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ゴーグル14:ゴーグル君課題に取り組む

今回の顛末だが、ファルセットには停学の沙汰が言い渡された。僕も成り行き上、会の進行を滞らせたと言えなくもないが、特にお咎めはなかった。どうやら雨宮顧問が少し口を利いてくれたそうだ。ボケているなどと勘繰って悪いことをしたかもしれない。ただ恐らく、彼を含めた雨乞い道を往く人たちと僕とでは絶望的に価値観が違うだけのことだろう。



通学路。

「それにしても、御崎君にあれほどの勇気があったなんて知らなかったな」

「たきつけたのは君じゃないか」

今になって思うと、はめられたという気がしている。いざ飛び出してみると引っ込みがつかなくなってしまったというのが正直な所で、勇気というのは少し違う。それにもし彼の言うとおり僕が勇気ある人間だったとして、それはもっと有意義な場面で発揮したいものだ。

「まあなんだかんだで、皆拍手してたし、大団円ということなんじゃないかしら」

お姉さんが乗っかってくる。久しぶりに三人で帰るというのに、僕にとって望まぬ話題で持ちきりだった。

「あのままじゃ、彼…… カブトムシ飼育セット遠藤だっけ? 大変なことになっていただろうし」

「姉ちゃん、セットしか合ってないよ。ファルセットだよ、ファルセット伊藤。たしか」

「まあその伊藤君を救ってあげたんだから、もうちょっと堂々としていたら?」

二人とも他人事だと思って言いたい放題だなあ。まあ、まんまと乗せられた僕が悪いんだけどさ。

「会長も大層喜んでいたわよ? しょうもないイベントに喝を入れてくれてスカッとしたって」

「はあ」

「生徒会に誘ってくれって頼まれちゃった」

「え?」

「ほら、ウチの副会長、春くらいに中型免許とって、それで峠を攻めるとか言ってそのまま行方不明じゃない?」

「いや、知らないですけど。大丈夫なんですか、その人」

「姉ちゃんや会長さんの胸の中で今も生きてるよ」

「ふうん」

「それで今は私が庶務兼会計兼副会長兼書記を務めているんだけど、ぶっちゃけ人手が足りてないのよ」

会長さんは何をしているんだろうか。勝手なイメージで悪いんだけど、何もせずにふんぞり返っている様が想像できた。

「だから、私も健二郎君が手伝ってくれたら助かるんだけど」

「えっと、面倒くさいです」

「そっかあ。そう言うと思ってたわ」



それからの日々は淡々と過ぎていった。気色悪いので捨てたけど、ファルセットから感謝状のような手紙が届いたくらいだ。ちなみにテストが帰ってきたが、勉強会の成果か、多少向上していた。しばらく登校して、終業式を経て、夏休みに入った。

夏休みも前半は特に何をするでもなく過ぎていった。父さんが酔っ払って玄関先の猫避けペットボトルの中身を飲んで胃を洗浄する羽目になったり、母さんが新興宗教の勧誘に熱心に耳を傾けていたり、ホリケツ監督がシーズン中の解任に追い込まれたり、多少辛いこともあったけど、やはり平和と言って差し支えない感じだった。

暑い日々が続くけれど、ゴーグル君とは不定期的に会っていた。思えば高校に上がって一番仲が良いのが彼だ。まさかゴーグルの友達が出来るなんて夢にも思わなかったが、今では違和感無く一緒に遊んでいるんだから、人間の適応能力というのは中々どうして侮れない。

そんなある日、彼の部屋で彼に一つ、提案をした。

「自由研究一緒にやらないかい?」

「え?」

「いや。だって一人でやっても何人でやっても問題ないんだから、楽をした方がいいじゃないか」

何をするにしても、分担作業になれば、ひとりでやるよりは楽になるはずだ。

「なるほどね。御崎君らしいや。それで?」

何をするの? と。

「ううん。ベタなところでは、天体観測とかかなあ」

もっとベタなのに、朝顔の観察日記とかあるけれど、流石に小学生じゃあるまいし、ダメだと言われそうだ。いや、それを言い出したら高校にもなって自由研究なんて曖昧な課題があるのも可笑しいかも。他の学校はないのだろうか、どうなんだろう。

「天体観測? 楽なのかい?」

「うん。先に星座を調べて、それをあたかも観測したかのように書けば大丈夫だよ」

「そうなのかい? そいつは楽チンポコだね」

そう満足そうに言ってから、ゴーグル君は、あっと何かに気付いたような声を出した。

「でもウチは姉ちゃんが居るから、大々的に不正は出来ないんだった」

ああ、なるほど。彼女は案外と真面目だから。

「だったらせめてポーズだけでもやらなくちゃ、か」

「うん。星を見に行くって、野山に出かけないと」

「そうなると…… ここら辺で星がよく見える場所、か。どっか知らない?」

「携帯小説を読むといいよ。☆とか沢山使っているよ!」

「ちゃんとまたたくヤツじゃないと駄目だよ。真面目に考えてよ」

僕らはうんうん唸りながら、周辺地理を頭の中で思い浮かべる。

「もう何でも良いんじゃないかな。どうせ本当に観たいわけじゃないんだから、ちょっと郊外の山に適当に出かければ」

諦めるの早いなあ。まあ僕も考えるのが面倒になってきたところだから、人のことは言えないけど。

「じゃあ、おっか山でいいか。近いし」

「うん、双子山のおっと山よりは獣も居ないだろうしね」

おっか山の方が街寄りなのだ。それでも未開の土地には違いないから、念入りに準備した方が良さそうだ。野人に出くわすかも知れなし、見たこともない蛇に噛まれるかもしれない。

こうして、自由研究の課題、決行場所、日時を決めた。それから、夏の星座について書かれた本を図書館で借りてくることにした。彼が勉強をして、言われた通りに僕が文字に起こしていくという作業を終えて、あとはポーズのお出かけを残すのみとなった。

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