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第4話 梅仕事

 初夏の風が後宮の庭を渡るころ、石鼠が両腕いっぱいの袋を抱えて戻ってきた。

 袋の口を開けば、青梅がころころと転がり出る。


「なんだそれは」

「殿下、梅でございます。砂糖も入手して参りましたゆえ」


 石鼠は得意げに胸を張る。どうやら裏の市場に顔が利くらしい。

 明玉は目を輝かせて、竹籠に梅を広げた。


「これを漬ければ、暑気払いになります。瓶に砂糖と交互に詰めて……」


 明玉は手際よく梅を洗い、水気を拭き取りながら瓶に入れていく。

 ころん、と落ちるたび、透明な砂糖が白い層をつくった。


 允成は腕を組んで眺めていたが、やがて口をとがらせた。


「もっと漬けよ! これでは足りぬ!」


「殿下、殿下のお腹はひとつでございますよ」

「黙れ、鼠! この倍は要る!」


 石鼠が呆れ顔で笑い、明玉はくすくすと忍び笑った。

 小さな隅宮に響く笑い声は、梅の香りとともに爽やかに漂う。


 やがて瓶の中で砂糖が溶け、青梅は琥珀色に変わっていく。

 允成は待ちきれず、何度も瓶を覗き込んだ。


「まだか、まだなのか」

「殿下、焦れば味が悪くなりますよ」


 ふくれっ面をする皇子に、石鼠がぽんと肩を叩く。


「殿下、待つこともまた、帝王の器にございます」


 允成はむすっとしながらも、その言葉を胸のどこかにしまい込んだ。

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