 しかし、この人は美男だな。男にしては肌が色白だし、目つきも柔和だし。

 なんて観察しながら僕は手を振って言った。

「いや、礼を言われることなんてないよ。」

「しかし……。」

「気にしないで。それより、牧人。」

 僕は視線を牧人に向けると、状況を知りたい、という僕の意を汲み取ったのか彼はコクンと頷いて口を開いた。

「忍が意識を失った後、何人かの村人の協力も得て、ガーゴイル達を制圧したよ。そして、村人の話から近くに大規模なガーゴイルの巣窟があることが判明したんだ。先生達はそれを潰す方が先決と判断して、皆を引き連れて出立したんだ。」

「―――そうか。じゃあ、僕らも行かないとな。」

「待って、身体は大丈夫なのかい?」

「問題ないよ。」

 黒田君に笑顔でそう答えると、僕はベッドから降りた。

 そして、剣を腰につけると、この石造りの部屋を出ようと足を出口に向けた。

「ダメです。」

 と、そこに大喬さんが立ちふさがった。

「まだ魔力が安定していません。そんな体勢で戦ったらまともに術を発することはできません。」

「なら大丈夫です。魔術を使う予定はないので。」

 僕は微笑んでそう言うと、大喬さんはため息をついた。

「―――分かりました。私も同行します。」

「へ?しかし、行く先は戦場ですよ。」

「何と言おうと行きますから。」

(良いんじゃない?)

 僕が戸惑っていると、精霊が不機嫌そうに呟いた。

(戦える自信があるから、ついてくるんでしょ。)

(しかしねぇ……。)

(あら、そんなにその美人さんが心配なら守ってあげれば良いじゃない。)

(―――お前、拗ねてる?)

(いいえ、そんなことはございませんよーだ。)

 ―――分からん、精霊の考えていることは全く分からん。

 僕は内心呆れながらも視線を牧人に向けた。

 彼は肩をすくめると、行くよ、と呟いた。

 僕も諦めると、黒田君と共に部屋から出た。

 その脇をニコニコと笑っている大喬さんがついてきた。


ハヤブサです。


自分探しをしています。

まだまだ自分は見つかりません。


もう暫くは更新頻度は下がりそうです。


ご了承下さい。


さて、次回はとうとう武道家のあの人が……!

黒歴史verでは散々な描写でしたが、今回はマシなはず。


感想お待ちしています^^

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