プロローグ…必要悪
はっ、はっ、はっ。
満月が輝く夜。木立の中で誰かが駆け抜けて言った。
そしてその者は満月が雲に隠れると同時に木に身を隠すようにして止まった。
「くっ、ここまで来れば……。」
低い声。男のようだ。安堵したように息をついた。
だが、次の瞬間、その男を追いつめるように鋭い声が走った。
「風陣、《風塵矢》!」
男は身を強ばらせると、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
次の瞬間、たくさんの風の矢が木を木っ端微塵に砕きながら疾風のように通り過ぎていた。
そしてゆっくりとした足音が聞こえた。こちらに近づいている。男は身動きもせずに固まっている。
やがて、足音は遠ざかっていった。
うまくやり過ごせたか。男は身体を起こすと再び安堵した。
その瞬間、男の胸に何かが吸い込まれた。
剣、と認識するのに数秒かかった。
「ぐふっ……。」
男の口から血が漏れ出た。
男は木の根に手をついて顔をぐっと上げた。その瞬間に月に掛かっていた雲が晴れた。
女、だ。美人な女性がそこに立っていた。
「ごめんなさいね……これは必要悪なの。」
女は申し訳なさそうに言うと、剣を引き抜いた。
「な、何が必要悪だ……人間を三千万人殺し、神すらも殺したクセに……。」
「だから、それが必要だったのよ。」
女はそう言うと剣を振りかぶった。それと同時に雲が月にかかる。
「さようなら。」
ひゅっと空の斬る音。その後には沈黙しか残らなかった。
再び、月が姿を現した時、そこには女がその男の亡骸を担いでいる姿だった。
女はたんっと軽く地面を蹴ると浮かび上がった。大の男を担いでいるとは思わせない軽々しさで。
そして、女は満足げに微笑むとどこかへと飛び去った。
だが、女は気付いていなかった。
男が死に際に遺した物を―――。
ハヤブサです。
凄い平凡なファンタジーです。
中学の時から練りに練った作品で改訂に改訂を重ねてようやく出した作品……。思わず、感極まりますね。
ここからまた頑張っていきましょう。
最初は簡単にプロローグをば。
まぁ、ここで感想を頂くのは無理があると思いますので数話進んだところで感想を頂けると嬉しいのです。
ではでは。