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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第九十三章 小獣潮

いそげ、落後らくごするな!」

前線ぜんせんぞくもの血戦けっせんしてる。援軍えんぐんってるんだ!」

隊列たいれつみだすな!夜間やかん作戦さくせん方向ほうこう見失みうしないやすい。新人しんじんは特に注意ちゅういしろ!」


……


山寨さんさいもど山道やまみちある方源ほうげんよこを、五人組ごにんぐみが次々(つぎつぎ)とけていく。


なに)()こっているのか?」たった500メートルの道程みちのりで、すでに13くみ)小組こぐみ)遭遇そうぐう)した。


かれ)思案しあん)しず)んだが、500年分ねんぶん)記憶きおく)冗長じょうちょう)複雑ふくざつ)すぎる。転生てんせい)以来いらい)回想かいそう))めたことはないが――


依然いぜん)としてきり)つつ)まれた記憶きおく)おお)く、無理むり)さぐ)れば霧中むちゅう)方向ほうこう)見失みうしな)うだけだ。


鮮烈せんれつ)記憶きおく)だけが真珠しんじゅ)首飾くびかざ)りのようにつながり、方源ほうげん)前世ぜんせ)500ごひゃくねん)つらぬ)いている。


あき)らかに今起いまお)こっている事態じたい)は、この真珠しんじゅ)つら)なりのなか)には存在そんざい)しない。


古月山寨こげつさんさい)での生活せいかつ)など、前世ぜんせ)初期しょき)なか)でももっと)はや)時期じき)のもの。あまりにとお)過去かこ)だ。そして……


「もしかすると前世ぜんせ)ではこの事件じけん))こらず、わたし)行動こうどう)変化へんか)しょう)じさせたのかもしれん」


ちょうど、べつ)小組こぐみ)出発しゅっぱつ)しようとしていた。


「ん?」方源ほうげん)姿すがた))つけると、組員くみいん)一人ひとり)きゅう)あし))めた。「ほうげん、まだここにいるのか?」


「どうした?」方源ほうげん)かお))げると、はな)しかけてきたのは同期どうき)古月赤城こげつ あかしろ)だった。


赤城あかしろ)まゆ)ひそ)めた:「おいおい、)らないのか?むら)ちか)くに小規模しょうきぼ)獣潮じゅうちょう)発生はっせい)してるんだ。ほう)っておけば大規模だいきぼ))して、山麓さんろく)の村々(むらむら)が)なが)されるぞ。凡人奴隷ぼんじんどれい)がいなくなるとこま)るんだ」


「ああ、そういうことか」方源ほうげん))ひか)った。


指摘してき)されて、記憶きおく)片隅かたすみ)よみがえ)った。


この世界せかい)では人間にんげん)生存せいぞん)困難こんなん)だ。すう)ねん)ごとに獣潮じゅうちょう)発生はっせい)する。人間にんげん)資源しげん)必要ひつよう)とし、生活空間せいかつくうかん)必要ひつよう)だ。けもの)昆虫こんちゅう)同様どうよう)必要ひつよう)としている!


獣潮じゅうちょう)人間にんげん)野生生物やせいせいぶつ)戦争せんそう)解釈かいしゃく)すれば、理解りかい)しやすいかもしれない。


青茅山せいぼうさん))えば、三年さんねん)ごとに大規模だいきぼ)おおかみ)群襲ぐんしゅう)各山寨かくさんさい)おそ)う。



時間じかん)てき)推算すいさん)すれば、本物ほんもの)狼潮ろうちょう)来年らいねん)爆発ばくはつ)するはずだ。だがいま)小規模しょうきぼ)獣潮じゅうちょう)根本こんぽん)は同じ(おなじ)だ。おおかみ))れが拡大かくだい)すれば、周辺しゅうへん)ほか)獣群じゅうぐん)生息域せいそくいき)圧迫あっぱく)する。日々(ひび)の)かさ)ねで限界げんかい)たっ)すると、獣群じゅうぐん)移動いどう))きる。移動いどう)した獣群じゅうぐん)さら)ほか))れに影響えいきょう)あた)える」


