表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師達の舞踏会  作者: 夢見 隼
第一章
4/29

委ねよ、さすれば打ち払わん

「外……?」


 岩窟の中に僕はいた。

「ああ、忍、来たね。」

 岩窟の中では牧人が緊張感を顔に漲らせて立っていた。

「ここで何をするんだ?」

 成り行きで来たが、魔術師試験と言うからには試験官相手に戦闘でもするのか?

「あれと戦うの。」

 牧人はそう言いながら岩窟の外を指さした。

 僕は外を覗き込んでぎょっとした。

 外には翼を生やした悪魔のような怪物がたくさんいるのだ。

「あれはガーゴイルの亜種。皮膚は脆いけど結束力と繁殖力は強いんだ。」

「ほー。」

 人外の物と、戦うのですか?

「お?」「ん?」

 僕が唖然としている中、剛とガルムが現れた。その後には中野先生がいる。

「では、これから試験を行う。目的は外の怪物、ガーゴイルを殲滅すること。ひたすら戦え。手段は厭わない。」

「ガーゴイル?」

 剛とガルムが驚く中、なお、と中野先生は付け足すように言った。

「敵前逃亡した場合は私が粛正をする。ここの存在を知られた以上は、協力か死かだ。」

「―――マジかよ。」

 剛は真っ青な顔で呟いた。否、彼だけではない。ガルムや牧人もだ。

 恐らく、僕もだろう。

「―――やってやるさ。」

 牧人はゴクッと唾を飲み下すと、扇を片手に構えた。

 剛やガルムも各々の獲物を構えた。

「―――その覚悟、上等だ。この戦いで各々の才能が開花できることを期待する。」

 中野先生はそう言うと、指を弾いた。

 その瞬間、僕達は糸に引っ張られたかのように外に放り出された。

 ガーゴイル達はそれに気付いて僕達に襲いかかった。

 くそったれ!

 僕は咄嗟に青龍刀を抜くと、向かってきた怪物を三体まとめて薙ぐ。

 渾身の振りで三体まとめて胴が斬れる。

 柔だな。さすが亜種というだけはある。

 僕は返り血を浴びながら、返す刃でガーゴイルを斬りつける。

 そのまま、剣を構えて静止した。

 僕には剛ほどの剣の腕前がある訳ではない。

 だから……気迫でカバーするしかない!

「うおおおおおおおおおおおおおッ!」


「―――くっ、何体いるんだ。」

「ガーゴイルの数だけって感じだな。」

 僕と剛は背中合わせになって肩で息をついていた。

 僕らの周りだけぽっかりと穴が空き、周りには怪物の死体が転がっていた。

 そしてその穴の外にはガーゴイルが包囲してひしめき合っている。

「お前は何体斬った?」

「百は。」

「俺は二百。」

「敵わないな。」

 僕と剛は言葉を交わしあって苦笑した。

 締めて三百体。いや、それ以上だ。

 なのに、ガーゴイルの勢いは絶えない。

 辺り一面がガーゴイルという気がする。

「キエエェェッ!」

 突然、奇声を上げてガーゴイルが飛びかかってきた。

 剛が剣を差し向けた。途端に水が噴射されて怪物はすぱっと斬れた。

 まさにウォーターカッターのように。

「格好いいな。そりゃ何だ。」

「村雨丸。」

「あー、八犬伝の水を噴く剣?」

「―――の模倣作だそうだ。使用者の魔力で水を生成するらしい。」

「一応、魔術の一環か。」

「だな。」

 僕らが言葉を交わしている間、ガーゴイルはジリジリと包囲網を縮めていた。

 剛が水を勢いよく吹き出して近づき過ぎたガーゴイルを寸断する。

 それで後退るが、ガーゴイルはめげずに接近してくる。

「こりゃ、厳しいな。消耗戦かよ。」

 剛が苦笑する中、どこから剣を投げてきた。

 咄嗟に僕が反応できずに、僕の頭に剣が吸い込まれ―――。


 ぐさっ。


「忍!しっかりしろ!」

 ハッと我に返ると、剛が自らの腕を犠牲にして僕を庇っていた。

「すまん!」

 僕は叫ぶと同時に踏み込んで近づくガーゴイルに牽制した。

 しかし、飛び道具が有力だと知られたようで四方から剣や槍が飛んできた。

 僕らは必死にたたき落とすが、全てが防げる訳ではない。

 剣がいくつも足を掠めていく。

「くっ……。」

 致命傷がないのは良いが、このままでは―――。


(力を貸してあげようか?)


 声が響いた。女性の声が。

「え?」

 僕は思わず見渡したが、物騒な顔をしたガーゴイルしかいない。

「忍!」

 剛の声に我に返ると、僕はファルシオンで飛来してきた物を弾いた。


(貴方がもしどうしても力を欲するのであれば、私は貴方に力を与えることが出来るわ。まぁ、欲しくないって言うんだったらいいけど……。)


 ぶつぶつと頭の中で誰かが呟いた。


「だったらくれ!仲間を守る力を!」


(ならば委ねなさい、私に全てを。)


 僕の声にそれは応えた。

 全身に何かが迸り、僕を支配した。

 だが、嫌な感覚ではない。

 その支配の赴くままに僕は両手を合わせた。

 そして、くわっと口を開いて腹の底から声が噴き出た。


「風陣、《青龍乱舞》!」


 身体が動く。

 軽やかにステップを踏みながら青龍刀を舞わした。

 その一閃でガーゴイルは風の刃に切り刻まれ、吹き飛ばされていく。

 そして地を蹴り、ふわりと浮かぶと空中で回転した。

 と、同時に風の刃が刀から放たれて戦場にひしめき合うガーゴイルを切り刻んだ。


 再び、僕が地に足を着く時には、そこら一体は血の海と化していた。


 何なんだ……この力は……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