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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百四十九節:谋算艰难生不易

()れは一基(いっき)(とう)である。


()(かたち)(はる)(たけのこ)(ごと)く、()()ぐに(そび)()ち、()せて(するど)い。塔身(とうしん)はぼんやりと(かす)み、七色(なないろ)(かがや)いて、(あた)かも塔楼(とうろう)(かたち)をした彩色(さいしき)液体(えきたい)が、()()なく()らめいているかのようである。


()れが八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)初形(しょけい)である。(そと)吹雪(ふぶき)万里(ばんり)()(くる)い、(ゆき)北原(ほくげん)(おお)(とき)王庭福地(おうていふくち)(ない)無数(むすう)小塔(しょうとう)地中(ちちゅう)(しず)み、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(そう)()ねて安定(あんてい)する。()(とき)こそ、内部(ないぶ)(すす)探検(たんけん)することが可能(かのう)となるのだ。」


方源(ほうげん)宿泊所(しゅくはくしょ)入口(いりぐち)()ち、天井(てんじょう)方向(ほうこう)(あお)()つつ、淡々(たんたん)と()べた。


此時(このとき)聖宮(せいきゅう)(ない)歓喜(かんき)驚嘆(きょうたん)(つつ)まれていた。蛊師(こし)たちは(おど)()がって歓声(かんせい)()げ、数多(あまた)凡人(ぼんじん)地面(じめん)(ひざまず)き、五体(ごたい)(とう)じて巨陽仙尊(きょようせんそん)偉大(いだい)さを(たた)(さけ)んでいた。


「しかし(たと)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)完成形(かんせいけい)となろうとも、()れは()ることはできぬ。何故(なぜ)なら()れは巨陽仙尊(きょようせんそん)後裔(こうえい)ではなく、()血脈(けつみゃく)()たぬからだ。(なか)()るには、黒楼蘭(こくろうらん)来客令(らいきゃくれい)取得(しゅとく)する必要(ひつよう)がある。(あせ)必要(ひつよう)はない。真陽楼(しんようろう)()(ほど)易々(ようよう)と(ちん)れるものか?黒楼蘭(こくろうらん)(おそ)かるとも(はや)かるとも、()(ごと)外援(がいえん)必要(ひつよう)とする(とき)()るだろう。」


片刻(はっかん)(のち)方源(ほうげん)視線(しせん)()(おさ)め、(ふたた)住居(じゅうきょ)へと(もど)った。


()(ちい)さな殿舎(でんしゃ)大門(だいもん)(かた)()ざすと、門外(もんがい)歓声(かんせい)(ただ)ちに(よわ)まった。


専用(せんよう)修行密室(しゅぎょうみっしつ)到着(とうちゃく)し、方源(ほうげん)蒲团(ふとん)端坐(たんざ)した。


()現在(げんざい)二大空竅(にだいくうこう)は、(すで)五转巅峰(ごてんてんぽう)昇進(しょうしん)している。奴道(どどう)方面(ほうめん)には天青狼群(てんせいろうぐん)がおり、力道(りきどう)方面(ほうめん)には殺招(さっしょう)四臂風王(しひふうおう)がある。()れに()戦闘経験(せんとうけいけん)()わせれば、凡人(ぼんじん)としっては最高峰(さいこうほう)()えよう。しかし蛊仙(こせん)対処(たいしょ)するには……」


方源(ほうげん)眉間(みけん)(おもむ)ろに(しわ)()せていった。


(かれ)仙凡(せんぼん)(あいだ)(よこ)たわる巨大(きょだい)(へだ)たりを(つう)(ほど)理解(りかい)していた。(ぼん)をもって(せん)(たい)するは、(てん)(のぼ)るが(ごと)(むずか)しい。


(いま)(かれ)にとって(もっと)(のぞ)ましい状況(じょうきょう)は、太白云生(たいはくうんせい)脳裏(のうり)(すで)に「江山如故(こうざんじょこ)」の仙蛊方(せんこほう)(きざ)まれていることだ。


