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蛊真人  作者: 魏臣栋
魔头乱世
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第一百四十八節:王庭圣宫

(かぜ)(みみ)(もと)(うそぶ)く。


金色(こんじき)(そら)は、(かがや)きに()ちて絶倫(ぜつりん)荘厳(そうごん)さを(はな)っている。


天青狼群(てんせいろうぐん)空中(くうちゅう)を悠々(ゆうゆう)と(あゆ)み、方源(ほうげん)天青狼王(てんせいろうおう)()()って疾走(しっそう)する。強風(きょうふう)(かれ)(かみ)(うし)ろへなびかせる。


(かれ)()(しず)()り、思索(しさく)(いろ)()かべている。()数日間(すうじつかん)(かれ)地丘(ちきゅう)伝承(でんしょう)密語(みつご)参悟(さんご)(つづ)けてきたが、残念(ざんねん)ながら一片(いっぺん)進展(しんてん)()い。


視界(しかい)()てから、(まる)平屋根(ひらやね)()(かがや)ける宮殿(きゅうでん)が、(おもむ)ろに姿(すがた)(あら)わした。


()れに気付(きづ)くや、方源(ほうげん)即座(そくざ)視線(しせん)(うつ)し、脳裏(のうり)渦巻(うずま)雑多(ざった)思考(しこう)(ひと)まず(わき)()しやった。


(かれ)(かお)に、一瞬(いっしゅん)感懐(かんかい)(いろ)(はし)った。


聖宮(せいきゅう)へ、(つい)到着(とうちゃく)した!


方源(ほうげん)(ちか)()くに(したが)って、巍峨(ぎが)とした宮殿(きゅうでん)が、(おもむ)ろに()全貌(ぜんぼう)(あら)わしてきた。


それは八層(はっそう)()かれており、(たか)さは八百丈(はっぴゃくじょう)(あま)りもある。第一層(だいいっそう)最下層(さいかそう)で、敷地面積(しきちめんせき)(もっと)(ひろ)い。第二層(だいにそう)第一層(だいいっそう)(うえ)位置(いち)し、第三層(だいさんそう)以降(いこう)同様(どうよう)()()がっている。


各層(かくそう)には、城壁(じょうへき)同心円状(どうしんえんじょう)幾重(いくえ)(めぐ)らされている。


(ゆき)のように(しろ)城壁(じょうへき)(あつ)さは三丈(さんじょう)壁面(へきめん)一枚(いちまい)(いわ)(ごと)隙間(すきま)なく(つづ)いている。城壁(じょうへき)には一定間隔(いっていかんかく)七色(なないろ)(とう)()てられており、各塔(かくとう)(あか)(だいだい)()(みどり)(あお)(あい)(むらさき)と、(いろ)とりどりに(いろど)られている。


(そう)(かさ)ねるごとに、聖宮(せいきゅう)(そび)()山岳(さんがく)(ごと)威容(いよう)(てい)している。


方源(ほうげん)急速(きゅうそく)接近(せっきん)するに(したが)い、聖宮全体(せいきゅうぜんたい)地中(ちちゅう)から()()がるが(ごと)く、突如(とつじょ)として蒼穹(そうきゅう)(つらぬ)気勢(きせい)(しめ)す!


(さか)んなり、聖宮(せいきゅう)よ!


(たと)方源(ほうげん)のように見聞(けんぶん)(ひろ)(もの)(いえど)も、()光景(こうけい)(せっ)しては、(おも)わず賞賛(しょうさん)(ねん)()()がる。


天空(てんくう)()(らい)するは(なん)なるものか?」


狼王(ろうおう)到着(とうちゃく)せり!」


情報(じょうほう)(とお)り、()れは(てん)(せい)狼群(ろうぐん)相違(そうい)ない。」


方源(ほうげん)出現(しゅつげん)は、聖宮(せいきゅう)(ない)蛊師(こし)たちの注意(ちゅうい)()()けた。


此刻(こくせつ)聖宮(せいきゅう)には(すで)万人(まんにん)以上(いじょう)駐屯(ちゅうとん)している。()れらは運良(うんよ)福地(ふくち)進入(しんにゅう)した(のち)聖宮(せいきゅう)至近(しきん)配置(はいち)された(もの)たちで、方源(ほうげん)より(はや)到着(とうちゃく)していた。


