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第7話 野草の浅漬け
夏の午後。
石鼠は庭で摘んだ野草を籠に入れて戻ってきた。
細長い葉に、ほろ苦そうな香りが立ちのぼる。
「また草か!」
允成は思わず眉をひそめた。
「ええ、殿下。草も立派な糧にございます。こうして塩をひと振り――」
石鼠は手際よく葉を刻み、壺に入れ、塩を混ぜる。
しばし置くだけで、瑞々しい浅漬けが出来上がった。
「どうぞ」
小皿を差し出す明玉に、允成は腕を組んで顔を背ける。
だが彼女のやわらかな眼差しに押され、しぶしぶ一口かじった。
しゃくりとした歯ごたえ。
舌に広がる苦みと塩気。
――不思議と、嫌ではない。
允成は頬を赤らめ、うつむいた。
「……悪くない」
その小さな声に、明玉がそっと笑みをこぼす。
石鼠は満足げに頷いた。
粗末な隅宮で、三人の食卓は静かに続いていく。
そのひとときが、幼い皇子の胸に確かな温もりを刻んでいた。