方源(ほうげん)北原(ほくげん)外界(がいかい)では(うご)(にく)いが、将来(しょうらい)八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(なか)()()すのは(きわ)めて容易(ようい)である。蛊虫(こちゅう)利用(りよう)して、太白云生(たいはくうんせい)から江如故(こうじょこ)山如故(さんじょこ)二蛊(にこ)(うば)()り、(さら)には仙蛊方(せんこほう)()(あたま)から(ぬす)()せばよい。


()(よう)条件(じょうけん)(そろ)えば、方源(ほうげん)完全(かんぜん)盤上(ばんじょう)()()し、(いま)(せん)()らざる太白云生(たいはくうんせい)抹殺(まっさつ)した(うえ)で、琅琊地霊(ろうやちれい)への第三(だいさん)(ねが)(ごと)利用(りよう)し、(かれ)江山如故蛊(こうざんじょここ)煉製(れんせい)させることができる。


(しかし)れども、一介(いっかい)凡人(ぼんじん)()ぎない太白云生(たいはくうんせい)脳裏(のうり)に、江山如故(こうざんじょこ)仙蛊方(せんこほう)存在(そんざい)する可能性(かのうせい)は、(きわ)めて(かす)かなのである。


(さらに)に、前世(ぜんせ)(かす)かな伝聞(でんぶん)()れば、江山如故(こうざんじょこ)誕生(たんじょう)したのは、(かれ)蛊仙(こせん)()った(とき)天地(てんち)感応(かんのう)し、道紋(どうもん)(あい)()()った結果(けっか)二匹(にひき)()自発的(じはつてき)合体(がったい)して仙蛊(せんこ)()ったためだという。


方源(ほうげん)生来(せいらい)慎重(しんちょう)性格(せいかく)で、(けっ)して(すべ)ての希望(きぼう)(はかな)未来(みらい)(たく)すことはしない。


()最悪(さいあく)状況(じょうきょう)となれば、()れは蛊仙(こせん)()った太白云生(たいはくうんせい)対峙(たいじ)せねばなるまい。()(とき)(たよ)りにできるのは(おのれ)のみである。天青狼群(てんせいろうぐん)にしろ四臂風王(しひふうおう)にしろ、(あき)らかに不十分(ふじゅうぶん)である。」


方源(ほうげん)実力(じつりょく)は、(すで)凡人(ぼんじん)頂点(ちょうてん)(たっ)している。奴道(どどう)力道(りきどう)二道(にどう)兼修(けんしゅう)しているとはいえ、最大(さいだい)難題(なんだい)(いま)解決(かいけつ)されていない。(しか)(なが)ら、(かれ)五转强者(ごてんきょうじゃ)(なか)でも第一流(だいいちりゅう)(いき)にあるのである。


南疆(なんきょう)()けば、()れは商家(しょうか)天才族長(てんさいぞくちょう)商燕飛(しょうえんひ)や、武家(ぶか)族長(ぞくちょう)武姫娘娘(ぶきじょうじょう)同格(どうかく)人物(じんぶつ)という(わけ)だ。


前世(ぜんせ)経験(けいけん)転生(てんせい)利点(りてん)()かし、一連(いちれん)冒険(ぼうけん)生死(せいし)(さかい)での数多(あまた)葛藤(かっとう)()て、方源(ほうげん)高速成長(こうそくせいちょう)天下(てんか)驚愕(きょうがく)させるに()りる。


しかし()実力(じつりょく)では、蛊仙(こせん)(たい)しては、(たと)昇進(しょうしん)したばかりの蛊仙(こせん)(いえど)も、(まった)()()たない。


眼前(がんぜん)()大難題(だいなんだい)解決(かいけつ)するには、(ふた)つの方法(ほうほう)()()よう。」


第一(だいいち)は、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)探索(たんさく)し、其処(そこ)から強力(きょうりょく)蛊虫(こちゅう)(ある)いは独特(どくとく)手段(しゅだん)()()()すこと。」