黒楼蘭(こくろうらん)前以(まえも)って指示(しじ)してあった(ため)接待担当(せったいたんとう)蛊師(こし)たちは()ぐに反応(はんのう)した。


方源(ほうげん)(おもむ)ろに降下(こうか)(はじ)めると、(とっく)第一層(だいいっそう)巨大(きょだい)城門前(じょうもんまえ)人影(ひとかげ)()(なら)んでいた。


方源(ほうげん)騎乗(きじょう)する万狼王(ばんろうおう)(あし)地面(じめん)()くや(いな)や、接待(せったい)蛊師(こし)()()り、(ひざまず)いて()げた。「狼王様(ろうおうさま)御帰還(ごきかん)おめでとう(ぞん)じます。此方(こちら)三生(さんしょう)有幸(ゆうこう)(もの)貴方様(あなたさま)御案内(ごあんない)(つと)めさせて頂(いただきます。貴方様(あなたさま)御住居(ごじゅうきょ)第八層(だいはちそう)御手配(ごてはい)()みで、部屋(へや)(すで)念入(ねんい)りに掃除(そうじ)()みで御座(ござ)います。」


「ふむ、()かずとも、()ずは()聖宮(せいきゅう)拝観(はいかん)させて(もら)おう。」


方源(ほうげん)は淡々(たんたん)と(うなず)き、天青狼(てんせいろう)から()()った。巨陽仙尊(きょようせんそん)(たい)する敬意(けいい)から、聖宮(せいきゅう)(ない)では騎獣(きじゅう)騎乗(きじょう)することは(ゆる)されず、徒歩(とほ)での移動(いどう)義務(ぎむ)付け(つけ)られていた。


(かしこ)まりました。()(ほど)栄誉(えいよ)御座(ござ)いませぬ。」


接引蛊師(せついんこし)(ふか)(かしら)()れ、前方(ぜんぽう)(みちび)いた。


聖宮(せいきゅう)(ない)には、数多(あまた)亭閣(ていかく)回廊(かいろう)複雑(ふくざつ)(つら)なり()っている。外観(がいかん)()()がった(のき)と、燦然(さんぜん)(かがや)銅瓦(どうがわら)豪華絢爛(ごうかけんらん)(おもむき)(はな)つ。


各建造物(かくけんぞうぶつ)有機的(ゆうきてき)連結(れんけつ)し、(そう)()ねる(ごと)構造(こうぞう)()える。広々(ひろびろ)とし格調(かくちょう)(たか)区画(くかく)()れば、複雑(ふくざつ)()()んだ廊下(ろうか)迷路(めいろ)(ごと)(つづ)区域(くいき)存在(そんざい)する。


亭閣(ていかく)殿堂(でんどう)内部(ないぶ)(いた)っては、(はしら)から(はり)(いた)るまで、極彩色(ごくさいしき)絵画(かいが)彫刻(ちょうこく)()()くされ、圧倒的(あっとうてき)奢華(しゃか)さを(ほこ)っていた。


旦那様(だんなさま)此処(ここ)怡楽宮(いらくきゅう)御座(ござ)います。偉大(いだい)巨陽先祖(きょようせんそ)は、(いま)聖宮(せいきゅう)御住(おす)まいで、日々(ひび)此方(こちら)盛大(せいだい)音楽祭(おんがくさい)(もよお)されます。史書(ししょ)()りますれば、毎回(まいかい)多数(たすう)妃嬪(きひん)(きそ)って(まい)(ささ)げ、先祖様(せんぞさま)御寵愛(ごちょうあい)()ようとされた(よし)御座(ござ)います」


旦那様(だんなさま)此方(こちら)春湯殿(しゅんとうでん)(もう)し、北原(ほくげん)随一(ずいいち)温泉(おんせん)御座(ござ)います。巨陽先祖様(きょようせんぞさま)(なぬ)()(ごと)に、数百(すうひゃく)妃嬪(きひん)(まね)き、(とも)湯浴(ゆあ)みや遊戯(ゆうぎ)(たの)しまされたそうで御座います」