「こうした相互影響そうごえいきょう)で、一定いってい)確率かくりつ)影響えいきょう)拡大かくだい)し、複数ふくすう)獣群じゅうぐん)同時移動どうじいどう)して獣潮じゅうちょう)形成けいせい)される。早急さっきゅう)おさ))まないと、獣潮じゅうちょう)膨張ぼうちょう)つづ)ける。古月山寨こげつさんさい)自体じたい)当分とうぶん)安全あんぜん)だが、放置ほうち)すれば山寨さんさい)戦力せんりょく))がれる」


)て!そう)うなら……」方源ほうげん))するど)ひか)ったが、即座そくざ)まぶた))せて表情ひょうじょう)かく)した。


赤城あかしろ)つづ)けた:「内務堂ないむどう)外事堂がいじどう)すで)動員令どういんれい)発令はつれい)し、緊急任務きんきゅうにんむ))している。ほうげん、サボるな。おまえ)小組こぐみ)午前中ごぜんちゅう)出発しゅっぱつ)してる。おまえ))義務ぎむ)がある。だが――」


ここで意図的いとてき)))き:「獣潮じゅうちょう)もと)危険きけん)だらけだ。夜間やかん)作戦さくせん)昼間ひるま)より危険度きけんど))す。一転いってん)小娘こむすめ)ごときが、我々(われわれ)二転にてん)同列どうれつ)あつか)われると思うなよ。ククク……」


はなし)しながら赤城あかしろ)むね))り、あか)おび))まわ)した。おび)中央ちゅうおう))めた鉄板てっぱん)には「二」の文字もじ)きざ)まれている。


つい最近さいきん)古月赤城こげつ あかしろ)祖父そふ)赤練あかれん)助力じょりょく)二転にてん)昇進しょうしん)したのだった。


おれ)いま))ったばかりだが、そういうことなら」方源ほうげん)突然とつぜん)笑顔えがお))せた。「おまえ)たちと同行どうこう)しよう。前線ぜんせん)小組こぐみ)合流がっりゅう)すればいい」


「は?ふん、だれ)がおまえ)なんか)れてくか!」赤城あかしろ)腕組うでぐ)みをしてわら)った。


方源ほうげん)は悠々(ゆうゆう)とこた)えた:「族規ぞっき)に『孤立こりつ)した蛊師こし)最寄もより)小組こぐみ)編入へんにゅう)し、戦闘継続義務せんとうけいぞくぎむ))う』とある。赤城あかしろ))らなかったのか?」


「この!」赤城あかしろ)))き、いか))さんとしたとき)


たし)かにそうだ」だま)っていた赤山あかやま)くち)ひら)いた。


身長しんちょう)2メートルちか)く、とら)背中せなか)おも)わせる屈強くっきょう)肉体にくたい)。**裸上はだかうえ)てつ)のような筋肉きんにく)全身ぜんしん)火炎色かえんしょく)はだ)からかす)かな熱気ねっき)はっ)していた。


あき)らかにこの小組こぐみ)指導者しどうしゃ)だ。


赤山あかやま)くち)ひら)いた以上いじょう)赤脈あかみゃく)後継者こうけいしゃ)である赤城あかしろ)だま))むしかなかった。


赤山あかやま)無表情むひょうじょう)方源ほうげん)一瞥いちべつ)し、「出発しゅっぱつ)だ。)いて)い」とみじか)めい)じた。低音ていおん)こえ)うたが)いの余地よち)はない。


方源ほうげん)かた)すく)めて了承りょうしょう)した。


赤城あかしろ)ひや)やかにわら)い、方源ほうげん)悪意あくい)ある)にら)みつけて皮肉ひにく)たっぷりに)った:「しっかり)いて)いよ!」


方源ほうげん)無視むし)した。


「ふん、調子乗ちょうしの)ってんじゃねえよ。ただの一転いってん)風情ふうぜい)が」赤城あかしろ)小声こごえ)つぶや)いたが、赤山あかやま)威圧いあつ)さか)らえず、これ以上いじょう)暴言ぼうげん)ひか)えた。