第二(だいに)は、(ひそ)かに準備(じゅんび)(ととの)え、太白云生(たいはくうんせい)(たい)する謀略(ぼうりゃく)()り、実際(じっさい)()(くだ)()(とき)(そな)え、十分(じゅうぶん)準備(じゅんび)(ととの)えることである。」


方源(ほうげん)(しず)かに計算(けいさん)(めぐ)らせていた。


(かれ)(こころ)(うち)でよく()かっている。四臂風王(しひふうおう)殺招(さっしょう)は、(すで)(かれ)前世(ぜんせ)蓄積(ちくせき)使()()たしてしまったことを。何故(なぜ)なら、(かれ)前世(ぜんせ)得意(とくい)としたのは血道(ちどう)であり、奴道(どどう)力道(りきどう)はあくまで副次(ふくじ)的なものに()ぎなかったからだ。


蛊仙(こせん)(はか)布局(はいきょく)手段(しゅだん)(しょう)するものも、()大半(たいはん)表立(おもてだ)って使(つか)える代物(しろもの)ではなく、()てにはならない。方源(ほうげん)前世(ぜんせ)蛊仙(こせん)への昇進(しょうしん)()()げた経験(けいけん)から、凡人(ぼんじん)蛊仙(こせん)へと変貌(へんぼう)する(さい)には、(あたま)のてっぺんから(あし)(さき)まで、(うち)から(そと)へと(あら)われるような洗礼(せんれい)()け、容貌(ようぼう)さえも()わり()てることを()っている。(まこと)期待(きたい)()せるべきは、八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)以外(いがい)にないのだ!


日々(ひび)が()()(なか)天空(てんくう)では金色(こんじき)(ひかり)銀色(ぎんいろ)(かがや)きが交互(こうご)(うつ)()わる。


八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(いま)成熟(せいじゅく)過程(かてい)にあり、虹色(にじいろ)(かすみ)次第(しだい)()くなり、最終的(さいしゅうてき)には聖宮(せいきゅう)大半(たいはん)()光彩(こうさい)(なか)(つつ)()んだ。


王庭福地(おうていふくち)(なか)では(とり)(さえず)りと(はな)(かお)りが(ただよ)い、(きよ)らかな(かぜ)がそよぐ。一方(いっぽう)(そと)北原(ほくげん)では、一ヶ(いっかげつ)以上(いじょう)大雪(おおゆき)()(つづ)いている。


暴風雪(ぼうふうせつ)()(くる)い、(はだ)()すような寒風(かんぷう)()(すさ)び、大雪(おおゆき)()()る。


(そら)大地(だいち)()(しろ)(かす)み、視界(しかい)はぼんやりとしている。


木々(きぎ)はとっくに()()て、一本(いっぽん)一本(いっぽん)が氷の(はしら)()している。(おか)(やま)(あつ)(ゆき)(ころも)(つつ)まれ、谷間(たにま)(ふか)()もった(ゆき)()もれている。


(けもの)()れは無数(むすう)()に、生命力(せいめいりょく)(つよ)雑草(ざっそう)でさえ、(しも)(こお)りついて(こおり)(かたまり)となっている。


(ひと)(つば)一口(ひとくち)()()せば、(またた)く間に(こおり)(かたまり)()わってしまう。


しかし(てん)(ひと)(みち)()やさず、冥々(めいめい)の(なか)に、(かなら)一筋(ひとすじ)活路(かつろ)(のこ)すものである。


北原(ほくげん)各所(かくしょ)には、大小(だいしょう)様々(さまざま)な部族(ぶぞく)(いのち)をつないでいる。暖沼谷(だんしょうこく)のような地利(ちり)()かして猛吹雪(もうふぶき)()え、苛烈(かれつ)気候(きこう)(なか)()とか(いき)()(かえ)しているのだ。


紅炎谷(こうえんこく)(よう)する蛮家部族(ばんかぶぞく)も、()(ひと)つである。


議事堂(ぎじどう)