此方(こちら)飄香院(ひょうこういん)御座(ござ)います。巨陽先祖様(きょようせんぞさま)神話(しんわ)の『酒池(しゅち)』『肉林(にくりん)』を此処(ここ)(うつ)されました。(あかつき)(ごと)肉林(にくりん)では様々(さまざま)な(あじ)わいの肉果(にくか)(みの)り、夜毎(よるごと)には酒池(しゅち)(かんば)しき美酒(びしゅ)()()でる(よし)で御座います」


接引蛊師(せついんこし)各所(かくしょ)縦横(じゅうおう)説明(せつめい)()(ひろ)げ、()口上(こうじょう)見事(みごと)なものだった。


方源(ほうげん)悠然(ゆうぜん)(ある)(まわ)り、各所(かくしょ)(なが)(まわ)して、なかなか興味(きょうみ)(ぶか)(おも)いであった。


聖宮(せいきゅう)第四層(だいよんそう)到着(とうちゃく)すると、接引蛊師(せついんこし)方源(ほうげん)正殿(せいでん)案内(あんない)した。


旦那様(だんなさま)此処(ここ)聖宮八大正宮(せいきゅうはちだいせいきゅう)(ひと)つで御座(ござ)います画宮(がきゅう)御座(ござ)います。巨陽先祖様(きょようせんぞさま)多才多芸(たさいたげい)で、特に美人画(びじんが)御得意(ごとくい)とされて御座(ござ)いました。()宮中(きゅうちゅう)壁画(へきが)は、全て(すべて)御自身(ごじしん)(えが)かれたものに御座(ござ)います。何卒(どうぞ)此方(こちら)へ。」


接引蛊師(せついんこし)宫殿(きゅうでん)側門(そくもん)()け、方源(ほうげん)(なか)(すす)むよう(うなが)した。


聖宮(せいきゅう)八大正宮(はちだいせいきゅう)にはそれぞれ正門(せいもん)御座(ござ)いますが、巨陽仙尊(きょようせんそん)一人(ひとり)のみが通行(つうこう)(ゆる)されていたので御座(ござ)います。仙尊(せんそん)(すで)逝去(せいきょ)された現在(げんざい)でも、()規則(きそく)(まも)()がれて御座(ござ)います。後人(こうじん)()れに(したが)うのも、巨陽仙尊(きょようせんそん)(たい)する畏敬(いけい)(ねん)敬愛(けいあい)(じょう)(あらわ)すためで御座(ござ)います。


宫殿(きゅうでん)(ない)一歩(いっぽ)(あし)()()れると、途端(とたん)壮大(そうだい)壁画(へきが)方源(ほうげん)視界(しかい)()()くした。


画宮(がきゅう)(なか)(から)っぽで、四方(しほう)巨大(きょだい)壁面(へきめん)だけが存在(そんざい)していた。()(かべ)一面(いちめん)には、(じつ)に様々(さまざま)な美人(びじん)(えが)かれている。(つや)やかで(あや)しい(もの)清純(せいじゅん)(みず)(ごと)(もの)()()せて(わら)(もの)(うつむ)いて(おも)(けん)する(もの)。その表情(ひょうじょう)は一つ一つが生き(うつ)しで、(かず)八万(はちまん)にも(のぼ)る!


画宮(がきゅう)記録(きろく)される()えを()女性(じょせい)は、(みな)巨陽先祖様(きょようせんぞさま)一時期(いちじき)寵愛(ちょうあい)された方々(かたがた)で御座(ござ)います。当時(とうじ)仙尊(せんそん)直筆(じきひつ)()(えが)かれることは、天下(てんか)女性(じょせい)にとって()(うえ)ない栄誉(えいよ)御座(ござ)いました。先祖様(せんぞさま)妃嬪(きひん)数知(かずし)れずと御座(ござ)いますが、此処(ここ)(しる)された方々(かたがた)は()()きの佳麗(かれい)であり、(いま)(なお)()芳容(ほうよう)(とこし)えに(つた)えて御座(ござ)います」


