どこ
「はぁ…お兄様は何処に行かれたのでしょうか…」
お兄様を探してもう3日、私達姉妹が総力を決して探しているが未だに見つかっていない。
「きっと今頃寒くて寒くて凍えているのでしょうか…うぅ……お兄様ぁ〜…」
リリアはそう口にすると泣き出してしまう。
「り、リリ…リリア様!!」
用心棒が慌てたように急にドアを開け入ってくる。
「なんですの…?レディーの部屋にノックもなしで入ってくるなんて…非紳士的ですわ。お兄様なら——」
「そのお兄様が見つかりました!」
「何ですって⁈」
リリアは一気に泣き止み、パァッと顔を晴らす
「ど、どこにいらしたのですか⁈」
「山小屋を降りてすぐの町で見かけたと証言が複数ありました!」
「やりましたわ!他の姉妹にも知らせてください、それと、今すぐ馬車の準備を!」
そう言うとリリアは出掛ける準備をしだす。
「しかしリリア様、この後重役会議が…」
「そんなもの出るわけないでしょう」
「で、ですが…」
用心棒は少し狼狽えながらも説得しようとする
「うるさいですわね…潰しますわよ?」
「いってらっしゃいませ!!」
「よろしいですわ」
リリアはそう言うと用意を済ませて部屋から出て行ってしまう。
「はぁ…まったくあの方はわからない……」
用心棒はヘナヘナとしゃがみ込んでしまう。
「最近は黒龍が再び襲来すると言う噂もあるのに………まぁ、あの人なら大丈夫か、一応この国の護神の一人なだし」
一方その頃アムスは……
「この先が待ち合わせ場所か…」
アムスは見慣れた様で変わった町を見渡しながら、例の王女との約束の場所を目指す。
「たく、大将め…俺がアムスって事なんでバラしたんだよ」
まぁ大将の事だから何か訳はあるんだろうけど…
俺は「ハァ」と小さくため息を吐く。
しばらく歩いた町の外れ、畑が地続きしている様な場所
そんな所には似合わない様な煌びやかな洋服を纏った少女が、俺を待っていた。
彼女は俺を見るなり顔をパァ、と輝かす。
その顔にある人物の面影を感じつつ、俺は彼女に近づく。
「来てくださったんですね!」
「まあ王女さんの頼みですしね」
「ありがとうございます、昨日はアムス様ご本人と知らずに失礼な事を…」
「別にいいですよ、隠してた俺も悪いですし」
俺は王女様とある程度会話をする。
すると、彼女がそわそわし出す。
「あの…どうかしました?」
体調が悪いのだろうか。
すると、彼女は少しもじもじと口を開く
「あの…わたくしの事は名前で呼んでいただけませんか?」
「え………いいのか?」
「はい、その方がお互い気が楽でしょうし」
「ほんとに大丈夫?言った瞬間俺の首飛んだりしない?」
「わ、わたくしを何だと思っていらっしゃるんですか!そんな事しません!」
「ならいいけど……じゃあこれからはラルトって呼ぶよ」
「はい!」
俺はラルトと一緒用意されていた馬車に乗る。
「では行きましょうか、王国に」
ラルトがそう言うと馬車が動き出す。
王国、そういえば行こうとは思ってたけど、実際に行くのは初めてだな、割と楽しみだ。
そんな事を考え、窓から変わっていく景色を俺は眺めていた。
だが、この時の俺は知らなかった
王国に、俺の義妹の一人がいるという事を。