家老(かろう)たちが両側(りょうがわ)整列(せいれつ)し、蛮家(ばんか)族長(ぞくちょう)蛮図(ばんと)上座(じょうざ)(しず)まる。


三转外姓家老(さんてんがいせいかろう)石武(せきぶ)(ひざまず)いて(もう)()げる。「族長(ぞくちょう)(さま)配下(はいか)石武(せきぶ)御免(ごめん)()(たてまつ)る。」


「おや、石武(せきぶ)(なん)(つみ)があるというのか?」蛮図(ばんと)微笑(ほほえ)みながら()()ける。


族長様(ぞくちょうさま)御報告(ごほうこく)(もう)()げます。此方(こちら)管理(かんり)(まか)されておりました丁字号元泉(ていじごうげんせん)が、昨日起(きのうお)こりまして突然(とつぜん)(こお)()()()て、(まった)くの廃墟(はいきょ)()してしまいました。」石武(せきぶ)(うやうや)しい口調(くちょう)(こた)えた。


呵呵(かか)(かま)わぬ。」


蛮図(ばんと)(かる)()()った。(じつ)(かれ)はとっくに()(しら)せを承知(しょうち)していたのである。


石武家老(せきぶかろう)()()がれ。(いま)十年(じゅうねん)一度(いちど)大災害(だいさいがい)最中(さいちゅう)だ。元泉(げんせん)突然(とつぜん)凍結(とうけつ)枯渇(こかつ)する可能性(かのうせい)もある。()れは貴様(きさま)落度(おちど)ではない。」


族長様(ぞくちょうさま)(ひろ)きお(こころ)に、只々(ただただ)恐縮(きょうしゅく)(いた)りで御座(ござ)います!」


石武(せきぶ)感激(かんげき)(むせ)様子(ようす)()せつつ、内心(ないしん)では(むね)()()ろした。


(かれ)(せき)(せい)()ち、蛮家(ばんか)にとっては(なか)余所者(よそもの)であった。(たと)蛮家(ばんか)(おんな)(つま)(むか)えたと(いえ)も、(つね)疎外感(そがいかん)(おぼ)えていた。


(かれ)管理(かんり)(まか)されていた元泉(げんせん)問題(もんだい)(しょう)じたことは、大問題(だいもんだい)にも小事(しょうじ)にも()()た。(さいわ)い、当代(とうだい)蛮家(ばんか)族長(ぞくちょう)()開明(かいめい)(きみ)であり、追及(ついきゅう)することは()かった。



元泉(げんせん)(けん)は、(しか)(ぞく)大事(だいじ)である。蛮多(ばんた)()族内(ぞくない)には(いま)幾口(いくくち)元泉(げんせん)(のこ)っているか?」


蛮図(ばんと)(かす)かに(まゆ)をひそめて()()けた。


蛮多(ばんた)蛮図(ばんと)三男(さんなん)で、痩身(そうしん)小柄(こがら)ながら狡知(こうち)()け、(ちち)補佐(ほさ)して族内(ぞくない)事務(じむ)処理(しょり)していた。


(かれ)(ただ)ちに(こた)えた。「父上(ちちうえ)(げん)(ざい)紅炎谷(こうえんこく)には(こう)(おつ)(へい)()()(こう)(しん)七口(ななくち)元泉(げんせん)御座(ござ)います。()(うち)(こう)(しん)二泉(にせん)は元々(もともと)枯渇(こかつ)寸前(すんぜん)であり、(のち)一ヶ(いっかげつ)とも()たないでしょう。」


「ふむ。」蛮図(ばんと)(うなず)いた。「つまり一月(いちげつ)()には、(こう)(おつ)(へい)()()五口(ごくち)だけとなる(わけ)だ。諸家老(しょかろう)如何(いか)(おも)う?」


族長様(ぞくちょうさま)本件(ほんけん)難題(なんだい)御座(ござ)います。()れは天災(てんさい)にて、人智(じんち)(もっ)如何(いか)とも()(がた)きこと。蛊師(こし)たちへの元石(げんせき)供給(きょうきゅう)削減(さくげん)するも()()きではと(ぞん)じます。」


