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第96話 戦闘:螭龍 その2


 絶えず草や葉を飛ばしてくる。

 これまでの度重なる戦闘により、目も体も慣れてきたのか、ギリギリではあるがその攻撃に対処できている。


 しかし、これからどうすればいいのか。

 螭龍の身体能力を下げたところで、今のような技を使われてしまえば紅月の攻撃は届かない。ならば――


「そうだ! 走れ走れ! でなければ、そこに転がっている鳳凰のようになるぞ!」

「ころが……へ?」


 私はおそるおそる振り返ると――


「ふぇ、フェニ子!?」


 うつ伏せに倒れたまま、ピクリとも動かないフェニ子がいた。


「……む。親愛的(ますたあ)……?」


 フェニ子が私の声に反応し、むくりと顔だけを上げる。

 しかし、彼女の額には葉っぱが刺さっており、そこから血が流れていた。


「大丈夫なの、それ?」

「ちと痛いが、命に別状はないのじゃ」

「……フェニ子はもう、そのまま死んだふりしてて」

「わはははははは! なあに、本物の鳳凰なら、その程度で死なぬわ!」


 そうか、螭龍は耳がよかったんだ。

 なんて考えていると――


 〝サクッ〟


 フェニ子の額にまた葉っぱが刺さり、そのまま動かなくなってしまった。


「ふぇ、フェニ子おおおおおおおおお!」

「これで一人……いや、一柱脱落か。異国の者よ、あまり我を落胆させ――」

「鳥に構ってる暇、あるのかしら」


 再度、紅月が螭龍の背後を取る。


「笑止。忘れたか、我が風の守りを、风牙阵を――」


 螭龍の周囲の空気が再び渦を巻く。

 あのままではまた紅月はダメージを負ってしまう。


 しかし、それを理解していない紅月ではない。

 あいつが何の考えもなしに、あんな特攻を仕掛けるわけがない。

 ならこれは、私に対する合図に他ならない。


 そして、奇しくもここで、私と紅月の考えていたことが一致してしまったのだ。


 私は、今度は螭龍の身体能力……ではなく、魔力を下限まで下げた。

 目論見は当たり、途端、竜巻は雲散し、紅月と螭龍の間を遮るものがなにもなくなる。


「上出来よ、真緒」

「いっけえ! 紅月ぃ!」


 今度こそ紅月の刃は螭龍を捉えた。

 ……そう思っていた。

 螭龍はその膂力で青龍刀を軽々と操り、紅月の刺突を難なく防いだ。


 しかし、それで怯む紅月ではない。

 彼女は素早くナイフを引くと、身を翻して回転し、今度は逆方向からの攻撃を試みた。


 ――が、これも難なく青龍刀で受け止められてしまう。

 そして両者はそのまま、鍔迫り合いの形になった。


「……あら、意外ね。てっきり接近戦は不得意だと思っていたのに」

「わはははははは! なかなかに動くな、女! しかし、その程度の力で我はねじ伏せられまい!」

「紅月! もう魔力戻ってる!」

「……チッ」

「风牙阵!!」


 紅月は舌打ちをしつつ、素早く後方へと跳んだ。


 〝ヒュゴウッ!〟


 また巨大な竜巻が螭龍を中心に発生する。

 今度は紅月にダメージはないようだが――


「……これ、どうすれば……?」


 身体能力を下げても、風による防壁で近づけない。

 魔力を下げ防壁を発生できないようにしても、彼自身、普通に戦うことができる。

 かといって、様子見に回ろうと思えば、絶えず葉や草を飛ばして消耗させられる。


 こんなことなら、牙神からもう少し魔法をもらえばよかった。

 あの焦滅(インシネレ)爆陣(イトゾーン)なら、草や葉っぱを燃やしつつ螭龍にダメージを――


「燃やす……?」


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