第182話 万国料理争鋒
「別の世界……?」
私がそう漏らすと、黄さんは力強くうなずいた。
「心配するな。元いた世界とは無関係だ」
黄さんが即座にそうフォローしてくる。
そうか。こういう場合、勇者として真っ先に考えるのは元いた世界のこと。
でも生憎、今の私は、未だにそのことを思い出せずにいる。
「〝限定的な亜空世界〟……呂さんは、この世界からは関知できない、箱庭のようなものだと言っていた」
「そんなことまで……」
「ああ。正直言って規格外だ。あの人がそんなことまでできるなんて、俺も最近まで知らなかったからな。……だが事実、守護者たちはそれぞれ象徴となった」
「なるほど。では呂さんは今もそこで……」
「そうだ」
「――呂さんは、大丈夫なのでしょうか?」
紅月が黄さんをまっすぐ見ながら尋ねる。
「あの人はあの人で凄い人だが、今回の場合、相手は神だ」
「神……」
「ああ。出来損ないでも、神は神だ。その強さは、おまえさんらが一番よくわかってるだろ?」
黄さんにそう言われ、私と紅月は自然に互いの顔を見る。
どうやら考えていることは同じようだ。
そこに関しては間違いない。
できることなら、あんなのとはもう二度と戦いたくない。
それだけに紅月は呂さんが心配なのだろう。
「あの人がすぐにやられるとは到底思えない。だが、ハッキリ言って、勝てる見込みもない」
黄さんがきっぱりと言い切る。
つまり、その可能性は本当に万に一つもないのだろう。
「それくらい圧倒的なんだよ。神っていうのは」
「けれど、勝算がないわけではないのですよね?」
紅月が話を急かすように質問する。
「勿論だ。そうじゃないと、呂さんもこんな回りくどいやり方は選ばんだろうしな」
「そう……ですか。それで、私たちは一体何をすれば……?」
黄さんがここまでの事情を私たちに話すのだ。
つまりそれは、私たちは既にこの作戦の一部であるということ。
本音を言ってしまえば、もう黄龍とは出会いたくもない。
しかし、そう言っていられる状況じゃないのもたしかだ。
だったら覚悟を決めるしか――
「心配するな」
気が進まない私を気遣ってくれたのか、黄さんは即座に首を振った。
「今すぐ呂さんの元に駆けつけて、彼をフォローしてくれなんて言わない。おまえさんらには……そうだな。是非、今度〝ナティーログ〟にて開催される〝萬國美食爭鋒〟に出場してほしい」
「ばん……なんですか、それは?」
「丹梅国のナティーログ……魔王の自治領にて4年に1度開催される、料理の大会だ」