紅炎谷(こうえんこく)()れら八口(はちく)元泉(げんせん)は、()(ぞく)()()(ねん)辛苦(しんく)して蓄積(ちくせき)してきたもの。今年(ことし)状況(じょうきょう)は、本族(ほんぞく)歴史上(れきしじょう)最良(さいりょう)御座(ござ)います。()れは(ほか)ならぬ族長様(ぞくちょうさま)英明(えいめい)なる御指導(ごしどう)賜物(たまもの)他部族(たぶぞく)は我々(われわれ)より(はる)かに(きび)しい状況(じょうきょう)御座(ござ)います(ゆえ)御憂(ごうれ)無用(むよう)御座(ござ)います。」


仮令(たと)元泉(げんせん)が全て(すべて)枯渇(こかつ)したとて、(なん)(おそ)れがありましょうや?()(じゅう)(ねん)雪災(せっさい)(しの)()けば、やがて()(じん)きて(かん)(らい)し、(あたら)しき元泉(げんせん)が続々(ぞくぞく)と()()でる(こと)御座(ござ)いましょう。」


家老(かろう)たちは口々(くちぐち)に意見(いけん)()()った。


蛮図(ばんと)(うなず)き、()れら発言(はつげん)(しず)かに()()えた(のち)()(かた)った。「元泉(げんせん)蛊師(こし)修行(しゅぎょう)における(かなめ)である。軽視(けいし)する(わけ)には(まい)らぬ。元石(げんせき)()くしては、蛊師(こし)修為(しゅうい)()(すす)(がた)い。雪災(せっさい)(はじ)まったばかり、()()雪怪(ゆきおに)(あら)われるであろう。紅炎谷(こうえんこく)防衛(ぼうえい)(しん)(にな)うのは、(ほか)ならぬ蛊師(こし)たちなのである。」


()(かた)()えると、(かれ)一息(ひといき)()き、沉吟(ちんぎん)して()った。「()らば、族庫(ぞくこ)泉蛋蛊(せんたんこ)一匹(いっぴき)()()して()()けよ。()(あたら)しい元泉(げんせん)を、丁字号元泉(ていじごうげんせん)命名(めいめい)する。」


族長様(ぞくちょうさま)泉蛋蛊(せんたんこ)五转蛊(ごてんこ)御座(ござ)います。」ある家老(かろう)()しむ様子(ようす)異議(いぎ)(とな)えた。


蛮図(ばんと)(まゆ)()()げた。「五转蛊(ごてんこ)とて(なん)ほどの(こと)()ろう?諸君(しょくん)(わす)れるな。元泉(げんせん)供給(きょうきゅう)()ってこそ、()(ぞく)蛊師(こし)不断(ふだん)進歩(しんぽ)できる。()れでこそ戦力(せんりょく)保持(ほじ)し、将来(しょうらい)雪怪(ゆきおに)対処(たいしょ)する(さい)にも(みずか)らの()(まも)れる。()()(ぞく)蛊師(こし)損耗(そんもう)(すく)なければ、(ぞく)元気(げんき)(たも)たれる。雪災(せっさい)()()り、春暖(しゅんだん)花開(はなひら)(ころ)には、(すなわ)()(ぞく)大志(たいし)()ばす(とき)なのである!」


大志(たいし)()ばす……


()言葉(ことば)()いて、家老(かろう)たちの()(おく)には(かぎ)きが宿(やど)った。


蛮図(ばんと)(まつりごと)精励(せいれい)し、蛮家部族(ばんかぶぞく)()指導(しどう)(もと)()えず拡大(かくだい)し、()(まで)数多(あまた)中小部族(ちゅうしょうぶぞく)併合(へいごう)してきた。(いま)紅炎谷(こうえんこく)(よう)する蛮家(ばんか)は、(すで)一方(いっぽう)覇者(はしゃ)()()がっている。


(しか)()(とき)蛮図(ばんと)言葉(ことば)から、()蛮家(ばんか)族長(ぞくちょう)(さら)なる飛躍(ひやく)(くわだ)てていることが(うかが)えた。現在(げんざい)蛮家(ばんか)では()野望(やぼう)()たすには()りないのである!


