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魔術師達の舞踏会  作者: 夢見 隼
第一章
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見つけた青龍刀と突拍子のない話

 しばらく経つと剛の顔つきが変わった。そして、慎重に鍵穴に差し込まれた針金を捻ると聞こえるか聞こえないか分からない音でカコン、と音がした。

 顔を見合わせると、ガルムはドアノブに手を掛けた。

 慎重に少しだけ押し開ける。

 ―――誰もいない。モップが転がっているだけだ。真ん中には机がある。

 ガルム、僕、剛の順番に部屋に滑り込んだ。

「む、これは……。」

 ガルムは机の上を覗き込むと何かに気が付いたように足を止めた。

「どうした?ガルム。」

 僕がぐっとそれを覗き込んで思わず息を呑んだ。

「これは―――青龍刀(ファルシオン)……?」

 ポケットからハンカチを取り出すと取っ手にそれをパサッと掛けた。

 そして手に取ろうとした瞬間に手が止まった。

「どうした?忍。」

 剛が問いかける中、僕は無言でポケットからカッターナイフを取り出すとカチカチと刃を少し出した。

 そして、そのまま僕は虚空を斬った。三度も。

「ど、どうしたんだ?」

 剛の訊ねる声を聞きながら、僕は虚空に手を伸ばしてそれを掴み上げた。

「なんだ……何もないじゃないか……。」

 剛は落胆したように言ったが、僕は少し微笑んで言った。

「そう見えるか?」

「ん?」

 彼は眉をひそめると、僕の手の上にあるそれを取った。そしてあっと息を呑む。

「ピアノ線か……。」

「ああ。それも三本も。何につながっているかは知らないが、これは取られたくない大事な物らしい。」

 僕はそう言いながら改めてハンカチを掛けた柄を握った。

「おお……これは……。」

「変な造形だな。」

 ガルムの言葉に僕は思わず信じられないという顔をした。

「見ろ。この造形を。剣が触れ合う摩擦を最小限に収めるようになおかつ、うまく斬れるように平たく出来ているんだぞ?美しいじゃないか……。」

 僕がその刀に惚れ惚れとして呟く。

 その様子を眺めながら剛は呆れてため息をついた。

「こいつは歴史的遺産に関しては目がない。刀に関しても伊達政宗の愛用した刀の刀傷の一つ一つがどこで負った物か言えるという始末だ。この前の奈良の修学旅行で高松塚古墳の海獣葡萄鏡について延々と語られたのだった。」

「誰に向かって解説しているんだ。剛。」

 僕が視線をそっちにやると、彼の表情が変わっていることに気付いた。

「どうか―――。」

 したのか?と続けようとしたその瞬間、鋭い殺気を感じた。

「危ないッ!」

 剛は咄嗟に近くにあったモップを足で引き寄せ、殺気の方向に蹴り飛ばした。

 と同時に僕は剛とガルムを押し倒して地面に伏せた。

 ガッと鈍い音が響く。僕は倒れ込んだまま、上を見上げた。

 真剣がモップを半分近く割っていた。

 そして、それを持っているのは男―――ネクタイを無造作に結んで無精髭を生やしている男だった。

「な、中野先生……?」

 ガルムは震える声で言った。だが、中野先生は僕らを見渡して悠長に言った。

「さすが、お前らには素質があるようだ。四名様ご案内っと。」

「はい?」


「光、羽賀、高田、お前らは一定基準値を達した。以上から魔法使いと認める。」


 僕、剛、ガルムは先生によって体育教官室の奥に案内された。

 そこは廊下になっていて何故か武器が両側にたくさん立てかけられていた。

「そこから武器を選んで待っていろ。十分後に戦闘を行う。」

 中野先生はそう言うと、武器が立てかけられている廊下の奥に進んでいった。

 ―――戦闘?

 僕は戸惑いながらもその手にある青龍刀(ファルシオン)を眺めた。

「あれ?忍に剛、ガルムも。」

 と、その時、予想もしなかった声が響いた。

「あ、牧人!何でここに!?」

 そこには牧人が扇を持って立っていた。

 剛が真っ先に駆けていく。

「何でここに……って魔術師試験のためだよ?」

 牧人は当たり前じゃない、という感じで小首を傾げた。

「え?魔術師試験?」

 剛とガルムは声を揃えて訊ねた。

「あれ?それも知らずにここに来たの?ここでは秘密裏に魔術の素質のある人間を抜擢するために時折、ここで行われているんだよ。」

「何のために……?」

「知らないの?まぁ、その前に武器を選んじゃおうよ。」

 牧人はそう言うと、倉庫を手で差した。

「剛は刀かな?剣かな?」

「ど、どっちでもいいけど……選ばないとダメかな?」

「剛は絶対必要だよ……。」

 そんな会話を聞きながら僕は考え込んだ。

 秘密裏に魔術の素質のある人間を抜擢するために……。

 何故、そんなことを?

 まさか、軍隊を組織するためじゃあるまいし……。

 それにこの学園に二年はいるが、こんなことは聞いたことがない。

「忍は決まったの?」

 牧人の声で僕は我に返った。

「あ、うん、これ。」

 僕は持っていた青龍刀を見せて言った。

「そ、それか。なるほどね。」

 心なしかぎこちなく頷く牧人。―――何だ?

「とりあえず、全員、決まったね。」

 牧人は満足したように頷いた。いつの間にか、剛やガルムの武器も決定したらしい。

「お、決まったか?」

 と、間を図ったかのように中野先生は奥から戻ってきた。

「じゃあ、奥に来給え。」

 先生はそう言うと、また再び廊下の奥に進み出した。僕達は武器を引っ提げて先生の後についていく。

 しばらく進むと、先生は立ち止まった。

 見ると、先は行き止まりでそこには箪笥が置かれていた。

 先生は左手の拳と右手の掌を突き合わせると目を閉じた。そして、厳かに何かを唱えた。

「幻術、《機巧封印》解。」

 すると、箪笥から何かが消えるのを感じた。

 見た訳ではない。感じただけだ。

 だが、確かに何かが消えた。

 僕はその感覚を不思議に思いながらファルシオンを左手に持ち替えた。

「さて、ここから先は異空間になっているくれぐれも気をつけて。」

 先生はそう前置きすると、箪笥を開けて中に入った。

 いや、箪笥の中に異世界ってどこぞの世界みたいだよね。

 なんて思っていると牧人は箪笥の中に入った。

 そのまま、出てこない。

 僕は不審に思いながら彼の後に続いて中に入った。

 そして、奥に手を伸ばすが何もない。箪笥の奥があるはずなのに。

 僕は用心しながら歩を進めていく。

 すると、奥から光が見えてきた。

 そこに進んでいくと―――。

ハヤブサです。


忍君達は状況に流されつつあります。


そして、箪笥の奥にあるのは……?


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