表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/212

第189話 認知のズレ


「そうか。……へへ、なるほどな。東雲は焔成(えんせい)の知り合いだったのか」


 黄さんがテーブルの大皿から、自分の分を取り分けながら言った。


 あのあと、(ちん)さんは私たちへの挨拶もそこそこに、すぐに厨房へと帰っていった。

 黄さんはここの常連らしく、それを階下にいたボーイも知っていたので、すんなり通してもらったということだった。


「まあ、今回のお陰で、これから気軽にヤグルシを出入りできなくなった……ってわけだな」

「それは私たちのせいなのでしょうか」


 紅月も別の皿に箸を伸ばしながら応じる。


「あの場で、鳳凰の祠で、事情を話していただければよかったのでは?」

「まあ、一時的にではあるが、黄龍がこの世界から存(・・・・・・・・・・)在ごと消え去った(・・・・・・・・)なんて言われても、ピンとこねえだろ?」

「それは……」


 紅月の料理を取る手が止まる。


 黄さんの言う通りだ。

 いくら元々、丹梅国で四象の存在が風化しかけていたとはいえ、その存在自体は広く知られて……いや、だからこそか。

 風化しかけているからこそ、一般人に訊いたところで、本当に知っているかどうかの判断がつかない。

 しかし、魔王ビアーゼボなら、その側近であるエイハーザヤさんなら、四象を知らないわけがない。

 だからこそ、黄さんはあえてここまでやってきて、黄龍がこの世界から抹消されている証拠を提示してきた。

 これは、口で説明されただけでは、きっと理解できなかった。


「……妥当な判断だと思います」


 私がそう言うと、黄さんは少し意外そうに目を丸め、はにかんだ。


「はは、言ったろ。百聞は一見に如かずってな」

「……そうですね。私たちのせいでご不便をおかけします」


 紅月がそう言って頭を下げる。……下げてはいるが、あまり納得はいっていないようだった。

 心なしか、若干嫌味に聞こえてしまう。


「まぁ、ヤグルシのチェックが厳しくなったとしても、この件を解決したら、誤解も解けて、また顔パスに戻るだろ。だから、とりあえず今は腹ごしらえだ。どんどん食えよ」


 黄さんはそう言うと、高そうな料理を豪快に食べ始めた。


「……ところで、存在の消去とは、どういう?」


 ここで紅月がもっともな疑問を黄さんに投げる。


「言ったろ。呂さんは今、別の世界で黄龍と戦っていると」

「それはそうですが……まさか、存在自体までなかったことになるなんて……一体どうやって?」

「手段についてか? それとも仕組みについてか? 前にも言ったが、わからねえ。だが実際、呂さんはそれをやってのけた。今はそれで納得しとけ」

「は、はぁ……」

「問題は、それで生じる認知のズレだ。魔王の側近でさえあれだ。この世界において、もう俺たち以外、誰も黄龍を認知できない。そして、それは同時に――」

「呂さんのことも、誰も認知できない。つまり誰も、危機が迫っていることに気づけない」


 私がそう言うと、黄さんがゆっくり頷いた。

 要するに、地震というものを知らない人たちに、地震の危険性について説明するようなものだ。

 ピンとこないどころか、変に不安がらせて警戒されてしまう。


 しかし、そうなってくると気になるのは――


「なぜ、私たちはまだ、呂さんと黄龍のことを知覚できてるんですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