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第179話 か細い希望


 螭龍(ちりゅう)

 螭龍ってたしか青竜の――


「今しがた青竜と最後(・・)の連絡が取れた。じき他の守護者もおぬしとの通信を図る頃であろう」


 通信――

 その言葉について考え始めるよりも先に、今度は軽薄そうな声が脳内に流れてくる。


「はいはい、百爪(びゃくそう)だよ。……聞こえてるかな? こっちも白虎との連絡が取れたとこだよ。ついでに、キミたちが今置かれている状況もね。なんか、大変みたいだね。朱雀も。……って、あれ、フェニ子でいいんだっけ? それに、はじめまして……で、いいのかな?」

「時間ない……本題いこ……」


 続いて、ひどく億劫そうな声も流れてくる。


玄冥(げんめい)の言うとおりだ。前置きは省け、百爪」

「はいはい。そんなわけで、今からキミたちを安全圏にまで転移します」

「だいじょうぶ……変なところには……飛ばさない……急に祠から消えたのは……びっくりしたけど……」

「案ずるな。転移に必要な力は既に受け取っている(・・・・・・・)。我らはいつでも、おぬしらを退避させることが出来る」


 ――退避。転移。

 ありがたいけど、この状態でそんなことをされたら、フェニ子はともかく紅月が――


「あ……それと……ちょっと前にそっち……向かったみたいだから……」


 向かったって、なにが。


「そろそろ合流……するんじゃない……? あれ……時間的に入れ違いに……なるのかな……」

「玄冥、要領を得ぬ話し方をするな」

「……まあ……そのうちわかるよ……」

「て、ことだからさ、もう本当に時間ないし、悪いけど、このまま転移に移らせてもらうね。初めてだから、気持ち悪くなったりしたらごめん」


 〝まだ紅月が〟

 なんとか声を振り絞ろうとするが、そんな私の視界にとんでもなく巨大なモノが映りこむ。


 鳥。

 巨鳥。


 燦花で見たフェニ子と同じくらいの大きさの鳥。

 しかし、あの時のフェニ子のような荒々しさはなく、より神秘的な雰囲気を纏っている。


 そして――


 そしてなによりも、私はこの鳥の姿を初めて見たはずなのに、なぜかその姿には見覚えがあった。


 龍を思わせる頭部に、左右に伸びる長い髭。

 そしてなによりも、その瞳には知性が宿っていた。


『悪ぃ、遅くなったみてぇだな』


 聞き覚えのある老人のしゃがれた声。

 誰かがその巨鳥の背に乗っているようだが、逆光でその輪郭しか確認できない。


『〝あとは任せろ〟……なんて、言えた義理じゃあねえが、少なくともおまえさんらの準備(・・)が整うまで、こいつ(・・・)と持ちこたえるつもりだ』


 次第に瞼さえも開かなくなってきた。

 視界が波のように揺れる。

 これが〝慣れていない転移〟なのだと、遅れて理解した。


『じゃあな』


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