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魔術師達の舞踏会  作者: 夢見 隼
第二章
19/29

新幹線での移動

「ふむ、確かにこれだったら一日もかからずに移動できるな。」

「こう言う時に表世界って便利だな。」

「駅弁、駅弁!」

「へぇ、便利ですね。」

「おええぇ……!」

「ちょ、剛さん、しっかりして!」

「早いな……。」

「家がゴミのようだ!」

 騒然とするそこにはいつものメンバー……などがいた。

 僕、剛、ガルム、牧人、中野先生、武田氏、龍馬さん、小喬さん、大喬さん、さらには、何故か立花さんという、移動する際に剛を後ろに乗せた女性までいる。

「しかし、先生、新幹線なんてよく考えつきましたね。」

「よく使う手段だからな。」

 そして牧人と先生の言うように……ここは新幹線だ。

 一旦、近くにある、先生が言うのは〈扉〉というのを使用して、僕らの世界に戻ると最寄り駅から新幹線に乗ったという訳だ。

 ちなみにその最寄り駅は何故か新横浜駅だった。

「学校サボって奈良に行けるとはな……。」

 僕が窓を見てぽつりと言うと、隣に座る大喬さんはくすっと微笑んだ。

 ちなみに、学校に関しては休み扱いになっており、親達には中野先生の家で強化合宿ということになっている。

 その辺を何とか出来るのは、教師の権限と魔術の為せる技である。

「おいおい、今のは聞き逃しかねないぞ。忍。」

 ニヤニヤと笑いながら中野先生が前の座席から振り返る。

「今度、宿題を倍にしてやろうか?」

「遠慮しておきます……。」

「まぁ、いいさ。これが済んだら、みっちり扱いてやる。」

「うわぁ……。」

 僕はげんなりしながら視線を外に向けた。

 外では、久方ぶりに見る無機質な建物が並んでいた。

 今頃、叔父さんどうしているかな……?

 僕はぼんやりと自分の家に思いを馳せるのであった。


「ひっく……ひくっ……。」

 ふと、近くから嗚咽が聞こえてきた気がした。

「何でみんないなくなっちゃうの……?置いておかないでぇ……。」

 僕は視線を彷徨わせると、真っ白な虚空に少女がしゃがみ込んでいるのが見えた。

 それは頼りなく肩を振るわせていて……泣いていて……。

 僕はその手を伸ばそうとして……引っ込めた。

 下手に慰めても、傷つけるだけかも知れない……。

 僕はただ、真っ白な虚空で嗚咽を漏らす少女を、見つめることしか出来なかった。


「―――ぶさん、忍さん。」

 ふと、身体が揺さぶられ、呼びかけられる声が聞こえた。

 重い瞼を開けると、脇で大喬さんが僕の肩に手をかけて微笑んでいた。

「もう、京都ですよ。」

「ああ……そうか……。」

 そうか、ぼんやりと思いを馳せている間に意識が闇に呑まれてしまったらしい。

 でも……あの夢は何だったのだろう。ヤケにリアリティがあったような……。

 僕はそう思いながらももぞもぞと身体を動かすと、僕の身体に上着がかけられていることに気付いた。

「ああ……大喬さん、ありがとう。」

 僕がそれを畳んで返すと、彼女は受け取ってにっこりと微笑んだ。

「いえいえ……小喬、そちらの殿方は起きましたか?」

 そして、大喬さんは座席の後ろを振り返りながら訊ねた。

 僕も振り返ると、そこには俯き加減で爆睡している牧人とそれを揺さぶる小喬さんがいた。

「熟睡……以上で起きる気配がありませんね……。牧人さん、牧人さん!」

 牧人は小喬さんの呼びかけに応じず、ただ、静かな寝息を響かせた。

「ま、き、と、さんっ!」

 小喬さんは引きつり笑いを浮かべると、拳を構えて牧人の腹に打ち出した。

「ごっふぅっ!」

 たまらず、牧人は異様な声を上げながら覚醒を果たした。腹を押さえながら座席の上で悶絶する牧人に小喬さんは微笑みを浮かべて言った。

「おはようございます、牧人さん。」

「お、おはよ……。」

 彼も何とか笑みを浮かべて返事するが、その額には脂汗が浮いている。

「うっす、牧人、つらそうだな。」

「お前も味わってみるか……?」

「フフフ、小喬、大事な人をそんなやり方で起こして良いの?」

「大丈夫でしょ?牧人さん。これぐらいは。」

「な、何とか……。」

 牧人はそう言いながら大きく息を吐き出した。

「まぁ、支度をしようか。降りる準備。」

「そうですね。」

 僕と大喬さんはその調子を見て安堵すると、自分らの支度を始めた。

 だが、お菓子とか食べていた訳ではないので、荷物を棚から下ろすだけで良かった。

「し、しかし大喬さんの荷物って重いね……。」

 僕は大きなリュックサックを下ろしながら呻いた。

「ええ、治療道具などが入っておりますから。」

 大喬さんはこともなげに言うと、それを難なく担ぎ上げた。

 やば、腕力だったら大喬さんに負けるかも……。

 僕は危惧を覚えながらも、自分の荷物を下ろして担いだ。

 それと同時に、ホームへ列車が滑り込んでいった。

 僕たちは順々に新幹線のドアの方に向かっていった。

 そして、新幹線が定位置に停車し、ドアが開くと同時に順々に降りていく。

 僕はホームに降り立ち、四歩ほど前に出ると深呼吸して微笑みを浮かべた。

「京都……だ!」

 そして、僕らは京都に到着した。


ハヤブサです。


第二章突入しました^^

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