接引蛊師(せついんこし)此処(ここ)まで()うと、(かお)いっぱいに感懐(かんかい)(いろ)()かべた。


方源(ほうげん)(だま)って(かべ)(なが)めながら、(こころ)の中で(ひと)(つぶや)いた。「芳容永伝(ほうようえいでん)とはいえ、せいぜい五百年(ごひゃくねん)ほどだろう。前世(ぜんせ)記憶(きおく)では、王庭福地(おうていふくち)中洲(ちゅうしゅう)蛊仙(こせん)たちに攻め()とされ、聖宮(せいきゅう)絶響(ぜっきょう)()した。(しん)永生(えいせい)とは、(たと)仙尊(せんそん)(いえ)ども()()ぬものか……」


(はた)(もの)此処(ここ)()れば、聖宮(せいきゅう)奢侈(しゃし)富貴(ふうき)、堂々(どうどう)たる錦繡(きんしゅう)()圧倒(あっとう)され、(たと)夢中(むちゅう)とは()らぬと(いえど)も、(こころ)には畏敬(いけい)(ねん)(しょう)ずるものである。


(しか)方源(ほうげん)は、()(かがや)きの(なか)から、一筋(ひとすじ)衰退(すいたい)腐朽(ふきゅう)を味わ(あじわ)い()った。


永生(えいせい)()()()では、(たと)仙尊(せんそん)(ごと)強者(つわもの)(いえど)如何(いか)んせん?


千古(せんこ)風流(ふうりゅう)(きわ)めた巨陽(きょよう)も、(いま)(えん)(しょう)雲散(うんさん)して跡形(あとかた)()い。(のこ)された痕跡(こんせき)証左(しょうさ)ではあるが、方源(ほうげん)(かん)ずる(ところ)()証左(しょうさ)失敗(しっぱい)意味(いみ)()ち、(あわ)嘲笑(ちょうしょう)悲傷(ひしょう)()びている。


(きょう)(すで)()きた。


()こう。直接(ちょくせつ)八層目(はちそうめ)住居(じゅうきょ)案内(あんない)してくれ。」


方源(ほうげん)一息(ひといき)つくと、淡々(たんたん)と指示(しじ)した。


接引蛊師(せついんこし)(あわ)てて臉上(りょうじょう)陶酔(とうすい)した(いろ)(おさ)め、躊躇(ちゅうちょ)(なが)(もう)()げた。「(しか)れども旦那様(だんなさま)聖宮(せいきゅう)見所(みどころ)数多(あまた)御座(ござ)います。()れより才是(さいせ)(はじ)まりに()ぎませぬ!()()(ほか)にも、美婦宮(びふきゅう)幼女宮(ようじょきゅう)嫵媚殿(ぶびでん)純真殿(じゅんしんでん)御座(ござ)います。(さら)には異香宮(いこうきゅう)(もう)し、(むかし)女性(じょせい)異人(いじん)()み、毛民(もうみん)さえも()りました。玉像宮(ぎょくぞうきゅう)には軟玉(なんぎょく)(つく)られた美人像(びじんぞう)(なら)び、先祖様(せんぞさま)御賞玩(ごしょうがん)(きょう)されて御座(ござ)いました」


接引蛊師(せついんこし)内心(ないしん)焦燥(しょうそう)していた。(かれ)()げた此等(これら)場所(ばしょ)は、()身分(みぶん)のみでは(はい)ることを(ゆる)されない。()機会(きかい)()りて(おも)存分(ぞんぶん)()保養(ほよう)をしたかったのである。


(しか)方源(ほうげん)()(ささ)やかな(ねが)いを(かな)えようとはしなかった。


巨陽仙尊(きょようせんそん)晚年(ばんねん)(いた)っては、下界(げかい)(くだ)聖宮(せいきゅう)()むことは(まれ)となり、長生天(ちょうじょうてん)にあって深居簡出(しんきょかんしゅつ)生活(せいかつ)(おく)っておられた。


(しか)して北原(ほくげん)では年毎(としごと)に、多量(たりょう)女子(じょし)(えら)聖宮(せいきゅう)充実(じゅうじつ)させていたのである。


巨陽仙尊(きょようせんそん)最期(さいご)聖宮(せいきゅう)(おとず)れた(さい)()女子(じょし)たちを寵愛(ちょうあい)することは()かった。八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)建立(こんりゅう)し、王庭之争(おうていのあらそい)規矩(きく)(さだ)めた(のち)(かれ)鴻飛冥冥(こうひめいめい)(ごと)()から姿(すがた)()したのである。


