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第5話 蛇料理
夏草の茂る庭先で、石鼠がするすると伸びる影を踏みとどめた。
するり、と手に絡め取ったのは、一匹の蛇だった。
「ひっ……!」
明玉が思わず声をあげる。
允成は飛びのき、目を見開いた。
「な、なにを捕まえたのだ!」
「ご安心を、殿下。毒はありませぬ。これぞごちそうにございます」
石鼠は笑みを浮かべ、手際よく蛇の頭を落とすと、腹を裂いて内臓を取り出した。
焚火にくべた鉄串に巻きつけ、塩をふる。
「やめろ! そんなもの食えるか!」
允成は必死に顔を背ける。
明玉は困惑しつつも、石鼠の真剣な横顔に目を奪われていた。
やがて焼ける匂いが広がり、白身がほくほくとほぐれる。
石鼠は一本を殿下の前に差し出した。
「殿下、いかがなされます」
允成は鼻をつまみながら、渋々口にする。
……そして、もぐもぐと噛みしめ、思わず瞳を見開いた。
「――うまいとは言っておらん!」
声を荒らげてそっぽを向くが、箸は止まらない。
明玉は袖で口元を隠しながら笑みをこぼした。
石鼠は満足げに焚火の薪を組み直す。
隅宮の夜は、今日もまたささやかなごちそうで彩られていた。




