綺麗な空
「ん〜!空が綺麗だなぁ」
町外れの草原で伸びをしている彼の名前は、アムス・ストリア
自立する為に旅に出て義妹達を心配させているクソボケ野郎である。
だが彼はまだそんな事知る由もない。
「とりあえずお腹減ったし腹ごしらえするか!」
そう言いながら町に戻ろうと立ち上がる。
「ぐるるるる…」
「あ、お腹なっちゃった。誰もしなくてもお腹鳴るのって恥ずいよなぁー」
アムスはそう言いながらお腹をさする。
しかし、アムスは違和感を覚えた。
「あれ?確かにお腹減ったけど小腹程度だから音鳴らないはずなんだけどな?」
「ぐるるるるる…」
また鳴った…いや、これって後ろから聞こえた様な…
アムスはゆっくりと振り返ると…
「グガオォォォ!!」
「なんで平原に魔者がいるんだよ!」
アムスはそう言いながら町へ逃げる。
「はぁはぁ…ここまでくれば結界もあるし大丈夫だろ」
息を切らしながらもアムスは飯屋の看板がかかっている建物に入る。
「いらっしゃい!」
男の店主の声が厨房の奥から響く。
「大将、久しぶり!」
俺はそう大将に声をかける。
すると、ドタドタと慌てたように厨房から大柄の男が出てくる。
「アムスか⁈お前帰ってきたんだな!」
「うん、ちょっとやりたい事があってね」
この人は俺の親代わりのような人だ。
俺が転移してきて右も左もわからなかった時に俺を引き取って二年間育ててくれた。
「いやーにしても急だな、連絡してくれりゃあ町あげて歓迎会開いたってもんだ」
「いやいや、歓迎会なんて大層な事するほどの人間じゃないよ俺は」
「なに言ってんだ、14年前の炎龍襲撃、あれを収めたのは——」
「違う、あれは俺じゃないって何回も言っただろ」
俺は大将の言おうとしている内容を遮る。
それは思い出したくない記憶。
顔を俯かせながら、俺は荒ぶり気持ちを収める
「そうか…すまねぇな」
「大将が謝る事じゃないよ、これは俺の話だし」
酒場に数秒の静寂が訪れる。
今だけは数秒さえも数分の様に長く感じてしまった。
ガチャ!
その静寂を破ったのは勢いよく開いたドアの音だった
入ってきた人物はローブを纏い、顔を隠していた。
俺と大将は入ってきた人物を凝視する。
すると入ってきた人物は息を切らし、纏っていたローブを脱ぐ。
「すみません、ここにアムス・ストリアと言う方はいらっしゃいませんか?」
ローブの内側は可愛らしい少女だった。