表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
81/551

第八十一節: 二転初段!

足音あしおとちかづくにつれ、急斜面きゅうしゃめんしげみが乱暴らんぼうけられた。巨漢きょかんあらわれると、方源ほうげん視界しかい赤銅あかがねいろ肉体にくたいんできた。


くろ短髪たんぱつはがねはりのように逆立さかだち、はだ上半身じょうはんしんとら背中せなかのようにがっしりしている。身長しんちょうやく二米にメートル晩秋ばんしゅう寒気かんきばすほのおのような存在感そんざいかんだ。


こしにはきつね野兎のうさぎ山鳥やまどり、そしてがした老狼おいおおかみ死骸しがいがぶらがっている。方源ほうげんつけると一瞬いっしゅんまゆうごかし、巨体きょたいかぜってかたわらをとおぎた。


古月赤山こげつ せきざん……」

その背中せなか見送みおくりながら、方源ほうげん記憶きおく辿たどった。あか一脈いちみゃく)代表だいひょう)する二転高階にてんこうかい)蛊師こし)十歳じゅっさい)成人せいじん)奴隷どれい)殴殺おうさつ)十二歳じゅうにさい)石臼いしうす))あそ)怪力かいりき)の持ちぬし)


甲等こうとう))されたが乙等おつとう)判定はんてい)傲慢ごうまん)性格せいかく)から一転いってん)いま)族内ぞくない)最強さいきょう)実戦派じっせんは)か」


巨漢きょかん)かげ)もり))える瞬間しゅんかん)方源ほうげん)くちびる)かす)かにゆが)んだ。

幸福こうふく)真理しんり)おし)えず、苦痛くつう)だけが))智慧ちえ)──このおとこ)こそが)証人しょうにん)だ。


一族いちぞくでは、少年しょうねん十五歳じゅうごさい開竅大典かいきょうたいでん参加さんか学堂がくどうはいる。十六歳じゅうろくさい学堂がくどう卒業そつぎょう五人組ごにんぐみ結成けっせい家族任務かぞくにんむ遂行すいこうする。同時どうじ家産かさん継承けいしょう分家ぶんけ独立どくりつする資格しかくえる十六歳じゅうろくさいから奮闘ふんとうし、修行しゅぎょうすすめ、任務にんむ危険度きけんど上昇じょうしょうさせながら地位ちいたかめてゆく。あるものに、あるもののこる。あるものきずつき修行しゅぎょう後退こうたいし、いきひそめてらす。あるもの試練しれん三転蛊師さんてんこしとなり、家老かろう昇格しょうかく上層部じょうそうぶへとのぼる」


方源ほうげんかすかにひかり、数多あまた連想れんそうあたまめぐった。


蛊師こし修行しゅぎょうすすむほど困難こんなんになり、昇格しょうかく難易度なんいど幾何級数きかきゅうすうてきたかまる。過酷かこく生存環境せいぞんかんきょうあいまって、三転さんてんいたものじつすくない。


「そういえば、まもなくふゆはいる。おれ学堂がくどうてほぼ一年いちねんつ。毎期まいき塾生じゅくせいには二大にだい重要考査じゅうようこうさがある。第一だいいち年中考査ねんちゅうこうさ内容ないよう毎年まいとしことなる。第二だいに年末考査ねんまつこうさ内容ないよう不変ふへん擂臺戦らいだいせんだ。擂臺戦らいだいせんわれば、もう学堂寮がくどうりょうにはめなくなり、さなければならん」


したらどこにむんだ?


方源ほうげん舅父しゅうふ夫婦ふうふ同居どうきょするわけにはいかない。かれらはむしろそれをのぞんでいるだろう。


この世界せかいでは十六歳じゅうろくさい成人せいじんとされ、独立どくりつ年齢ねんれいだ。さらに方源ほうげん自身じしんにもおおくの秘密ひみつがあり、独居どっきょせねばならない。



前世ぜんせ)学堂がくどう))とき)おれ)一転中階いってんちゅうかい)だった。今生こんじょう)では状況じょうきょう))く、きっと一転頂点いってんちょうてん)まで)くだろう。だが丙等資質へいとうししつ)でここまで)るには代償だいしょう)ともな)った。大量たいりょう)元石げんせき))つぶ)した」


方源ほうげん)まゆ)かす)かにしか)めた。手元てもと)元石げんせき)すで)すく)なかった。


資質ししつ)制限せいげん)で、かれ)修行しゅぎょう)消費しょうひ)する元石げんせき)方正ほうせい)赤城あかぎ)漠北ばくほく)らよりはる)かにおお)い。


一人ひとり)六匹ろっぴき)))っている!


