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第192話 次なる一手 その3


「まあ、紅月も言っていたが、よその国の魔王様に、うちの問題を解決してもらおうってのはナシだ。メンツがどうのって話じゃねえ。物理的にも不可能なんだ」

「でも、だったら、どうするんですか?」

「忘れたか? 俺が一番最初に、鳳凰祠で言っていたことを」

「たしか――」

萬國(ばんこく)美食(びしょく)争鋒(そうほう)……」


 紅月が思い出したようにぽつりと呟く。


「そう。要するに、世界一の料理人を決める大会だ。ここ、ナティーログにて四年に一度開催される、デケェ大会だ」

「その大会が、なにか黄龍を倒すことに関係していると……?」

「聞いて驚くなよ。その大会の優勝者はなんと……魔王ビアーゼボに願いを叶えてもらえるんだよ」

「願いを……!」

「叶える……!?」


 不意に私と紅月の声が重なる。


「なんでもですか?」

「なんでもだ」

「なんでも……」

「まあ、『結局魔王に頼ることになるのかよ』って思うだろうが、ぶっちゃけ、それ以外に黄龍を倒す方法は、今ところは思いつかねえな」

「……しかし――」


 紅月が逡巡するように、人差し指を顎に当てながら天井を仰ぐ。


「どのみち瑞饗が……丹梅国が危なくなれば、魔王ビアーゼボは腰を上げるのでは?」

「なんだ? 実際に被害が出てから対応しろってか?」

「あ、いえ、そういうことでは……」


 紅月らしい考え方だ。

 結果を重視し過ぎるあまり、その過程で被害を被る人たちへ考えが至っていない。


「黄龍に対して何らかの対策を講じているのと、何も講じていないのとでは、受ける被害は段違いだ。なんなら未然に防ぎたいのが本音だが、今回、それは難しい。だからこそ、せめてビアーゼボの協力は取り付けておくべき。俺は、そう判断した」


 正論だ。

 たしかに黄龍が出現して、丹梅国をめちゃくちゃにし出したら、魔王ビアーゼボも立ち上がるかもしれない。

 しかし、それだとあまりにも対応が後手に回り過ぎている。最悪、何人も人が死ぬ。


 黄さんはそれを防ぐために、一番回りくどくて、近道なこの方法を考え付いたのだろう。


「す、すみません……」


 紅月は肩を落として、頭を下げて黄さんに詫びた。


「いや、いい。俺こそすこしヒートアップし過ぎた。それに、そもそも、おまえさんらの協力が、この作戦には必要不可欠だからな」

「作戦……え? ちょっと待ってください……もしかして――」


 黄さんの視線が、私たち二人を順番に捉えた。


「どうだ。おまえさんら、料理は得意か?」


 私は首をギギギと、まるでブリキの人形のような挙動で紅月に向けると、彼女もまた同じような状態で私を見てきた。


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