聖宮(せいきゅう)()れより凋落(ちょうらく)し、其処(そこ)(のこ)された(はな)(ごと)美貌(びぼう)女子(じょし)たちは、(あた)かも金糸雀(きんしじゃく)(かご)()()められたが(ごと)有様(ありさま)であった。


王庭福地(おうていふくち)広大(こうだい)なれども、自由(じゆう)()ければ、如何(いか)なる(ひろ)場所(ばしょ)牢獄(ろうごく)(ひと)しい。


最終的(さいしゅうてき)に、彼女たち(かのじょたち)は一人残(ひとりのこ)らず此処(ここ)青春(せいしゅん)(むな)しく(つい)やした。()()(すべ)()く、彼女たち(かのじょたち)を(すく)()さんとする(もの)誰一人(だれひとり)(あら)われなかった。


巨陽仙尊(きょようせんそん)偉大(いだい)なる栄光(えいこう)(かげ)には、数知(かずし)れぬ女子(じょし)たちの苦痛(くつう)哀怨(あいえん)悲切(ひせつ)(ほうむ)()れている。


(しか)れども方源(ほうげん)()には、聖宮(せいきゅう)価値(かち)はさして(たか)くはない。


それは(たん)巨陽先祖(きょようせんぞ)遺跡(いせき)()ぎず、蛊師(こし)として此処(ここ)伝承(でんしょう)(のこ)そうとする(もの)一人(ひとり)としていない。当年(とうねん)(のこ)された貴重品(きちょうひん)も、とっくに歴代(れきだい)蛊師(こし)たちに収奪(しゅうだつ)()くされている。仮令(たと)後年(こうねん)中洲(ちゅうしゅう)蛊仙(こせん)たちが一斉(いっせい)探査(たんさ)(こころ)みたと(いえ)も、彼等(かれら)(むな)しく()したのである。


聖宮(せいきゅう)において唯一(ゆいいつ)価値(かち)ある場所(ばしょ)(いな)王庭福地(おうていふくち)全体(ぜんたい)(つう)じて、(さら)には北原(ほくげん)全体(ぜんたい)の中で(もっと)価値(かち)ある場所(ばしょ)こそは、


(すなわ)第八層(だいはちそう)頂上(ちょうじょう)(そび)える――八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)である!


巨陽仙尊(きょようせんそん)発議(はつぎ)により、長毛老祖(ちょうもうろうそ)(みずか)らの()煉製(れんせい)した蛊屋(こや)である。


八転仙蛊屋(はってんせんこや)


(しか)(いま)は、(いま)()(とき)では()い。


第八層(だいはちそう)頂上(ちょうじょう)は、(ただ)(むな)しき空間(くうかん)(ひろ)がるのみである。十年(じゅうねん)一度(いちど)猛吹雪(もうふぶき)本格(ほんかく)的に勃発(ぼっぱつ)した(とき)(はじ)めて八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)(ようや)()姿(すがた)(あら)わすのである。


その()の日々(ひび)、方源(ほうげん)深居簡出(しんきょかんしゅつ)生活(せいかつ)(おく)り、修行(しゅぎょう)(はげ)みつつ真陽楼(しんようろう)(かい)()(とき)()(つづ)けた。


天青狼群(てんせいろうぐん)管理(かんり)(ほか)(もの)(まか)せ、方源(ほうげん)(みずか)()()必要(ひつよう)()かった。


()期間(きかん)黒楼蘭(こくろうらん)使者(ししゃ)(つか)わして方源(ほうげん)(まね)き、黒家(こくけ)()れんの意向(いこう)(ほの)めかした。


黒家(こくけ)()わり、外姓家老(がいせいかろう)()るのか?