さら)酒虫さけむし)精錬せいれん)空竅くうきょう)温養おんよう)白豕蛊はくしこ)ちから)増強ぞうきょう)するなど、全て(すべて)真元しんげん)消費しょうひ)する。丙等資質へいとうししつ)回復速度かいふくそくど)では)いつかず、元石げんせき)から天然真元てんねんしんげん)吸収きゅうしゅう)するしかない。


さいわ)春秋蝉しゅんじゅうせみ)二度にど)地蔵花じぞうか)探索たんさく))煉化れんか)元石げんせき)節約せつやく)できたのがすく)いだった。


だがこれから学堂がくどう))れば、家賃やちん)生活品せいかつひん)購入こうにゅう)必要ひつよう)頂点ちょうてん)たっ)したあと)二転にてん)突破とっぱ)には莫大ばくだい)元石げんせき)がかかる。


二転にてん)))合煉ごうれん)はじ)める。毎回まいかい)高額こうがく)費用ひよう)発生はっせい)する。


現状げんじょう)財政ざいせい)ではすで)限界げんかい)今後こんご)飼育費しいくひ)修行費しゅぎょうひ)かんが)えるとさら)逼迫ひっぱく)する。


年中考査ねんちゅうこうさ)猪牙いのきば)元石げんせき))えていなければ、すで)破綻はたん)していただろう。


元石げんせき)元石げんせき)……花酒行者かしゅぎょうじゃ)継承けいしょう)には元石供給きょうきゅう)がないのがいた)い。同級生どうきゅうせい)から強請ゆす)ったぶん)おも)ささ)えだが、卒業後そつぎょうご)学舎補助がくしゃほじょ)停止ていし)年末考査ねんまつこうさ)一位いちい)百五十個ひゃくごじゅうこ)元石げんせき)かぎ)か……」


この賞金しょうきん))にすれば、巨大きょだい)経済的負荷けいざいてきふか)一時的いちじてき)緩和かんわ)するだろう。


……


ときぎゆき、あきふゆきたる。


学堂がくどう演武場えんぶじょう三基さんき擂臺らいだいげられていた。擂臺らいだいかたわら、竹垣たけがき沿いにしつらえられた小屋こやには長机ながづくえ肘掛ひじか椅子いすならべられていた。


学堂家老がくどうかろう族長ぞくちょうほか家老かろうたちが小屋こやなか着席ちゃくせきしている。そらからは小雪こゆきっていた。


五十七人ごじゅうしちにん塾生じゅくせい演武場えんぶじょうぼうのように直立ちょくりつしていた。鼻先はなさきさむさでまり、いきごとにしろ湯気ゆげがる。


学堂家老がくどうかろうとどろくようなこえ言下げんかした。「一年いちねんまたたく間にわりをげた。諸君しょくん蛊師こしとしての素養そようけた。明日あす年末擂臺考ねんまつらいだいこうでは族長ぞくちょう家老かろう御前ごぜん実力じつりょく)披露ひろう)せよ! 優秀ゆうしゅう)もの)各小組かくしょうそ)から勧誘かんゆう)される」


首位しゅい)には百五十元石ひゃくごじゅうげんせき)褒賞ほうしょう)くわ)え、蛊虫こちゅう)優先選択権ゆうせんせんたくけん)あた)えられる! では最後さいご)修力検測しゅうりょくけんそく)はじ)める!」


合図あいず))けた中年ちゅうねん)女性蛊師じょせいこし)名簿めいぼ)))り、最初さいしょ))))げた。「古月金珠こげつ きんじゅ)!」


一人ひとり)少女しょうじょ)緊張きんちょう)した面持おもも)ちでれつ)はな)れ、蛊師こし)まえ)すす))た。


蛊師こし)))ばし、少女しょうじょ)はら))れる。))じてかん))ったあと)宣告せんこく)した。「古月金珠こげつ きんじゅ)一転中階いってんちゅうかい)つぎ)古月鵬こげつ ほう)


次々(つぎつぎ)に少年しょうねん)たちが検測けんそく))け、表情ひょうじょう))えながられつ)もど)っていく。


最低さいてい)成績せいせき)例外れいがい)なく丁等資質ていとうししつ)もの)たちの一転初階いってんしょかい)大多数だいたすう)一転中階いってんちゅうかい)で、そのなか)でも丙等へいとう)おも)だった。


古月赤城こげつ あかぎ)中年ちゅうねん)女蛊師こし)))ぶ。


同年輩どうねんぱい)最年少さいねんしょう)赤城あかぎ)むね))って)てきた。検測けんそく))え、女蛊師こし)))けた。「古月赤城こげつ あかぎ)一転頂点いってんちょうてん)!」