即刻そっこく)六人ろくにん)のグループがもん))山道やまみち)))はじ)めた。


古月赤山こげつ あかやま)先頭せんとう))る。巨体きょたい)だがあし)はや)い。赤城あかしろ)以外いがい)組員くみいん)男二人おとこふたり)女一人おんなひとり)全員ぜんいん)冷徹れいてつ)表情ひょうじょう))かべている。


はし)つづ)けるなか)赤山小组あかやまこぐみ)精鋭部隊せいえいぶたい)としての実力じつりょく))せつけた。


かく)組員くみいん)呼吸こきゅう)均等きんとう)あし)ぼし)びははや)整然せいぜん)としている。ただ赤城あかしろ)だけが周章狼狽しゅうしょうろうばい)していた。赤丸蛐蛐蛊あかまるこおろぎこ)頻繁ひんぱん)使つか)い、かろ)うじておく)れを)らない程度ていど)祖父そふ)から仕込しこ)まれた訓練くんれん)成果せいか)か、ころ)びはしないものの四苦八苦しくはっく)している。


山麓さんろく))くと、赤山あかやま))信号しんごう)隊列たいれつ)がピタリと停止ていし)


ハアハア……


赤城あかしろ)は300メートルおく)れて到着とうちゃく)青白あおじろ)かお)はげ)しくいき))らせながら、方源ほうげん)不信感ふしんかん)まじりの))た。


方源ほうげん)終始しゅうし)おく)れずにつき、わず)かに呼吸こきゅう)みだ)れる程度ていど)新米あらため)とはおも)えぬ落着おちつ)きぶりだ。


赤城あかしろ)体力たいりょく)管理かんり)わす)れるな」赤山あかやま))り返り一声ひとこえ)かけると、さりげなく方源ほうげん))やった。ひとみ)称賛しょうさん)いろ))かぶ。


ほか)組員くみいん)たちも方源ほうげん)))わず)かにやわ)らかくなった。


「これより獣潮じゅうちょう)圏内けんない)侵入しんにゅう)する。赤城あかしろ)方源ほうげん)隊列中央たいれつちゅうおう)はい)れ」赤山あかやま)前方ぜんぽう)の黒々(くろぐろ)とした山林さんりん)見据みす)えながら指示しじ)した。


この言葉ことば)方源ほうげん)あらた)めて赤山あかやま)観察かんさつ)した。


この大男おおおとこ)には度量どりょう)がある。隊列たいれつ)中央ちゅうおう)は最も安全あんぜん)位置いち)だ。方源ほうげん)漠脈ばくみゃく)もの)ではないのに、赤山あかやま)新人保護しんじんほご)姿勢しせい)くず)さない。病蛇組びょうじゃぐみ)角三かくぞう)くら)べれば、かく)ちが)いが歴然れきぜん)としている。



そらはすっかりくらくなり、あつくもかさなり、もったゆきさえも陰鬱いんうつしずんでいた。


赤山組あかやまぐみ隊形たいけいえ、地形ちけい複雑ふくざつ山林さんりんをゆっくりはしはじめた。


方源ほうげん赤城あかしろ隊列たいれつ中央ちゅうおう位置いち左側ひだりがわには巨漢きょかん赤山あかやま右側みぎがわには老練ろうれん男性だんせい後方こうほうには水色みずいろ長髪ながかみらす女性じょせいがついていた。