異議(いぎ)(とな)えた家老(かろう)(あわ)てて()()った。「族長様(ぞくちょうさま)英明(えいめい)御決断(ごけつだん)此方(こちら)は只々(ただただ)平伏(ひれふ)して、(あま)んじて御命(ごめい)御仕(おんつか)(いた)します。」


御命(ごめい)御仕(おんつか)えすることを(ちか)います!」()()家老(かろう)たちも(つづ)いて(せい)しく宣言(せんげん)した。


諸君(しょくん)()ってこそ、覇業(はぎょう)()()る。」蛮図(ばんと)大笑(おおわら)いした(のち)表情(ひょうじょう)を引き()めて下令(かれい)した。「(あたら)しい丁字号元泉(ていじごうげんせん)管理(かんり)は、石武家老(せきぶかろう)(まか)せる。」


場内(じょうない)(もの)こぞって、石武(せきぶ)()けて羨望(せんぼう)嫉妬(しっと)眼差(まなざ)しを()けた。


元泉(げんせん)管理(かんり)は、(じつ)旨味(うまみ)のある役目(やくめ)である。


石武(せきぶ)(いま)(たび)ばかりは本気(ほんき)感動(かんどう)し、目頭(めがしら)(あか)らめて()った。「此方(こちら)()くも族長様(ぞくちょうさま)にご(みと)(いただ)けるとは、(こころ)(たけ)()くして、()御恩(ごおん)(まん)(いち)でも御報(ごほう)(いた)します!」


一同(いちどう)(さら)(しば)らく協議(きょうぎ)(かさ)ね、()(のち)解散(かいさん)した。


石武(せきぶ)()らず、蛮多(ばんた)(したが)って族庫(ぞくこ)(おもむ)き、泉蛋蛊(せんたんこ)授与(じゅよ)()けた。


()れが()泉蛋蛊(せんたんこ)でございますか?」石武(せきぶ)両手(りょうて)(うやうや)しく(ささ)()ち、(めず)らし()(なが)めながら、(こえ)(ふる)わせた。


()もなく、(かれ)表情(ひょうじょう)を引き()め、(そば)にいる蛮多(ばんた)()かって(ふか)一礼(いちれい)した。「何卒(どうぞ)三公子(さんこうし)より、()蛊虫(こちゅう)如何(いか)にして駆動(くどう)すれば(よろ)しいか、ご示教(しきょう)(ねが)いたく(ぞん)じます。」


蛮多(ばんた)()時務(じむ)(わきま)える態度(たいど)(わら)み、「示教(しきょう)(おっ)しゃられましても。()泉蛋蛊(せんたんこ)五转(ごてん)(たか)()なるが(ゆえ)消費(しょうひ)する真元(しんげん)(きわ)めて(おお)(りょう)で、(たと)五转中階(ごてんちゅうかい)蛊師(こし)(いえど)一度(いちど)駆動(くどう)することは(かな)いません。石武家老(せきぶかろう)三转(さんてん)御修行(ごしゅぎょう)(ゆえ)()れを駆動(くどう)するには、持久蛊(じきゅうこ)又続蛊(ゆうぞくこ)の組み(くみあ)わせが必要(ひつよう)御座(ござ)います。最速(さいそく)でも二十日余(はつかあまり)歳月(さいげつ)(よう)し、(ようや)元泉(げんせん)()()()るので御座(ござ)います。何卒(どうぞ)安心(あんしん)(くだ)さい、()期間(きかん)(わたくし)(そば)よりご助力(じょりょく)(いた)します(ゆえ)。」


此方(こちら)(いた)しましては、(かん)(きわ)みで御座(ござ)います。」石武(せきぶ)(あわ)てて(れい)()べた。


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