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第100話 藍の記憶 その2


「天界……?」

「要するに、天上じゃな。妾はそこまでしか知らぬ」

「そうなんだ。……でも、無関係なところで起きてた戦争なのに、フェニ子にまで影響があったって、すごいね」

「うむ。断片的にしか見ておらぬが、空どころか大地も裂けておったの。光と闇が押し合い、稲妻もあちこちで鳴っておった。地鳴りもまったく止まぬし、凄まじい雨が何年にも渡って降り続けた。記憶の中の祠の周囲や、その風景が現在のものとは違っておるのも、おそらく戦いによって生じた影響なのじゃろう」

「……ええ、残ってある文献にも、世界地図を書き換えるほどの戦いだったと記録されていたわ」

「さすがに迷惑過ぎない? それ……」

「戦争なんて元来、迷惑を煮詰めたようなものでしょ」

「それもそうだ……」


 にしても、規模が大きすぎて、どんな戦争だったのか、まったく想像できない。

 そのうえ、もっさんが参加していたなんて――


「……でも、てっきり、そこで残響種になっちゃったフェニ子を、他の四象たちが追い出したんだと思ってたんだけど……違うんだよね?」

「うむ。白虎も玄武も、この青竜も心の底から心配しておったの」

「そうだったんだ……じゃあ結局、フェニ子がなんで白雉国にいたのかは、まだわからないんだね」


 私がそう言うと、フェニ子は軽くうなずいた。


「……記憶は、それで全部なのかしら?」

「いや、実際に会話しておったぞ」

「会話?」

「うむ。四象たちでの。その内容はどれも、妾を気遣うような内容じゃったんじゃが……」


 そこまで言って、フェニ子は怪訝そうに首を傾げた。


「……どうかした? なんか、引っかかる事でもあるの?」

「う~む、しかしその会話によると、鳳凰はなんともなかったようなのじゃ」

「なんとも……ない?」

「うむ。余波を受け、痛みはする、違和感もするが、すでに処置してあると」

「処置……って、残響種になるような原因を除いたってこと?」

「話の文脈を考えればそうじゃろうな」

「実際にフェニ子って、今も残響種で、そのことが原因で白雉国に追いやられたんだよね?」

「う~む、それも今になっては怪しいものじゃ。妾の祠の玉、そして青竜の玉の記憶を見るに、青竜も白虎も玄武も、みな本当に良いヤツじゃった。そんなヤツらが、よもや妾を……」

「じゃあ、玉を触って呼び起こされる記憶は、じつは嘘だったとか?」

「そんなことあるかのう……」

「……ごめん、ないよね。そもそもそうする理由もないし」


 私がそう言うと、フェニ子は頭を抱えた。


 たしかによくわからない。

 でも、それでも現在のフェニ子は間違いなく、残響種で、白雉国にいた。


「……もしかすると、鳳凰は……フェニ子は処置したものだと思い込んでいたけど、実際はそんなことなくて、それが原因で、やっぱり他の四象に丹梅国を追い出された……とかなのかなあ……」

「う~……む~……、じゃが、残響種とは、その性質が変化してしまっただけで、要するに人格……この場合は、神格かのう? そこには影響は与えないと思うのじゃが……」


 私はちらりと紅月を見たが――


「悪いけど、さすがに残響種の性格が感染前と後で変化しているのか……ということまではわからないわ」


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