表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

第7話「長老評議会と、沈黙の重み」

西へ。


石の廊下が徐々に変わっていく。


彫り込まれた木の天井。

漆黒の梁が走る淡い壁。


障子越しに夕陽が差し込む。

金色に染まる畳の香り。


まるで別世界。


「今日はキツかっただろ」


ケイト・シゲロが肩越しに振り返る。

足取りは軽い。


「俺は慣れてるけど、お前らはそうでもない。とりあえず俺の部屋で休もう。飯も食うぞ」


質問じゃなくて決定事項。


誰も口を挟まない。


障子を開ける。


広間。


伝統的な和室。

でも、尋常じゃない豪華さ。


壁には浮世絵。

床の間には江戸時代の鶴の花器。


低い漆の膳卓。

座布団が並ぶ。


そこに並ぶ料理に全員が息を呑む。


ふぐ三種盛り。

黄金のキャビア。

極上の和牛。

香りが部屋を支配する。


極薄の巻き寿司。

花びらを浮かべた味噌汁。

トリュフ入り玉子焼き。

銀粉のあんこ菓子。


「こんなの……」


直子が手を伸ばしかけて慌てて引っ込める。


「うちでも食えないレベルだ」


鷹嗣が苦笑い。


着物姿の女性たちが入る。

鶴と桜の刺繍が美しい着物。

音もなく座席を案内。


すぐに酒を注ぐ。

十年以上寝かせた古酒。

甘い米の香りと果実の余韻。


綾奈が小さく呟く。


「……夢みたい」


「静かに味わえ」


鷹嗣が優しく制す。


そこへ。


シゲロが戻ってきた。


着物に着替えている。

漆黒の羽織が妙に似合う。


そして。


眼帯の代わりに。


薄いダークグラス。


高級すぎるオーダーメイド。

顔の半分を隠しながら、逆に存在感が増す。


全員が気づく。


「気づいたな」


指で軽くフレームを直す。


「ちょっとイメージチェンジ」


直子が眉を上げる。


「眼鏡……?」


「たまには変える必要がある」


さらりと。


「見られ方で世界は変わる。たった一つのパーツで、畏れられるか、敬われるか」


綾奈が無意識に髪を触る。

鷹嗣は目を細める。


シゲロがくすっと笑う。


「まぁ、正直に言うと、眼帯は視界が狭くて邪魔だっただけ」


軽く言って。

全員が思わず吹き出す。


でも誰も深くは聞かない。


シゲロが上座に座る。

盃を傾ける。


女性たちが次々と料理を運ぶ。


鷹嗣は思う。


(こいつ……全部計算してる)


でも今は。

もう考えるのをやめた。


《……たまには、こんな夜も悪くないか》


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまでの感想は全体に載せましたので、質問についてだけ追伸させてください。 追伸:丁寧なお返事ありがとうございます! 1)今の書き方、私はすごく好きです。設計が整っているのに、ところどころ理屈を超え…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