これまでではじ)めての頂点ちょうてん)到達者とうたつしゃ)に、小屋こや)家老かろう)たちがかる)うなず)いた。


古月赤練こげつ せきれん)まご)だ。乙等資質おつとうししつ)なら当然とうぜん)か」とだれ)かがつぶや)いた。


そと)では少年しょうねん)たちがささや))う。

赤城あかぎ)頂点ちょうてん)なら、漠北ばくほく)はどうだ? あの二人ふたり)犬猿けんえん)なか)だぜ」

頂点ちょうてん)まで)けるのは乙等おつとう)甲等こうとう)だけさ。丙等へいとう)丁等ていとう)みじ)めな連中れんちゅう)には無理むり)だよ」


「フン!」古月漠北こげつ ばくほく)赤城あかぎ)得意満面とくいまんめん)かお))はら))たせた。


古月方正こげつ ほうせい)こぶし)にぎ))め、くちびる))んであつ)なに)かをこら)えているようだった。


古月漠北こげつ ばくほく検測員けんそくいん)こえ)早速さっそく)ひび)いた。


馬面うまづら)漠北ばくほく)素早すばや)ある))す。


古月漠北こげつ ばくほく)一転頂点いってんちょうてん)!」宣告せんこく))きながら赤城あかぎ)挑戦的ちょうせんてき)視線しせん))げつけ、れつ)もど)っていった。


検測けんそく)つづ)なか)そら)から)ゆき)次第しだい)ほそ)くなり、つい))んだ。つめ)たく)んだ空気くうき)))める。


古月方源こげつ ほうげん)中年ちゅうねん)女蛊師こし)))ぶ。


方源ほうげん)無表情むひょうじょう)のまますす))た。


しばら)くして女蛊師こし))見開みひら)き、意外いがい)そうにかれ)見渡みわた)す。「古月方源こげつ ほうげん)一転頂点いってんちょうてん)!」


頂点ちょうてん)だと? )間違まちが)いか?」少年しょうねん)たちが騒然そうぜん)となる。「酒虫さけむし)空竅くうきょう)温養おんよう)してるからさ。丙等へいとう)でも乙等おつとう))けてないんだ」嫉妬しっと)()じりのこえ))れる。


おな)丙等へいとう)少年しょうねん)たちは)っぱいわら)いを)かべる。「二転にてん)真元しんげん)精錬せいれん)できねえから、そのうち)優位性ゆういせい))えるさ」


漠北ばくほく)赤城あかぎ)方源ほうげん)一瞥いちべつ)するや、すぐ視線しせん)列中れつなか)のこ)方正ほうせい)うつ)した。


甲等こうとう)資質ししつ)を持つ方正ほうせい)こそがしん)競争相手きょうそうあいて)──彼等かれら)脳裏のうり)きざ)まれた確信かくしん)だった。



あにさん、まさかここまでとは……だがつぎこそ、よくててくれ」方正ほうせい方源ほうげんりてくる姿すがたを炯々(けいけい)とした見守みまもり、期待感きたいかんあふれた表情ひょうじょうかべていた。


古月方正こげつ ほうせい女蛊師おんなこしこえおくれてひびいた。


「あの甲等こうとう天才てんさいか?」家老かろうたちの視線しせん一斉いっせい方正ほうせいあつまる。


方正ほうせいれつすと、おも視線しせん圧力あつりょくかすかに緊張きんちょうはしった。


しかし族長ぞくちょう古月博こげつ ひろし微笑ほほえみを瞬間しゅんかん、その緊張きんちょう氷解ひょうかいした。


女蛊師おんなこしまえつと、彼女かのじょじたのち瞠目どうもくしてさけんだ。「古月方正こげつ ほうせい修為しゅうい――二転初階にてんしょかい!」


ザワザワッ!


少年しょうねんたちから驚愕きょうがくこえがる。

なに二転にてんたっしただと?!」

流石さすが甲等こうとう天才てんさい!」

「これで漠北ばくほく赤城あかぎ方源ほうげんかされたな」

「この方正ほうせいめ!」漠北ばくほく赤城あかぎ呆然ぼうぜん見詰みつめる。


「フフフ……前世ぜんせより一歩いっぽうえってやがる」方源ほうげんまつげせてわらった。かれすで方正ほうせい様子ようすから結果けっかさっしており、おどろきはなかった。


甲等こうとう資質ししつ本當ほんとうに……」

ぞく希望きぼうよ」

族長様ぞくちょうさま育成力いくせいりょくあってこそ」


家老かろうたちの賞賛しょうさんなか方正ほうせい一瞬いっしゅん主役しゅやくとなった。


半年前はんとしまえ古月博こげつ ひろしからさずかった玉皮蠱ぎょくひこもって、かれ二転にてん昇格しょうかく第一人者だいいちにんしゃとなったのだ。



族長様ぞくちょうさま)わたし)期待きたい)裏切うらぎ)りませんでした! これからもっとみと)められます。諸家老しょかろう)さま)信頼しんらい)も、周囲しゅうい)評価ひょうか)))ります。あに)さん、もう))したんだ。もうこころ)かげ)じゃない! この古月方正こげつ ほうせい)むかし)自分じぶん)じゃない!」


方正ほうせい)ひとみ)かがや)かしいひかり)はな)っていた──その光彩こうさい)こそが

自信じしん)」です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