最前線さいぜんせんになうのは赤舌あかしたという男蛊師おとここし


偵察役ていさつやくかれは「シュッシュッ」とへびのようなおとはっし、時折ときおりしたしていた。


そのした二股ふたまたかれ、真紅しんく蛇芯へびしんのようになっている。


山林さんりんふかすすむにつれ、周囲しゅうい暴走ぼうそうする野獣やじゅうあらわはじめた。


突然とつぜん赤舌あかした報告ほうこくした:「前方ぜんぽう中型生物ちゅうがたせいぶつ三頭さんとう野鹿のじか可能性かのうせい


らせ」赤山あかやま表情ひょうじょうえず即座そくざ命令めいれいくだした。


六人ろくにん隊列たいれつ進路しんろえず直進ちょくしん三頭さんとう野鹿のじか突進とっしんしてきたが、方向ほうこう転換てんかんさせりになった。


もなく、赤舌あかした顔色かおいろえて警告けいこく:「中型生物群ちゅうがたせいぶつぐん甲羅猿こうらざる可能性かのうせい


迂回うかいせよ」赤山あかやま指示しじ


小組こぐみ即座そくざ左方さほう進路しんろえ、厄介やっかい猿群さるむれけた。


これが偵察手段ていさつしゅだんそなえる利点りてんだ――事前じぜん察知さっちし、適切てきせつ対応たいおう可能かのうになる。



赤舌あかした)使つか)ってるのは蛇信蛊じゃしんこ)だろう。この二転にてん)蛊虫こちゅう)熱量ねつりょう)感知かんち)できる。だがみっ)つの欠点けってん)がある。第一だいいち)感知範囲かんちはんい)せま)い、第二だいに)干渉かんしょう)されやすい、第三だいさん)冷血生物れいけつせいぶつ)検知けんち)できない。でもないよりはマシだ。おれ)二転にてん)になったし、偵察用ていさつよう)蛊虫こちゅう)))れないとな」方源ほうげん)思考しこう)めぐ)らせていた。


突然とつぜん)前方ぜんぽう)赤舌あかした)あせ)ったこえ)さけ)んだ:「中型生物ちゅうがたせいぶつ)一頭いっとう)白虎びゃっこ)可能性かのうせい)やつ)らに気付きづ)かれた! 急接近きゅうせっきん)ちゅう)!」


交戦こうせん)せよ」赤山あかやま)こえ)冷静れいせい)そのものだった。


ガウッ!


真白まっしろ)とら)しげ)みから))してきた。赤舌あかした)事前警告じぜんけいこく)がなければ、小組こぐみ)あわ)てていただろう。


しかしいま)全員ぜんいん)万全ばんぜん)かま)えだ。


右側みぎがわ)老練ろうれん)おとこ)ほお)ふく)らませ、しろ)粘液ねんえき)))した。


粘液ねんえき)空中くうちゅう)急拡大きゅうかくだい)し、蜘蛛くも)巣状すじょう)大網おおあみ))わって白虎びゃっこ)くる)んだ。


あみ)の中で白虎びゃっこ)あば)れる。赤山あかやま)))み、金属光沢きんぞくこうたく)はな)こぶし)虎頭とらあたま)たた)つぶ)した。


パキン! 頭蓋骨ずがいこつ)くだ)け、白虎びゃっこ)絶命ぜつめい)した。


小組こぐみ)一瞬いっしゅん)とど)まらず、とら)死体したい)また)すす)んだ。赤舌あかした)ふたた)先頭せんとう))ち、偵察ていさつ)再開さいかい)


一連いちれん)なが)れはみず)ごと)なめ)らかで、全員ぜんいん)連携れんけい)完璧かんぺき)だった。




前後ぜんご)3びょう)しかかかってない。もしいま)おれ)単独たんどく)とら)たお)すなら、すく)なくとも5ふん)はかかるだろう」方源ほうげん))がきらりとひか)った。


これらの蛊師こし)修為しゅうい)かれ)と同じ二転にてん)だが、おも))蛊虫こちゅう)にある。


彼等かれら)使用しよう)しているのは全て(すべて)二転にてん)蛊虫こちゅう)で、相乗効果そうじょうこうか)発揮はっき)している。一方いっぽう)方源ほうげん)手元てもと)にあるのは依然いぜん)として一転いってん)蛊虫こちゅう)だ。


蛊師こし)という存在そんざい)において、蛊虫こちゅう))先立さきだ)つ。蛊虫こちゅう)有無うむ)実際じっさい)戦闘力せんとうりょく)決定的けっていてき)影響えいきょう)およ)ぼす。


二転にてん)には昇進しょうしん)したが、二転にてん)蛊虫こちゅう)))れなければ真価しんか)発揮はっき)できない。だが元石げんせき)はほとんどのこ)っていない。二転突破にてんとっぱ)大半たいはん)使つい)やしたうえ)蛊虫こちゅう)合成ごうせい)には莫大ばくだい)費用ひよう)がかかる」


方源ほうげん)かんが))んでいると、前方ぜんぽう)赤舌あかした)突然とつぜん)報告ほうこく)した:「病蛇小组びょうじゃこぐみ)発見はっけん)

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