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閑話 組員と構成員と一般冒険者【東雲視点】


「そもそもの話、須貝組の組員とここで依頼を受けてる、普通の鉄級冒険者ってどういう線引きなの?」


 私がそんな質問を投げかけると、須貝さんと雨井は互いに顔を見合わせた。

 両者とも、鳩が豆鉄砲を食ったようだ。


 普通の疑問だと思うんだけど、なにかまずいことでも言ってしまったのだろうか。


「おまえなあ、どんだけうちに興味なかったんだよ」

「え」

「いいじゃないか、雨井。教えて差し上げな」

「へい」


 雨井は須貝さんに頭を下げると、まっすぐ私に向き直った。


「まず真緒の言う組員(・・)と、他の鉄級冒険者(・・・・・・・)の明確な線引きだが……そんなにない」

「ないの?」

「ああ。そもそも、まずは前提が間違ってっから、ここらで一度正しておくがよ、今まではおまえに合わせてたが……真緒が組員とその他冒険者って呼んでるのは、それは間違いだ。正しくは構成員と組員と呼ぶ。つまり、真緒が組員と呼んでいる存在は構成員で、その他冒険者は組員ってなるわけだ」

「え、じゃあ私……須貝組の組員ってことになるの?」

「そうだ。おまえだって一応、須貝組に所属してんだ」

「ま、まじですか……」


 まさか私がこんな団体に所属して、片棒を担がされてたなんて……。

 まぁ、いまさらか。


「そうじゃねえと、昇級戦に参加するとか無理な話だろ」

「そっか。昇級したいだけなら、昇級戦のときだけ腕利きの冒険者雇ったらいいんだもんね」

「そう。だから原則として昇級戦に参加するのは、クランのメンバー……つまり、うちだと組員までのみとなるわけだ」

「なるほどね。……でも、いちおう構成員と組員とで呼び方は分けてあるんだよね。明確な線引きはないって言ってたけど」

「もちろん、そういう些細な違いはある。だが、線引きはない」

「……どういう意味?」

「たしかに構成員だと事務的な仕事も任されるが、俺がお前の任務に同行したように、いわゆる冒険者のような仕事もする。違いがあるとすればそれくらいだ。線引きは……それこそ呼び方くらいだな」

「じゃあなんで、構成員と組員とで分けてるの?」

「それは簡単だ。俺たちが組長と盃を交わしてるかどうかだな。俺たちは須貝組に、組長に心底惚れてるから、ここでお世話になってんだ。要するに気持ちの問題ってやつだな」

「盃……つまり、正社員か契約社員かの違いってことね。……でも、待遇自体はそんなに変わらないと……」

「なんだ真緒、おまえまさか組に興味が――」

「ないです」


 きっぱりとここで否定しておく。

 組員の時みたくなあなあで構成員になったら、今度こそ私が終わる。


 どのみち銅級に上がれたらそこで辞めるつもりだしね。

 私ができる恩返しは、須貝組をきっちり昇級させるまでだ。


「ははは。こりゃいい。きっぱり振られちまったね、雨井」

「組長ぃ……笑いごとじゃねえですよ……」

「ま、こちらとしちゃあ、東雲さんがその気ならいつでも歓迎するさ」

「は、はぁ……」

「御覧のとおり、うちの組は間口が広い。どんだけ脛に傷を持ってようが、言葉が通じなかろうが、勇者の称号を剥奪された異世界人だろうが、組の下で働きてえってんなら拒まねえし、食いっぱぐれさせねえ。……けどね、構成員はべつだ。一度なっちまったら簡単には辞められねえ。それが掟だ。よくよく考えるこったね」

「いやだから……入りませんよ……」

「もちろん、もしもの話だ。ただ後で知らなかった……なんて、言われてもね。報告、連絡、相談はきちんとやるもんだ。そうだろ? 雨井」

「か、勘弁してくださいよ……組長……」


 雨井は居心地が悪そうに頭を掻いた。


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