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蛊真人  作者: 魏臣栋
青茅山
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第六十一節:草繩上の人生

まぶ朝日あさひ青茅山せいぼうざんらしした。

学堂がくどう家老かろう詳細しょうさい解説かいせつしていた:「明日あしたから第二だいにえら煉化れんかする。各自かくじ自身じしん修行しゅぎょう特性とくせい考慮こうりょし、本命蠱ほんめいことの連携れんけい最優先さいゆうせんにせよ」


本命蠱ほんめいこ蠱師こし基盤きばんとなり、第二だいに以降いこう修行しゅぎょう方向性ほうこうせい決定けっていする。


生徒せいとたちが深刻しんこくに考えなか方源ほうげんだけがつくえしてぐうぐうと寝息ねいきを立てていた。昨夜さくや探索たんさく空竅くうこう温養おんよう徹夜てつやしたため、明けあけがたにようやく就寝しゅうしんしたのだった。


家老かろう方源ほうげん一瞥いちべつまゆせたが、なにわなかった。族長ぞくちょう古月博こげつはく指示しじ以来いらい方源ほうげんに対して放任主義ほうにんしゅぎつらぬいていた。


「どのえらぼう?」多くの生徒せいとおもわず方源ほうげんた。

方源ほうげんすで第二だいにってるよな」

酒虫しゅちゅうだって!解石かいせきるなんてちょうラッキー!」

おれ酒虫しゅちゅうってたら中階ちゅうかい昇格しょうかくできたのに」


羨望せんぼう嫉妬しっと教室きょうしつ渦巻うずまく。審問しんもん酒虫しゅちゅう存在そんざいるみなり、族内ぞくない方源ほうげん幸運こううん驚嘆きょうたんしていた。


古月赤城こげつせきじょうこぶしにぎめた:「丙等へいとう同士どうしなのに…祖父そふさがまわってもはいらなかった酒虫しゅちゅうを!」


一方いっぽう副班頭ふくはんとう古月方正こげつほうせいかがやかせていた。「兄貴あにきかならす」ほお紅潮こうちょうさせ、足取あしどりもかるやかだった。


家老かろうはその変化へんか見逃みのがさなかった。族長ぞくちょう個別指導こべつしどうはじまったあかしだ。表立おもてだっては指摘してきせず、黙認もくにんするしかない。


学堂家老がくどうかろうはこのけんをつぶっていた。

よるけると、方源ほうげんふたた岩裂いわさけの秘洞ひどうもぐんだ。


チリンチリン……

片手かたてあばれる野兎のうさぎつかみ、くびむすんだすずがきらきらおとを立てていた。やまらえた野兎のうさぎみずかすずけたのだ。


一日いちにちつと秘洞ひどうよどんだ空気くうき完全かんぜんれ、清々(すがすが)しいかぜながれていた。とおみちぐちひらり、不気味ぶきみ静寂せいじゃくひろがっている。方源ほうげんはしゃがみみ、昨夜さくやいたうす石粉いしこ状態じょうたい確認かくにんした。


とおみち石粉いしこ無傷むきず。ここに不審物ふしんぶつ出没しゅつぼつしてないな。ぐち足跡あしあとおれのだ。だれてないようだ」


かべづるつかり、地面じめんすわる。野兎のうさぎ太腿ふとももさえ込み、両手りょうてつるはじめた。


普通ふつう蠱師こしならやらない作業さぎょうだ。だが前世ぜんせ幾度いくど貧窮ひんきゅうした方源ほうげんは、餓死がし真元しんげんだけのこった地獄じごくの日々(ひび)をおぼえていた。


草鞋わらじ作りで糊口ここうしのいだあのころか……」くちびる苦笑ほほえみをかべながら、ふたたすずおと邪魔じゃまされる野兎のうさぎせいした。


一双両好纏綿久いっそうりょうこうてんめんひさ

万転千回繾綣多まんてんせんかいけんけんおお


こまやかに、着実ちゃくじつに、幾年月いくとせつきかさねたような手付てつき。がり、からい、まるなわうごきそのものが、人生じんせいそのものだとさとった。



秘洞ひどうないではあかにぶひかりれ、わかさと老練ろうれん方源ほうげんかお交錯こうさくしていた。


時間じかんさえもここでまったかのように、少年しょうねん草縄くさなわようしずかに見守みまもっている。


チリンチリン……

半刻はんとき野兎のうさぎすずらしながら通路つうろんだ。またたく間に視界しかいからえ、方源ほうげん即席そくせきつくった草縄くさなわ後足あとあしからび、急速きゅうそくきずられていった。


やがてなわうごきがまった。

通路つうろおくいたか、それともわなにかかったか」


方源ほうげんなわはじめると、反対側はんたいがわから抵抗ていこうつたわってきた。野兎のうさぎおどろいてふたた暴走ぼうそうし、なわされる。


三度さんどかえすうち、なわゆるんだりったりするだけになった。「もう限界げんかいか、それともうごけなくなったか」


たしかめる方法ほうほう簡単かんたんだ。

力任ちからまかせにきずりすと、草縄くさなわれた酒袋花蠱しゅたいかこ飯袋草蠱はんたいそうこつくられており、野兎のうさぎあばれてもれなかった。


きずなし……安全あんぜんのようだ」

確認かくにんした方源ほうげん野兎のうさぎくびひねつぶし、岩陰いわかげほうげた。放生ほうせいすれば記憶きおくたよりにふたたもどり、酒虫しゅちゅうまいになる危険きけんがあるからだ。


ふかいきんだあと方源ほうげん慎重しんちょう通路つうろあしれた。


野兎のうさぎ使つかった事前じぜん調査ちょうさても、人間にんげん専用せんようわなのこっている可能性かのうせいがある。小動物しょうどうぶつでは作動さどうしない仕掛しかけだ。


通路つうろ直線的ちょくせんてき地底ちていかい、すすむほどはばひろがっていく。最初さいしょこしかがめてすすんだが、五十歩ごじゅっぽぎると背筋せすじばせ、百歩ひゃっぽうでまわせるほどになった。


たった三百米さんびゃくメートル距離きょりだが、方源ほうげん二時間にじかんもかけてようやく最奥さいおく到達とうたつした。


偵測用ていそくようがないと、本当ほんとう面倒めんどうだ」ひたいつめたいあせぬぐいながら、周囲しゅうい観察かんさつする――その瞬間しゅんかんいきんだ。


巨大きょだい一枚岩いちまいいわふさいでいた。表面ひょうめんなめらかでふくらみ、賈富かふの丸々(まるまる)としたはらのようだ。


中程なかほど崩落ほうらくしたのか?」山体さんたい内部ないぶ急造きゅうぞうされた通路つうろが、数百年すうひゃくねん歳月さいげつれなかったのだろう。


かれ前進ぜんしんし、いしでてみた。「このあつさなら……月光蠱げっこうこけずるにも一、二年いちにねんかかる」


人生じんせいつね予期よきせぬ障害しょうがいげかけてくる。


工具こうぐ使つかって鉄鎬つるはしやシャベルでいわるしかないか。ただ、そうすりゃ痕跡こんせきのこっちまう。おとれるだろう」方源ほうげん眉根まゆねふかきざんだ。リスクと利益りえき天秤てんびんにかけていた。


リスクが大きおおぎれば、このちから継承けいしょうあきらめる覚悟かくごもあった。


「バレたらいままでの苦労くろうみずあわだ。いのちまであやうくなる」

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