()提案(ていあん)(たい)し、方源(ほうげん)一応(いちおう)考慮(こうりょ)する様子(ようす)()せ、興味(きょうみ)があるように(よそお)った。(しか)実際(じっさい)には、()のような選択(せんたく)をすることは(けっ)して()いのである。


人皮蛊(じんぴこ)(かれ)狼王(ろうおう)偽装(ぎそう)させるが、所詮(しょせん)凡蛊(ぼんこ)である。仙蛊(せんこ)探査(たんさ)(さら)されれば、(きわ)めて(たか)確率(かくりつ)正体(しょうたい)露見(ろけん)するだろう。


外姓家老(がいせいかろう)(まね)()れるのは、北原地区(ほくげんちく)(ちょう)勢力(せいりょく)常用(じょうよう)する手口(てぐち)である。()れに()り、魔道蛊仙(まどうこせん)正道(せいどう)戦力(せんりょく)転換(てんかん)でき、(かく)黄金部族(おうごんぶぞく)北原(ほくげん)大局(たいきょく)把持(はじ)する(うえ)(おお)きく寄与(きよ)する。


(しか)星鷲峰(せいじゅうほう)での事件(じけん)について、黒楼蘭(こくろうらん)一言(ひとこと)()れなかった。()わりに、狼王(ろうおう)横暴(おうぼう)()りや、方源(ほうげん)星鷲峰(せいじゅうほう)如何(いか)傍若無人(ぼうじゃくぶじん)振舞(ふるま)い、(つよ)きを(たの)んで(よわ)きを(いじ)めたかと()流言飛語(りゅうげんひご)(おもむ)ろに(ひろ)まり(はじ)めた。(はなし)大袈裟(おおげさ)脚色(きゃくしょく)されているが、何故(なぜ)真実味(しんじつみ)()びている。


方源(ほうげん)心中(しんちゅう)冷笑(れいしょう)した。(あき)らかに(だれ)かが黒幕(くろまく)で、(かれ)名誉(めいよ)(きず)つけようとしているのだ。


潘平(はんぺい)可能性(かのうせい)(たか)く、孫湿寒(そんしつかん)らにも動機(どうき)()る。黒楼蘭(こくろうらん)でさえ(あや)しい。(しか)し、仮令(たと)()名誉(めいよ)()()ちようと、其所(それ)如何(どう)なるというのか?」


巨陽仙尊(きょようせんそん)()(あら)われた(ころ)()評判(ひょうばん)最悪(さいあく)で、四方(しほう)花柳(かりゅう)(たず)ねる魔道蛊師(まどうこし)として()られていた。(しか)るに(いま)や、(だれ)もが(うやま)仙尊(せんそん)では()いか!


(かれ)(ひろ)後宮(こうきゅう)(もう)け、数多(あまた)少女(しょうじょ)人生(じんせい)()みにじり、幾多(いくた)幸福(こうふく)破壊(はかい)したか?


されど今日(こんにち)(いた)るまで、(かれ)公然(こうぜん)非難(ひなん)する(もの)一人(ひとり)としていない。


()()一切(いっさい)は、(ちから)こそが根本(こんぽん)なのである。


地球(ちきゅう)()いては「人言(じんげん)(おそ)るべく、三人(さんにん)(とら)()す」と()う。()れは何故(なぜ)か?(ひと)(みな)凡夫(ぼんぷ)()であり、世界(せかい)規則(きそく)()(ちから)集団(しゅうだん)超越(ちょうえつ)することを(ゆる)さないからだ。


()かし此処(ここ)では、(はなし)(べつ)である。


()(まさ)方源(ほうげん)()世界(せかい)(この)理由(りゆう)(ひと)つなのである。


二十日余(はつかあまり)()ぎた(ころ)金色(こんじき)(そら)(みず)(ごと)(かす)かに()らめき(はじ)めた。


大地(だいち)全体(ぜんたい)微震(びしん)(はじ)める。


虚空(こくう)より(かぜ)()()こり、聖宮(せいきゅう)頂上(ちょうじょう)にて、日輪(にちりん)(ごと)(まぶ)しい(ひかり)(だん)突如(とつじょ)として(さか)んに(はな)たれた。


()(ひかり)(ちゃ)三服(さんぷく)する(ほど)時間(じかん)持続(じぞく)した(のち)(ようや)()()っていった。(もと)(なに)()かった場所(ばしょ)に、一基(いっき)(とう)姿(すがた)(あら)わしている。


八十八角真陽楼(はちじゅうはっかくしんようろう)








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