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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第六十六節:人の死など豚の屠殺場の匂い

せだと?」方源ほうげん嘲笑あざわらうようにてのひらるうと、


シュッ!


幽青ゆうせい月刃げつじん飛翔ひしょうする。あし地面じめんり、四人よにん獵師りょうし突進とっしんした。


蠱師こしだ!?」獵師りょうし一人ひとり悲鳴ひめいげる。


バラバラにらばるかれらの背中せなか月刃げつじん


ズバッ!


おくれたおとこ右前腕みぎぜんわん切断せつだんされ、地面じめんころがる。「うわあああっ!!」


まった左手ひだりて傷口きずぐちさえながら、おとこつちうえもだくるしむ。


ゆるしてください!」

悪気わるぎはなかったんです!」


のこ二人ふたり土下座どげざしてひたい地面じめんける。


「ふん!こしけどもが!蠱師見習こしみならいごときでふるえてるのか!?」王二おうにだけがくし、ゆみ素早すばやかまえた。「まれ!つぎはなつぞ!」


「ほう……」方源ほうげんほそめる。凡人ぼんじんながら蠱師こしおそれぬ胆力たんりょく――このおとこすこ手強てごわそうだ。


シュッ!

もう一発いっぱつ月刃げつじん王二おうにかってぶ。


「いい加減かげんにしろ」王二おうにつめたいわらいをらし殺気さっきほとばしらせる。


あしすべらせるように月刃げつじんかわし、はなった。


ビュン!

矢先やさき方源ほうげん眉間みけんせまる。


方源ほうげんひくしず回避かいひ、そのままもうスピードで王二おうに接近せっきんしていく。


王二おうにゆみて、茶碗ちゃわんほどのこぶしりかぶった。「い!」


かれ背丈せたけ方源ほうげんより半身はんしん以上いじょうたかく、逆光ぎゃっこうかおかげしずむ。そのくらがりからおおかみのような眼光がんこうするどひかっていた。


「やめて!」

「やめろってば!」

仲間なかまさけびをよそに、二人ふたり距離きょり一気いっきまる。


ね!」王二おうに横顔よこがおゆがみ、左右さゆうこぶし暴風ぼうふうのようにおそいかかる。


ヒューッ!

空気くうきおも拳音こぶしおと


方源ほうげんひとみせまこぶし。その瞬間しゅんかんあしうらすべらせるようにからだひねった。


サッ!


紙一重かみいちえこぶしかわし、王二おうに左側ひだりがわまわむ。


あまいぞ!」王二おうにぎゃくこぶし横薙よこなぎぎをはなち、背中せなかねらう。


その刹那せつな逆光ぎゃっこう王二おうに両目りょうめつらぬいた。「うわっ!?」視界しかいしろまる。


方源ほうげん空中くうちゅう側転そくてんし、第三だいさん月刃げつじんはなつ。


王兄おうにいあぶない!」


ひざまずいていた二人ふたりいきむ。まぶしい陽光ようこうかれらのかお蒼白そうはくらしす。


時間じかん粘液ねんえきのようにおそながれる。白熱はくねつした背景はいけいかぶ王二おうにのシルエットがゆみなりにかえり、月刃げつじんけようとくびかたむける。


幽青ゆうせいやいば蝸牛かたつむりごと空中くうちゅうただよい、ゆるやかに黑影こくえいをすりけていく。


「……たってない……?」

せた王二おうにからだ外傷がいしょうえない。



「ふぅ……」わか獵師りょうし一人ひとりむねおりした。


けた……!」もう一人ひとり内心ないしん歓喜かんきしていた。


その瞬間しゅんかん黒影こくえい頭部とうぶかすかにらぎ――真紅しんく液体えきたい飛散ひさんした。


幽青ゆうせい月刃げつじんくうけていくなか王二おうにからだ枯葉かれはのようにした。


二人ふたりひとみはりさきのようにちぢんだ。くち次第しだいひらき、最大限さいだいげんまでけるようにひろがった。


パチリ。


生温なまぬる液体えきたいほおつたう。れれば――


……!?」


現実げんじつきゅうもどってきた。小川おがわのせせらぎ、仲間なかま断末魔だんまつま悲鳴ひめいみみんでくる。


王兄おうにい――!?」こえふるえる。かれらにとって不敗ふはいのリーダーだった。


んだ……」もう一人ひとりうめく。顔色かおいろつちのようにせる。


「さっきまで冗談じょうだんってたのに……!」

蠱師こしさまさからうなんておろかだった……」


二人ふたりひざまずいたまま石像せきぞうのように硬直こうちょくし、恐怖きょうふまれていた。



方源ほうげん地面じめんからがった。王二おうにこぶしけるための空中側転くうちゅうそくてんでバランスをくずし、月刃げつじんはなったあと転倒てんとうしていたのだ。


「このひねりは価値かちがあった」かたかるいた以外いがい無傷むきず。もしあのこぶしらってたら、十五歳じゅうごさいからだでは即嘔血そくおうけつだったろう。


王二おうに、あの漠家ばくけ豪奴ごうど高碗こうわんよりつよかった。普通ふつう生徒せいとならけてたな。一転高階いってんこうかい蠱師こしでも油断ゆだんすればやられる」


死体したいながめながら、方源ほうげん分析ぶんせきする。一転期いってんき蠱師こしにとって、凡人ぼんじん武芸者ぶげいしゃ依然いぜん脅威きょういたりる。


精度せいど月刃げつじんみ。射程距離しゃていきょりならゆみうわだ。肉弾戦にくだんせんでも凡人ぼんじんきわみにたっしてた」


普通ふつう生徒せいとなら確実かくじつだが、王二おうに不運ふうん方源ほうげんてきまわしたことだ。


ゆみ背負せおってるのを時点じてんで、遠距離戦えんきょりせん不利ふり判断はんだんした」月刃げつじん有効射程ゆうこうしゃてい10メートルにたいし、ゆみはるかにながい。


接近戦せっきんせん作戦さくせんだ」方源ほうげん意図的いとてき肉薄にくはくよそおい、王二おうにゆみ放棄ほうきんだのだ。



だが方源ほうげん肉弾戦にくだんせんのぞまなかった。角度かくど陽光ようこう巧妙こうみょう利用りようし、王二おうにすきつくし、第三だいさん月刃げつじんはなったのだ。


中階ちゅうかい昇格しょうかくし、酒虫しゅちゅう精錬せいれんした真元しんげん使つかえば、高階こうかい蠱師こしみの攻撃力こうげきりょくだ」至近距離しきんきょり視界しかいうばわれた王二おうにけられるはずもない。


「あのおとこ本当ほんとうつよかった……くびねるつもりだったが、危機きき一髪いっぱつ感覚かんかくたよりに半身はんしんかわした」脳天のうてん半分はんぶんがれた王二おうに死体したい見下みおろしながら、方源ほうげんおもう。


生存せいぞんか――それが自然しぜん摂理せつりだ。万物ばんぶつ平等びょうどうきる権利けんりち、ひとしくにゆく。生きているあいだ貴賤きせんがあっても、まえでは人間にんげんぶたわらない。ただ『死』という事実じじつだけが存在そんざいする」


最後さいご王二おうに亡骸なきがらつめ、方源ほうげんこころそこかすかな嘆息たんそくらした。

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