表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/140

第109話 国士無双


「麻雀ってさ、人生と似てるよね」


 紅月が親になって数巡目。

 百爪は牌を切りながら、そんなことを言いだした。


「相手の捨てたモノを見ていると、その人が今、なにを欲しているのか、大体わかるんだ。でも、改めて捨てたモノの中を見てみると、その中に必要なものがあったりする」

「……何が言いたいのかしら?」


 これまで百爪のことを歯牙にもかけていなかった紅月が突っかかる。

 なにかが彼女に刺さってしまったのかもしれない。


「つまり、オレが言いたいのは――紅月さんがほしい牌って、これなんじゃないかって」


 百爪はそう言うと静かに〝中〟の牌を捨てた。

 紅月はそれを見て一瞬、眉を動かすと――


三味線(・・・)は、ルール違反にはならないのかしら」

「黙って麻雀なんて打っても、楽しくないでしょ」

「楽しくないのは貴方が、でしょう? 私はべつに、沈黙は苦にならないの」

「そっか。でも、口から出た言葉が嘘か真実か――なんてのは、受け取った側が判断するものだと思わない? まあ、三味線を負けた理由に使うのは勝手だけどさ」

「……思わないわね。それじゃ世の中全部、言った者、やった者勝ちになるじゃない。少なくとも発言者は、その発言に責任をもつべきよ」

「世の中って……いやだなあ。麻雀の話だよ、これ」

「私も麻雀の話をしているのだけれど?」

「……そっか。でも結局、最終的に得をするのか、損をするのか、受け取った側次第だとは思わない?」

「しつこいわよ」

「ごめんごめん。それで、この牌どうするの?」

「もちろんいただくわよ。――ロン」


 紅月はそう言うと、自身の手牌を私たちに見えるように倒した。

 いち、きゅう、いち、きゅう、いち……って、この役見たこと――


国士(こくし)。親だから48000ね」

「あちゃあ、こりゃ大きいのに振り込んじゃったみたいだ」

「よく言うわ」

「でも本当に、紅月さんがこれでアガるとは思わなかったよ。てっきりスルーされるかと」


 それ以上、紅月は何も言わない。

 おそらく麻雀上級者同士の心理戦とか、そんな感じのやり取りなのだろう。

 私にはさっぱりだが。


「じゃあこれで紅月さんが57000点。単独トップだね。……さ、気を取り直して次の局へ行こうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